有料老人ホームで働く看護師が辞めたくなる理由は?対処法と転職先を解説

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有料老人ホームで働いていると、「急変時の判断を自分ひとりで背負っている」「医療行為が少なくて技術が落ちていく気がする」と感じる場面が増えてきます。病棟のように医師や先輩看護師がすぐ隣にいるわけではなく、相談できる相手が限られるぶん、日々の緊張感は想像以上です。

ただ、有料老人ホームの看護師が辞めたいと感じる背景には、業態そのものの性質と、その施設だけの体制の問題が入り混じっています。この2つを分けずに転職すると、次の職場でも同じ壁にぶつかりかねません。

この記事では、辞めたいと感じる理由を整理したうえで、理由別の対処法、辞めたほうがよいと判断できるサイン、転職先の選択肢、そして施設を見極めるための確認ポイントまでを順に解説します。辞めるか続けるかを自分で判断するための材料としてお役立てください。

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目次

有料老人ホームの看護師が辞めたいと感じる理由

ナースステーションでバインダーを手に頭を抱える看護師

有料老人ホームで働く看護師の悩みは、単に「忙しい」「人間関係がつらい」といった言葉では説明しきれません。医療機関ではなく生活の場で働くという立場の違いが、責任の重さやスキルへの不安、周囲との役割分担といった形で表れてきます。

厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、就業看護師1,363,142人のうち病院で働く人は895,944人で、全体の65.7%を占めています。一方、介護保険施設等は107,984人、社会福祉施設は28,093人にとどまります。有料老人ホームで働く看護師は、看護職全体のなかでは少数派であり、同じ環境で働く仲間から情報を得にくいことも、悩みを抱え込みやすい一因といえます。

ここでは、現場で挙がりやすい7つの理由を順に見ていきます。

就業看護師1,363,142人の就業場所別構成(令和6年末現在)
10.0% 介護・福祉分野
65.7%病院895,944人
14.3%診療所194,665人
7.9%介護保険施設等107,984人
6.7%訪問看護ステーション91,022人
2.1%社会福祉施設28,093人
3.3%その他45,434人

※有料老人ホームは「介護保険施設等」(介護付)または「社会福祉施設」(住宅型)に含まれる

※介護・福祉分野は合わせても就業看護師全体の約1割にとどまる

急変時の判断を1人で担う

有料老人ホームには、病院のように当直の医師が常駐しているわけではありません。夜間や早朝に入居者さんの様子が変わったとき、受診させるか、様子を見るか、救急要請するかの一次判断を看護師が担う場面が出てきます。

配置人数が少ない施設では、その判断を相談する相手が同じ建物内にいないこともあります。協力医療機関や施設長へ連絡する体制が整っていればよいのですが、連絡がつくまでに時間がかかる施設では、待っている数分間の重さが積み重なっていきます。

判断に自信がないというより、判断の結果を1人で引き受け続ける状況そのものが負担になる、という声は少なくありません。

夜間・早朝の一次判断フロー
起点
夜間・早朝、介護職員が入居者さんの異変に気づく
連絡
看護師へ連絡(オンコール)
看護師の判断
状態を確認する(バイタル・意識・呼吸・既往)
緊急と言い切れない場合
協力医療機関へ連絡
明らかな緊急の場合(意識障害・呼吸苦・外傷など)
救急要請
対応完了
電話がつながらない場合
看護師が受診か経過観察かを判断
電話がつながる場合
指示を受けて対応
対応完了
経過観察の場合
観察間隔と再連絡の基準を介護職員へ伝える
受診の場合
受診
対応完了
翌朝
翌朝申し送り
※分岐の起点はすべて看護師1人に集まる

入居者1人あたりに割ける時間が少ない

有料老人ホームの看護師は、バイタル測定や服薬管理、記録、通院同行、家族への連絡といった業務を、数十人分まとめて担当することがあります。介護付有料老人ホームの場合、看護職員の配置は入居者30人までなら常勤換算で1人以上とされており、30人を1人で担当する体制も基準上は成り立ちます

限られた時間のなかで全員の状態を把握しようとすると、どうしても優先順位をつけざるを得ません。「気になっていた入居者さんのところに、結局今日も行けなかった」という心残りが続くと、自分の看護に納得できなくなっていきます。

