調剤薬局で働く薬剤師の年収は平均いくら?年代別相場と年収を上げる方法

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調剤薬局で働いていると、「自分の年収は同世代の薬剤師と比べて妥当なのだろうか」と気になる場面があります。求人サイトに並ぶ平均年収の数字はばらつきが大きく、手元の給与明細と見比べても判断がつかないという声は少なくありません。

この記事では、厚生労働省の調査をもとに調剤薬局で働く薬剤師の平均年収を示したうえで、年代別の推移と、同じ調剤薬局でも年収に差がつく要因を整理します。さらに、自分の年収が相場より低いかどうかを確かめる手順と、調剤薬局で年収を上げる具体的な方法までまとめました。

額面だけでなく手取りの目安にも触れていますので、給与明細や源泉徴収票を手元に置きながら読み進めてみてください。

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    調剤薬局で働く薬剤師の平均年収

    給料袋を指さす男性薬剤師

    調剤薬局の薬剤師の年収を調べるとき、最初に押さえておきたいのが「どの統計を見ているか」です。世の中に出回っている薬剤師の平均年収は、病院やドラッグストア、製薬企業などを含めた薬剤師全体の数字であることが多く、調剤薬局だけを切り出したものではありません。

    調剤薬局(保険薬局)に絞って給与を集計している公的な調査は限られています。ここでは、保険薬局を対象に職種別の給与を集計している厚生労働省の調査をもとに、一般薬剤師と管理薬剤師それぞれの水準、他の職場との比較、そして手取りの目安までを順に見ていきます。

    一般薬剤師の平均年収と管理薬剤師との差

    厚生労働省の第25回医療経済実態調査(令和7年実施)は、保険薬局に勤める職員の給与を職種別に集計している数少ない公的調査です。この調査によると、保険薬局に勤める薬剤師の平均は、給料年額4,245,802円に賞与548,881円を加えた約479万円でした。

    一方、薬局を実地に管理する管理薬剤師は、給料年額6,439,396円に賞与814,188円を加えた約725万円です。同じ保険薬局のなかで、一般の薬剤師と管理薬剤師のあいだには年間246万円ほどの開きがあります。

    この差は、単純な役職手当の上乗せというだけではありません。医薬品医療機器等法第7条では、薬局開設者が薬剤師でないときは、その薬局で薬事に関する実務に従事する薬剤師のなかから管理者を指定し、実地に管理させなければならないと定められています。法律上の管理責任を負う立場であることが、給与水準の差として表れていると考えられます。

    なお同じ調査では、経営母体による差も確認できます。法人立の薬局に勤める薬剤師は約480万円、個人立では約401万円で、約79万円の開きがありました。

    保険薬局の職種別 平均年収比較

    0200万円400万円600万円800万円
    管理薬剤師
    725万円
    薬剤師
    479万円
    管理薬剤師との差 約246万円
    事務職員
    272万円

    ※いずれも給料年額と賞与の合計

    病院・ドラッグストア・製薬企業と比べた年収水準

    同じ第25回医療経済実態調査は、一般病院の職種別給与も集計しています。一般病院に勤める薬剤師は、給料年額4,654,030円に賞与1,157,216円を加えた約581万円でした。保険薬局の薬剤師と比べると、100万円ほど高い水準です。

    注目したいのは、その差の中身です。給料年額そのものは病院465万円に対して保険薬局425万円と40万円ほどの違いですが、賞与は病院約116万円に対して保険薬局は約55万円と2倍以上の開きがあります。月々の給与では調剤薬局が見劣りしなくても、賞与で年収差が生まれている構図です。

    ただし一般病院のなかでも開設者による差が大きく、医療法人立に限ると約540万円まで下がります。

    保険薬局と一般病院の年収内訳(給料年額+賞与)

    給料年額 賞与
    保険薬局
    479万円
    給料 424.6万円 賞与 54.9万円
    一般病院
    581万円
    給料 465.4万円 賞与 115.7万円

    ※賞与額は一般病院が保険薬局の約2.1倍で、年収差の主因となっている

    ドラッグストアや製薬企業については、公的統計に「ドラッグストア勤務の薬剤師」といった区分がなく、調剤薬局と同じ条件で比べられる数字は公表されていません。参考として、令和7年賃金構造基本統計調査における職種「薬剤師」の平均年収は約567万円(平均40.1歳、労働者数94,850人)ですが、これは勤務先を問わない薬剤師全体の数字である点に注意が必要です。