丁寧に関わりたくて介護施設を選んだ人ほど、この理想と現実のずれをつらく感じる傾向があります。

医療行為が少なくスキルの低下が不安

有料老人ホームで日常的に行う医療行為は、服薬管理、褥瘡処置、経管栄養、インスリン注射、吸引などが中心です。病棟のように点滴や検査、術後管理を数多く経験する環境ではないため、手技の機会が減ることへの不安を抱く人がいます。

特に病棟から転職してきた場合、数年後に急性期へ戻れるだろうかという心配が頭をよぎります。実際には、生活を支える視点や慢性期の観察力といった別の力が育つ職場ですが、それが評価につながる実感を得にくいのも事実です。

新しい知識を学ぶ機会が施設内に少なく、研修や勉強会に参加しづらい体制だと、不安はいっそう大きくなります。

オンコールで気が休まらない

夜間の緊急連絡に備えるオンコールは、有料老人ホームの看護師にとって負担になりやすい仕組みです。ここで押さえておきたいのは、オンコールの当番回数と、実際に呼び出される頻度はまったく別のものだという点です。

月に10回の当番があっても実際の呼び出しがほとんどない施設もあれば、当番は月5回でも毎回のように電話が鳴る施設もあります。求人票に「オンコールあり」としか書かれていない場合、この差は入職するまで分かりません。

また、呼び出しがなくても、電話を気にして飲酒や遠出を控える生活が続けば、休日の質は下がります。手当の金額だけでなく、実際に鳴る回数と出勤に至る回数を確認したいところです。

介護スタッフとの役割分担が曖昧

有料老人ホームでは、看護師の人数が介護職員より少ないため、業務の切り分けが施設ごとの慣習に委ねられがちです。食事介助や排泄介助、レクリエーションへの参加をどこまで担うのかが明文化されておらず、「手が空いている人がやる」という運用になっている施設もあります。

その結果、看護師が介護業務に追われて医療的な観察の時間を確保できなかったり、逆に介護職員から「看護師は手伝ってくれない」と受け取られたりします。どちらも悪意があるわけではなく、線引きが決まっていないことが原因です。

役割分担が曖昧なまま日々が過ぎると、小さな不満が人間関係の問題として表面化していきます。

入居者家族からの要望が多い

有料老人ホームは費用を負担して入居する住まいであるため、ご家族の期待も高くなりやすい環境です。体調の変化があるたびに詳しい説明を求められたり、受診の判断について意見を伝えられたりする機会が、病院よりも多くなります。

窓口となるのは、多くの場合その場にいる看護師です。医師のように診断を伝える立場ではないなかで、納得してもらえる説明を求められる状況は、精神的な負担になります。

説明が施設として統一されていない場合、担当者によって話が違うと指摘されることもあり、対応そのものが業務量を押し上げます。

給与が業務の重さに見合わない

責任の重さに対して給与が見合わないと感じる人も少なくありません。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で正看護師の月給中央値を比較すると、有料老人ホームは292,000円で、訪問看護の320,000円や病院の298,000円を下回っています。

夜勤がない求人が多いぶん夜勤手当がつかないという事情もありますが、急変対応やオンコールという責任を担いながら、病棟より収入が下がるという構図は納得しにくいものです。

正看護師 月給中央値の比較(有料老人ホーム・訪問看護・病院)
010万円20万円30万円40万円
訪問看護
320,000円
病院
298,000円
有料老人ホーム
292,000円

※夜勤手当の有無が差の一因

同じように介護施設で働く看護師の悩みは、特別養護老人ホームでも共通する部分があります。あわせて確認してみてください。

こうした理由は、どれも「自分の頑張りが足りないから」ではなく、体制や仕組みから生まれているものです。まずは事実として整理しておくことが、次の判断につながります。

参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

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同じ有料老人ホームでも負担が大きく変わる理由

介護施設で書類を見ながら説明する看護師

「有料老人ホームは医師がいないから責任が重い」という説明をよく見かけますが、これだけでは実態を捉えきれません。有料老人ホームには3つの類型があり、看護職員の配置ルールも医療対応の範囲も別物だからです。

類型は、厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」で介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームに整理されています。さらに介護付は、一般型特定施設入居者生活介護と外部サービス利用型特定施設入居者生活介護に分かれます。

施設数を見ると、令和6年6月30日時点で介護付有料老人ホームは8,301棟(定員287,687名)、住宅型有料老人ホームは12,668棟(定員392,346名)です。健康型有料老人ホームは19件で、全国的にはごく少数にとどまります。

有料老人ホームの類型別 施設数・定員(令和6年6月30日時点)
介護付有料老人ホーム
8,301 定員 287,687名
住宅型有料老人ホーム
12,668 定員 392,346名
健康型有料老人ホーム
19 全国でごく少数

いま感じているつらさが、有料老人ホームという業態そのものによるのか、類型による体制の差なのか、それともその施設固有の運用なのか。ここを切り分けておくと、転職先で同じ状況を引き当てるリスクを下げられます。

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介護付有料老人ホームの体制

介護付有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設です。介護サービスを施設の職員が提供するため、人員配置が「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第175条で定められています。

看護職員の配置は、利用者の数が30を超えない施設なら常勤換算方法で1以上、30を超える施設なら1に、30を超えて50またはその端数を増すごとに1を加えた数以上とされています。入居者数に当てはめると次のようになります。

入居者数別 看護職員の必要人数早見(常勤換算)
入居者数看護職員の最低人数
30人以下1人以上
31〜80人2人以上
81〜130人3人以上
131〜180人4人以上

※常勤換算の最低人数。24時間の配置数ではない

つまり入居者が80人でも看護職員は常勤換算2人以上いれば基準を満たします。これは24時間分の総量ではなく常勤換算の数なので、時間帯によっては看護師が不在になることもあります。

あわせて、看護職員と介護職員の合計は要介護者である利用者3人またはその端数を増すごとに1以上、さらに常に1人以上の介護職員を確保することが求められています。夜間は介護職員が対応し、看護師はオンコールで支えるという体制が生まれるのは、この基準の組み合わせによるものです。

なお外部サービス利用型では、安否確認や計画作成を施設職員が行い、介護サービスは委託先の事業所が提供します。同じ「介護付」でも、看護師が関わる範囲は変わります。

住宅型有料老人ホームの体制

住宅型有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない施設です。介護が必要になった場合、入居者さん自身の選択で地域の訪問介護などを利用しながら生活を続けます。

ここが最も重要な違いです。特定施設の指定を受けないため、前述の第175条の配置基準は適用されません。標準指導指針では「看護職員については、入居者の健康管理に必要な数を配置すること」とされているのみで、具体的な人数の下限は示されていません。

そのため、看護師が常勤で複数名いる施設もあれば、日中のみ1名、あるいは非常勤のみという施設もあり、同じ「住宅型」という表示でも医療対応の範囲は施設ごとに大きく異なります

  • 配置人数は法令ではなく施設の方針で決まる
  • 看護師が何名、どの時間帯にいるかを必ず個別に確認する
  • 併設の訪問看護や協力医療機関の有無で負担が変わる

住宅型は併設・隣接の介護サービス事業所と組み合わせて運営されることが多く、その組み合わせ方によっても看護師の忙しさは変わります。類型名だけで判断せず、体制そのものを見る必要があります。

健康型有料老人ホームの体制

健康型有料老人ホームは、食事などのサービスが付いた高齢者向けの居住施設で、自立して生活できる方が対象です。標準指導指針の別表では、介護が必要になった場合には契約を解除し退去しなければならないと説明されています。

そのため、介護度の高い入居者さんへの対応や看取りといった業務は基本的に発生せず、健康管理や生活相談が中心になります。一方で施設数は全国で19件と非常に少なく、求人として出会う機会はほとんどありません。

「有料老人ホーム=介護度の高い方の対応」というイメージが強いのは、実際に募集の大半が介護付と住宅型だからです。求人を探すときは、まず類型の表示を確認するところから始めるとよいでしょう。

3類型の横断比較
観点 介護付 住宅型 健康型
特定施設入居者生活介護の指定 受けている 受けていない 受けていない
看護職員の配置根拠 指定基準第175条により、入居者30人以下は常勤換算1以上、30人超は1に30を超えて50ごとに1を加えた数以上と定められている 省令の配置基準は適用されない。設置運営標準指導指針に「入居者の健康管理に必要な数を配置すること」とあるのみで人数の下限は示されていない 省令の配置基準は適用されない
介護サービスの提供者 有料老人ホームの職員(一般型)、または委託先の介護サービス事業所(外部サービス利用型。安否確認と計画作成は施設職員が担当) 入居者さん自身の選択による地域の訪問介護等 介護を前提としていない(食事等のサービスが中心)
介護が必要になったら そのまま居室で生活を継続できる 外部サービスを利用しながら居室で生活を継続できる 契約を解除し退去しなければならない
全国の施設数 8,301 12,668 19