    額面年収の内訳と手取りの目安

    年収の話が噛み合わなくなる原因の多くは、額面と手取りが混ざっていることにあります。先ほどの約479万円は額面であり、ここから社会保険料と税金が引かれます。

    内訳を見ると、毎月の給料にあたる部分が年間4,245,802円、賞与が548,881円です。月額に直すと約35万4千円が給料、賞与は年間で約55万円という構成になります。

    この年収で手取りを試算してみます。社会保険料が約71万5千円、所得税が約10万5千円、住民税が約22万8千円となり、手取りはおよそ375万円(額面の約78%)、月あたり約31万2千円という結果になりました。

    • 40歳未満・独身で扶養家族なし(介護保険料の負担なし)
    • 協会けんぽ東京支部・令和8年度の保険料率
    • 雇用保険は一般の事業(労働者負担0.5%)
    • 所得税は令和7年分以降、住民税は令和8年度の基準

    扶養家族の有無や居住地、各種控除によって変わるため、あくまで概算として捉えてください。

    額面年収から手取りまでの流れ

    額面年収
    4,794,684円
    社会保険料-714,741円
    所得税-104,754円
    住民税-227,600円
    手取り額
    3,747,588円
    額面に対する割合
    78.2%
    月あたり
    312,299円

    給与明細と見比べるときは、額面の年収ではなく、この「毎月の給料」と「賞与」の2本立てで比べると実態がつかみやすくなります。

    参考:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の報告(令和7年実施)」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」 / 国税庁「No.1199 基礎控除」

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    【年代別】調剤薬局薬剤師の年収の推移

    薬局の廊下に立つベテランの男性薬剤師

    年代ごとの年収を確認するときに使えるのが、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査です。ここには職種「薬剤師」の年齢階級別データが載っており、年収がどのように動いていくかを追えます。

    • この調査の「薬剤師」は病院や製薬企業の勤務者も含む集計で、調剤薬局に限定した数字ではありません
    • 金額そのものより「カーブの形と上がり幅」を読む材料として使い、水準は前章の保険薬局のデータ(約479万円)で判断してください

    なお同調査では、薬剤師の平均年齢は40.1歳、平均勤続年数は8.6年です。勤続年数がそれほど長くないことは、転職によってキャリアを組み立てる人が多い職種であることを示しています。

    20代の年収と初任給の目安

    20〜24歳のきまって支給する現金給与額は337,600円です。ただし年間賞与は32,500円しかなく、額面年収に直すと約408万円にとどまります。これは賞与が少ない職種だからではなく、入社1年目は賞与の算定対象期間が短く、支給されても寸志程度になるためです。

    25〜29歳になると年間賞与が656,400円まで増え、年収は約495万円に上がります。実質的な「賞与を含めた1年目以降の姿」は、この25〜29歳の数字に近いといえます。

    初任給については、薬剤師に限定した公的統計がありません。求人ベースの目安として、医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、調剤薬局の正社員求人1,124件の月給中央値は365,000円、下限は225,000円でした。中央値には経験者の求人も含まれるため、未経験からのスタートは下限に近い水準から始まると考えておくと現実的です。

    30代の年収

    30〜34歳はきまって支給する現金給与額が364,700円、年間賞与が955,500円で、年収は約533万円です。20代後半から40万円ほど上がりますが、伸びの中心は月給ではなく賞与にあります。

    35〜39歳になると月給が410,600円、年間賞与が1,052,800円となり、年収は約598万円まで伸びます。20代後半からの10年で100万円以上増える計算で、薬剤師の年収カーブのなかで最も伸びが大きい時期です。

    調剤薬局では、この時期に管理薬剤師への打診を受ける人が出てきます。平均勤続年数が8.6年であることを踏まえると、30代は「今の薬局で役職を目指すか、条件のよい薬局へ移るか」を考える節目にあたる年代だといえます。

    40代の年収

    40〜44歳は月給414,400円、年間賞与979,200円で年収は約595万円と、30代後半とほぼ横ばいになります。伸びが一度止まるように見える年代です。

    そこから45〜49歳になると月給465,000円、年間賞与1,178,400円となり、年収は約676万円とピークを迎えます。30代後半から40代前半の停滞を抜けた後に、もう一段の上昇があるのがこの職種の特徴です。