※同じ有料老人ホームでも配置の根拠がまったく違う

参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第7回)」

辞めたい理由別の対処法

資料を見ながら考え込む看護師

辞めたい気持ちが出てきたとき、休息や気分転換だけで解決することはあまりありません。理由ごとに打てる手が違うためです。ここでは前段で挙げた理由と対応させる形で、職場のなかで試せる方法を整理します。

いずれも「辞めずに我慢する」ための方法ではなく、状況が変えられるものかどうかを見極めるための行動です。試したうえで変わらなければ、それは環境側の問題だと判断する材料になります。

責任の重さがつらい場合

まず取り組みたいのは、判断を個人の裁量から施設の手順に移すことです。急変時に誰へ連絡し、どの状態なら救急要請するのかを文章にしておけば、判断の重さは大きく変わります。

具体的には次のような整理が有効です。

  1. 協力医療機関の連絡先と、対応可能な時間帯を一覧にする
  2. 救急要請の判断基準を、バイタルや症状の目安として書き出す
  3. 夜間に看護師が判断した内容を、翌日誰に報告するかを決める
  4. 入居時に取り決めた急変時対応の希望を、いつでも確認できる場所に置く

こうした手順書は自分ひとりで作ることもできますが、施設として承認してもらうことが重要です。承認されていれば、その手順に沿った判断は組織の判断になります。提案しても取り合ってもらえない場合は、責任の所在を個人に置いたままの施設だと分かります。

スキルの低下が不安な場合

スキルへの不安は、漠然と抱えているうちは大きくなり続けます。何ができなくなるのが怖いのかを具体化すると、対処の道筋が見えてきます。

有料老人ホームでも、褥瘡管理、認知症ケア、看取り、服薬管理といった領域は日々経験を積める分野です。これらを意識的に記録として残しておくと、転職の際にも説明できる実績になります。

そのうえで、施設外の研修や都道府県看護協会の研修に参加できる環境かどうかを確認します。研修費の補助や勤務調整があるかは、施設が職員の成長をどう位置づけているかを示す指標といえます。

対処法を試すときに押さえたいこと
  • 手順書は、施設に承認してもらって初めて「組織の判断」になります
  • スキルの不安は、いま積んでいる経験を書き出すと形が見えてきます
  • 提案が検討されないこと自体が、体制を見極める材料になります
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オンコールが負担な場合

オンコールへの不満は、回数そのものより「予測できないこと」から生まれることが多くあります。まずは自分の実績を数字にしてみてください。

1か月あたりの当番回数、そのうち電話が鳴った回数、実際に出勤した回数を3か月ほど記録すると、負担の実態が見えてきます。感覚ではなく数字で示せると、当番の分担や手当の見直しを相談する材料になります。

また、電話が鳴る内容を分類しておくと、看護師でなくても対応できる相談が含まれていることに気づく場合があります。介護職員が判断できる範囲を手順書で広げるだけで、呼び出しが減ることもあります。

オンコール記録シート(3か月分)
記録項目 1か月目 2か月目 3か月目
当番に入った回数
電話が鳴った回数
実際に出勤した回数
出勤1回あたりの拘束時間
時間
時間
時間
看護師でなくても対応できた件数

3か月分そろうと、分担や手当の見直しを相談する材料になります。

人間関係に悩んでいる場合

介護スタッフとの関係に悩んでいる場合、相性の問題として捉える前に、役割分担が明文化されているかを確認します。曖昧さが摩擦を生んでいるケースが多いためです。

たとえば、食事介助や入浴時の観察、記録の分担について、誰がどこまで担うのかを一覧にして共有するだけでも認識のずれは減ります。看護師にしかできない業務と、協力して行う業務を分けて示すことがポイントです。

有料老人ホームにおける看護師と介護職員の業務分担例
看護師が担う
看護師にしかできない業務
服薬の管理と確認
褥瘡の処置
経管栄養・吸引
インスリン注射
急変時の一次判断
協力医療機関への連絡
医療的な記録
協力して行う
看護師と介護職員が連携する業務
バイタルの測定
入浴前後の状態観察
食事量・水分量の把握
通院の同行
ご家族への状況説明
介護職員が担う
生活支援が中心の業務
食事介助
排泄介助
入浴介助
移乗・移動の介助
レクリエーションの運営
生活記録

※分担は施設ごとに決めるもの。まず文書化することが先

それでも改善しない場合、あるいは特定の相手からの言動が続く場合は、施設内の相談窓口や運営法人の本部へ相談する方法があります。職場の外に相談先を持っておくことも大切で、厚生労働省の「こころの耳」では働く人向けの相談窓口が案内されています。

参考:厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」

辞めたほうがよいと判断できるサイン

体調不良でつらそうにしている看護師

対処を試しても状況が変わらない場合、離れる判断が必要になることもあります。ここでは、我慢を続けるより環境を変えたほうがよいと考えられるサインを3つ挙げます。

判断の軸は「つらいかどうか」ではなく、その施設にとどまることで解決できる見込みがあるかどうかです。感情ではなく状況で見ていきましょう。

心身の不調が続いている

眠れない、食欲がない、出勤前に動悸がするといった状態が2週間以上続いているなら、優先すべきは職場の改善ではなく回復です。

日本看護協会の2025年病院看護実態調査(病院を対象とした調査)では、新卒看護職員の主な離職理由として「健康上の理由(精神的疾患)」が54.6%と最も多く挙げられています。また、病気で1か月以上の連続休暇を取得した職員がいた病院は72.6%にのぼり、そのうち79.5%がメンタルヘルス不調によるものでした。

新卒看護職員の主な離職理由(上位5つ・複数回答)
015%30%45%60%
健康上の理由(精神的疾患)
54.6%
看護職員としての適性への不安
46.6%
看護実践能力への不安
44.2%
職場の人間関係
27.0%
他施設への興味
23.0%
健康上の理由(身体的疾患)
15.4%
他分野への興味
14.9%

※病院を対象とした調査結果であり、有料老人ホームの数値ではない/上位5項目を選ぶ複数回答のため合計は100%にならない

これは病院のデータですが、看護職において心身の不調が離職の入り口になりやすいことを示しています。不調が続いているときは、辞めるか続けるかを決める前に、受診や休職を検討するほうが先です。

今のあなたの状況は?

相談しても体制が変わらない

手順書の作成や役割分担の明文化、オンコールの見直しを提案しても、検討すらされないまま数か月が過ぎている場合は、体制が変わる見込みは低いと考えられます。

判断の目安として、次の点を振り返ってみてください。

  • 提案した内容が、記録として残る形で検討されたか
  • 改善しない理由を、施設側から説明されたか
  • 同じ問題が、これまでにも繰り返し起きていないか
  • 自分より前に同じ提案をした人がいて、その結果どうなったか

個人の努力で埋められる範囲を超えている状況は、環境を変えるほうが早く解決します。責任感の強い人ほど「自分の伝え方が悪い」と考えがちですが、体制の問題は伝え方では動きません。

施設が掲げる医療体制と実態が食い違っている

「24時間看護師常駐」「看取り対応可」とうたいながら、実際には夜間の看護師配置がない、看取りの手順が整っていないといった食い違いがある場合は注意が必要です。

老人福祉法第29条第7項では、有料老人ホームの設置者は、入居する方や入居しようとする方に対して、供与する介護等の内容などに関する情報を開示しなければならないと定められています。掲げている内容と実態が異なる状態は、入居者さんとご家族に対しても誠実とはいえません。

関連法令
老人福祉法 第29条第7項
条文(原文)
「有料老人ホームの設置者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該有料老人ホームに入居する者又は入居しようとする者に対して、当該有料老人ホームにおいて供与をする介護等の内容その他の厚生労働省令で定める事項に関する情報を開示しなければならない。」
言い換えると
施設が提供する介護等の内容は、入居前に入居者へ開示することが法律上の義務です。
第1項(補足) 有料老人ホームを設置しようとする者は、あらかじめ、設置地を管轄する都道府県知事に届け出なければならないと定められています。

こうした施設では、実態との差を埋める役割が現場の看護師に押し付けられがちです。自分の判断で補い続ける状況が常態化しているなら、責任の面でも離れることを考えたほうがよい段階といえます。

参考:e-Gov法令検索「老人福祉法」労働政策研究・研修機構「2025年 病院看護実態調査(日本看護協会)」

有料老人ホームで働き続けるメリット

車いすの高齢者の手を握って笑顔で話す看護師

辞めたい理由が目立つ一方で、有料老人ホームには病院では得にくい働き方の利点もあります。転職を考えるときは、いま手にしているものを確認しておくと、条件の優先順位を決めやすくなります。