    この段階まで来ると、管理薬剤師やエリアマネージャーなどの役職に就いているかどうかが年収を大きく左右します。前章のとおり保険薬局の管理薬剤師は約725万円ですから、役職に就けるかどうかで数百万円単位の差が生まれる年代です。

    50代以降の年収

    50〜54歳は年収約643万円、55〜59歳は約658万円で、45〜49歳のピークからはやや下がった水準で推移します。定年前まで大きくは崩れず、高い水準が保たれる形です。

    60〜64歳になると月給404,200円、年間賞与650,300円となり、年収は約550万円まで下がります。再雇用にともなう待遇の見直しが入る年代であるためと考えられます。

    一方で、調剤薬局は年齢を重ねても働き続けやすい職場でもあります。パート・アルバイトの求人も一定数あり、勤務日数を抑えながら経験を活かす選択肢が残されている点は、他の職種にはない強みだといえます。

    薬剤師の年代別推定年収の推移(20〜64歳)

    408 495 533 598 595 ピーク 676 643 658 550 50代以降 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64

    ※45〜49歳(675.8万円)をピークに、50代以降はゆるやかな低下が続く

    参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

    薬剤師の求人を探す

    同じ調剤薬局でも年収に差がつく要因

    調剤室で笑顔を見せる管理薬剤師

    同じ調剤薬局で同じように働いていても、年収には差が生まれます。その差は本人の頑張りだけで決まるものではなく、勤務地・薬局の規模や経営母体・役職といった「条件」によるところが大きいのが実情です。

    ここでは公的データで確認できる3つの要因を取り上げます。自分の年収が相場より低いかを判断する前に、どの条件で比べるべきかを整理しておくと、次の章の確認作業がスムーズになります。

    勤務地(都市部と地方)

    薬剤師の年収を都道府県別に示した公的統計は、職種別には公表されていません。そこで参考になるのが、厚生労働省が薬剤師確保対策のなかで示している薬剤師偏在指標です。これは地域の業務量に対して薬剤師がどれだけ足りているかを表す指標で、1.0を下回ると相対的に不足していることを意味します。

    薬局薬剤師の偏在指標は全国ベースで1.08ですが、都道府県別に見ると最も高い東京都が1.42、最も低い福井県が0.73と、約1.9倍の開きがあります。指標が低い地域は薬剤師の確保が難しく、人材を集めるために給与や住宅補助などの条件を手厚くする薬局が出てくる背景になっています。

    「都市部のほうが給料が高い」というイメージを持たれがちですが、薬剤師の場合はむしろ逆の力が働く場面があるということです。求人を比較するときは、勤務地を都市部に限定せず、生活費とのバランスで見ると選択肢が広がります。

    薬局薬剤師の偏在指標(都道府県別)

    都道府県 全国平均
    00.51.01.5
    東京都
    1.42
    神奈川県
    1.25
    広島県
    1.19
    兵庫県
    1.19
    福岡県
    1.17
    全国
    1.08
    鹿児島県
    0.86
    富山県
    0.82
    福井県
    0.73

    最高の東京都と最低の福井県では約1.9倍の差

    薬局の規模・経営母体

    大手チェーンほど年収が高いと思われがちですが、公的データはそう単純な関係を示していません。第25回医療経済実態調査は、同一グループの店舗数別に薬剤師の給与を集計しています。

    薬剤師(賞与込み)で見ると、1店舗のみの薬局は約440万円、2〜5店舗が約495万円、20〜49店舗が約515万円で最も高く、300店舗以上の大手グループは約468万円でした。店舗数が増えるほど上がるのではなく、中規模のグループが最も高いという結果です。

    管理薬剤師ではさらに傾向がはっきりします。2〜5店舗のグループが約834万円と最も高く、300店舗以上は約647万円です。規模が大きいほど給与テーブルが整備される一方で、上限も決まりやすいという構造がうかがえます。個人立か法人立かでも差があり、法人立の薬剤師が約480万円、個人立が約401万円でした。

    同一グループの店舗数別 年収(単位:万円)