ここで挙げる3つは、辞めた後で「あれは恵まれていた」と気づきやすい部分です。

長期的に入居者と関われる

有料老人ホームは生活の場であるため、入居者さんとの関わりが年単位で続きます。退院すれば関係が終わる病棟と違い、その方の変化を継続して見守れるのは大きな特徴です。

小さな変化に気づけるのは、日々の様子を知っているからこそです。数値に表れる前の異変を察知できる観察力は、この環境で育つ力といえます。

ご家族とも長い付き合いになるため、信頼関係が築ければ対応の負担はむしろ軽くなっていきます。看取りまで関わった経験は、他の職場では簡単に得られないものです。

日勤中心の働き方を選びやすい

介護付有料老人ホームの人員基準では、常に1人以上の介護職員を確保することが求められている一方、看護職員に夜勤の配置は求められていません。この構造から、看護師は日勤中心、夜間はオンコールで支えるという勤務形態が一般的になっています。

有料老人ホームの人員基準(指定居宅サービス等基準 第175条)
職種 配置基準 時間帯の指定
介護職員 看護職員と合わせて要介護者3人につき1人以上、常に1人以上を確保 常時(24時間)
看護職員 常勤換算方法による人数のみを規定 定めなし
生活相談員 常勤換算方法で利用者100人につき1人以上 定めなし
機能訓練指導員 1人以上 定めなし
計画作成担当者 1人以上 定めなし
夜間:介護職員が常駐 看護師はオンコールで対応

※看護職員に夜勤の配置基準がないことが、日勤中心の働き方につながっています。

夜勤がない働き方は、生活リズムを保ちやすく、育児や介護と両立しやすい選択肢です。病棟の交代制勤務から離れたい人にとって、有料老人ホームが選ばれる理由のひとつになっています。

もちろんオンコールの負担はありますが、夜勤とオンコールのどちらが自分に合うかは人によって異なります。

介護施設のなかでは給与水準が高い

有料老人ホームは、介護施設のなかでは給与水準が高めの傾向があります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で正看護師の月給中央値を比べると、有料老人ホームは292,000円で、介護老人保健施設の288,000円、特別養護老人ホームの271,300円、デイケア・デイサービスの270,000円を上回っています。

介護施設だけで比べた月給中央値(正看護師)
30万円
介護施設内で最高 292,000
288,000
271,300
270,000
0円
有料老人ホーム
介護老人保健施設
特別養護老人ホーム
デイケア・デイサービス

※介護施設に絞ると、有料老人ホームの位置づけは上位に変わる

前段では病院や訪問看護と比べて低いことに触れましたが、比較する相手を介護施設に絞ると位置づけは変わります。「介護分野で日勤中心に働く」という条件のなかでは、有料老人ホームは選びやすい水準といえます。

有料老人ホームの看護師求人データ
  • 正看護師の掲載求人9,633件のうち、有料老人ホームは369件
  • 有料老人ホームの月給は中央値292,000円、最高493,000円
  • 正看護師求人全体では、賞与・ボーナスありが63%

※医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)

キャリアパートナー

給与だけで判断する必要はありませんが、いまの条件がどの位置にあるかを知っておくと、転職先の求人を見たときに冷静に比較できます。

参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」

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有料老人ホームの看護師からの転職先

屋外でバインダーを抱えて遠くを見る看護師

転職先を考えるとき、いきなり業態を変える必要はありません。悩みの原因がその施設固有の体制にあるなら、同じ有料老人ホームで条件を変えるほうが希望に近づく場合があります。

有料老人ホームを選んだ理由が「日勤中心で働きたい」「じっくり関わりたい」だったなら、その希望まで手放してしまうのはもったいない選択です。ここでは、条件を変える選択肢から順に紹介します。

病院以外の就業先を幅広く知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

条件を変えた別の有料老人ホーム

同じ有料老人ホームでも、類型と体制が違えば働き方は大きく変わります。看護師が複数名配置されている施設、訪問看護ステーションを併設している施設、協力医療機関との連携が手厚い施設では、1人で抱える場面は減ります。

特に、看護職員の人数が基準ぎりぎりの施設から、余裕をもって配置している施設へ移るだけで負担は変わります。介護付なら常勤換算の人数、住宅型なら実際の配置時間帯を確認しましょう。

日勤中心という働き方を保ったまま、責任の分散だけを実現できる点が、この選択肢の利点です。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、在宅復帰を目指すためのリハビリテーションを提供する施設です。有料老人ホームとの最大の違いは、介護保険法第95条により、原則として都道府県知事の承認を受けた医師に管理させなければならないと定められている点です。

施設内に医師がいる体制であれば、急変時の判断を看護師だけで背負う場面は減ります。医療的な処置の機会も有料老人ホームより多く、スキルの維持を重視する人に向いています。

有料老人ホーム と 介護老人保健施設 の体制比較
有料老人ホーム
施設の位置づけ 生活の場(住まい)
管理者 医師である必要はない
医師の配置 協力医療機関との連携が中心
入居者さんとの関わり 年単位で続きやすい
292,000 正看護師 月給中央値
介護老人保健施設
施設の位置づけ 在宅復帰を目指す施設
管理者 介護保険法第95条により、原則、都道府県知事承認の医師(同条2項により知事承認があれば医師以外も可)
医師の配置 施設に医師がいる体制
入居者さんとの関わり 在宅復帰までの短期になりやすい
288,000 正看護師 月給中央値
※管理者が医師かどうかが一次判断の重さを分ける

一方で在宅復帰に向けた支援が中心となるため、入居者さんとの関わりは短期になりやすい点は理解しておきたいところです。

訪問看護ステーション

訪問看護ステーションは、利用者さんのご自宅へ出向いて看護を提供する事業所です。人員基準では、看護師などの看護職員を常勤換算方法で2.5以上配置することとされており、うち1人は常勤である必要があります。

1件あたりの訪問時間が確保されているため、1人の利用者さんにじっくり関わりたいという希望を叶えやすい働き方です。給与水準も、医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では正看護師の月給中央値が320,000円と、掲載職場のなかで高い部類に入ります。

ただし訪問中の判断は1人で行うことになるため、責任の重さそのものが軽くなるわけではありません。相談体制や同行訪問の仕組みが整っているかを確認しましょう。

転職活動するなら?

デイサービス

デイサービス(通所介護)は、日中に通ってくる利用者さんへ入浴や食事、機能訓練などを提供するサービスです。営業時間が日中に限られるため、オンコールがなく生活リズムを保ちやすい点が特徴です。

利用者さんの多くは自宅で生活しており、医療依存度は有料老人ホームより低い傾向があります。急変対応の頻度が下がるぶん、責任の重さから離れたい人には向いています。

一方、医療行為の機会はさらに少なくなります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも正看護師の月給中央値は270,000円と、有料老人ホームより下がる傾向があります。

クリニックの外来

クリニックの外来は、医師のもとで診療の補助を行う働き方です。判断の最終責任は医師にあるため、一次判断を1人で担う負担からは離れられます

日曜祝日が休診の施設が多く、勤務時間も比較的読みやすい環境です。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、正看護師の月給中央値は286,000円となっています。

診療科によって求められる知識や処置は変わるため、これまでの経験を活かせる科を選ぶと立ち上がりがスムーズです。

転職先5つの比較マトリクス
負担が小さい・機会が多い  施設や条件による  負担が大きい・機会が少ない
観点 別の有料老人ホーム 介護老人保健施設 訪問看護ステーション デイサービス クリニック外来
一次判断を1人で担う場面
医療行為の機会
夜勤・オンコール
正看護師の月給中央値 292,000円 288,000円 320,000円 270,000円 286,000円

※月給中央値は正看護師求人データ(2026年時点)に基づく目安

参考:e-Gov法令検索「介護保険法」e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」

転職前に確認したい施設の見極めポイント

バインダーを手に向かい合って話す2人の看護師

有料老人ホームは、類型が同じでも体制が施設ごとに異なります。求人票の記載だけで判断すると、入職後に「聞いていた話と違う」という事態になりかねません。

ここでは、求人票の確認、面接での質問、見学時の観察でそのまま使える4つの項目を挙げます。いずれも入職前に確認できる内容なので、遠慮せず聞いて問題ありません。

なお、令和6年4月から労働条件明示のルールが改正され、就業場所と業務の「変更の範囲」が明示事項に追加されています。配属や業務内容が変わる可能性についても、書面で確認できるようになりました。

求人票の表記別 確認すべき質問リスト
求人票の表記そのまま使える確認質問
住宅型有料老人ホーム看護師は何名、どの時間帯に勤務していますか
オンコールあり月の当番回数と、実際に電話が鳴る回数、出勤に至る回数はそれぞれどのくらいですか
看護師○名在籍常勤換算では何名ですか。日中に看護師が1人になる時間帯はありますか
24時間対応夜間に対応するのは介護職員ですか、看護師ですか。救急要請の判断は誰が行いますか
看取り対応可看取りの手順は文書として整備されていますか
介護業務あり食事介助・入浴介助・記録は、看護師と介護職員でどう分担していますか

※表記そのものではなく、その中身を聞くのがポイントです

看護師の配置人数

最初に確認したいのは、看護職員が何名いて、どの時間帯にいるかです。介護付であれば常勤換算での人数、住宅型であれば実際の勤務時間帯を聞きます。

質問の仕方としては、次のように具体化すると答えが曖昧になりません。

  • 入居者数に対して看護職員は常勤換算で何名か
  • 日中に看護師が1人になる時間帯はあるか
  • 土日祝日の看護師の配置はどうなっているか
  • 欠員が出たときに誰が補充するのか

「基準は満たしています」という回答だけで終わる場合は、余裕のない配置である可能性があります。基準は下限であって、働きやすさを示す数字ではありません。

オンコールの頻度と手当

オンコールについては、当番回数だけでなく、実際に呼び出される回数まで確認します。「月に何回当番があり、そのうち平均して何回電話が鳴り、何回出勤しているか」と3段階で聞くのがポイントです。

手当についても、待機に対する手当と、出勤した場合の手当が分けて支給されるかを確認します。待機手当だけで出勤分の割増賃金が支払われない運用になっていないかは、重要な確認事項です。

オンコールで確認したい4項目


  • 1か月あたりの当番回数と、看護師1人あたりの分担
  • 実際に電話が鳴る回数と、出勤に至る回数
  • 待機手当と出勤時の手当の金額と支給条件
  • 翌日の勤務が調整されるかどうか

夜間の医療対応の範囲

夜間に入居者さんの状態が変わったとき、誰がどこまで判断するのかを確認します。協力医療機関への連絡が何時まで可能か、救急要請の判断を誰が行うかは、施設ごとに大きく異なります。

看取りに対応している施設であれば、その手順が文書として整備されているかも確認したい点です。手順が明文化されているかどうかは、判断の負担を個人に負わせない体制があるかを示します

見学の際は、急変時の対応フローが掲示されているか、緊急連絡先の一覧が整理されているかを見ておくと、実態が伝わってきます。

介護スタッフとの業務分担

看護師と介護職員の業務分担が明文化されているかは、入職後の働きやすさを大きく左右します。「協力してやっています」という答えだけでは判断できないため、具体的な場面で聞くとよいでしょう。

食事介助、入浴時の観察、記録の記入、通院同行について、それぞれ誰が担当しているかを確認します。文書として整理されている施設であれば、見せてもらえるか尋ねてみてください。

また、施設の運営状況は「介護サービス情報公表システム」で公開されています。職員体制や研修の実施状況などを事前に調べられるため、面接前に目を通しておくと質問の精度が上がります。有料老人ホームの設置者には、老人福祉法第29条第7項により提供する介護等の内容に関する情報開示が求められている点も覚えておきましょう。

参考:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」e-Gov法令検索「老人福祉法」

まとめ

有料老人ホームの看護師が辞めたいと感じる理由には、急変時の一次判断を担う責任、限られた時間、医療行為の少なさ、オンコールの負担、役割分担の曖昧さなどがあります。どれも個人の努力不足ではなく、体制から生まれているものです。

大切なのは、そのつらさが有料老人ホームという業態によるものなのか、類型による体制の差なのか、施設固有の運用なのかを切り分けることです。介護付は人員基準で看護職員の配置が定められている一方、住宅型には同じ基準が適用されません。同じ「有料老人ホーム」でも中身は別物です。

対処法を試しても体制が変わらない、心身の不調が続いている、掲げている医療体制と実態が食い違っている。こうしたサインが出ているなら、環境を変える判断も選択肢に入ります。

転職先は、条件を変えた別の有料老人ホーム、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、デイサービス、クリニックの外来などがあります。まずは自分が有料老人ホームを選んだ理由を書き出し、そのうち手放したくないものを決めるところから始めてみてください。求人を比較する際は、配置人数、オンコールの実態、夜間の対応範囲、業務分担の4点を必ず確認しましょう。

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この記事を書いた人
医療キャリアナビ編集部

医療キャリアナビ編集部

記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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