    店舗数薬剤師管理薬剤師
    1店舗
    440.5
    696.6
    2〜5店舗
    494.8
    834.2
    6〜19店舗
    493.8
    753.6
    20〜49店舗
    515.3
    677.2
    50〜99店舗
    481.2
    635.7
    100〜199店舗
    437.5
    695.0
    200〜299店舗
    456.2
    648.0
    300店舗以上
    468.0
    647.0

    ※色付きの数字が各列の最高値。薬剤師は20〜49店舗、管理薬剤師は2〜5店舗が最も高い

    金額だけでなく、どちらの仕組みが自分に合うかで見比べるのがおすすめです。

    • 大手チェーン
      等級や給与テーブル、研修制度、転勤にともなう住宅補助が整いやすい一方、上限も決まりやすい
    • 中小・地域密着
      給与テーブルの自由度が高く、貢献度が処遇に反映されやすい。制度の明文化は薬局ごとに差がある
    調剤薬局の求人データ(2026年時点)
    • 調剤薬局の正社員求人1,124件の月給中央値は365,000円。下限225,000円〜上限541,500円と幅が大きい
    • 賞与・ボーナスありは66%、退職金制度ありは57%。月給が同じでも年収差につながる
    • 住宅補助ありは23%、寮・社宅ありは10%。勤務地の条件と合わせて確認したい
    キャリアパートナー

    役職と雇用形態

    役職の有無は、調剤薬局で最も年収差が出る要素です。保険薬局の薬剤師が約479万円、管理薬剤師が約725万円ですから、役職に就くかどうかで約246万円の違いが生じます。

    ただしポストの数は限られています。同じ調査では、1施設あたりの年間延べ人員数が管理薬剤師11.7人月、薬剤師24.1人月と集計されています。常勤換算すると管理薬剤師は1薬局に約1人、一般の薬剤師は約2人という配置で、管理薬剤師の枠は薬局あたり1つが基本です。

    雇用形態による違いもあります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、薬剤師の求人1,450件のうちパート・アルバイトが518件を占めています。時給制で働く場合は賞与や退職金の対象外となることが多く、同じ勤務時間でも年収は正社員を下回ります。

    参考:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の報告(令和7年実施)」 / 厚生労働省「薬剤師確保対策」 / e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

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    自分の年収が相場より低いかを確認する手順

    バインダーにメモを取る女性薬剤師

    平均年収を知っただけでは、自分の給与が妥当かどうかは判断できません。平均は年代も勤務地も役職も混ざった数字だからです。「平均479万円」と聞いても、28歳の一般薬剤師と48歳の管理薬剤師では比べる相手が違います。

    ここでは、手元の給与明細と源泉徴収票を使って、3つの手順で自分の年収を照合する方法を紹介します。順番どおりに進めれば、感覚ではなく根拠を持って判断できます。

    年代・勤務地・役職の条件をそろえて相場と比べる

    最初に行うのは、比べる相手をそろえる作業です。年齢だけを合わせて平均と比べると、役職者を含んだ数字と自分を比べることになり、実態より低く見えてしまいます。

    具体的には、①自分の年代、②役職の有無、③薬局の店舗数規模と経営母体(法人立か個人立か)の3つをそろえてから比較します。たとえば「32歳・役職なし・3店舗の法人立」であれば、年代別データの30〜34歳(約533万円)と、店舗数別の2〜5店舗の薬剤師(約495万円)の両方を目安にします。

    このとき注意したいのが、年代別データが薬剤師全体の統計である点です。調剤薬局に絞った数字はやや低めに出る傾向があるため、年代別の金額は上限側の目安、保険薬局のデータは実勢に近い目安として、幅で捉えると判断を誤りにくくなります。

    1
    年代をそろえる
    自分の年齢が含まれる年代区分の数字で比べる。
    2
    役職の有無をそろえる
    一般薬剤師か管理薬剤師かで見る相場を変える。
    3
    店舗数規模と経営母体をそろえる
    勤務先の店舗数と法人立・個人立の別を確認する。
    例:32歳・役職なし・3店舗の法人立の場合
    32歳 役職なし 3店舗・法人立
    ↓ 2つの目安と比べる
    年代の目安(30〜34歳)
    533万円
    店舗規模の目安(2〜5店舗)
    495万円

    ※年代別は上限側、店舗規模別は実勢に近い目安として使う

    額面ではなく基本給と手当の内訳で比べる

    次に、年収の中身を分解します。同じ額面500万円でも、基本給が高い場合と時間外手当で積み上げている場合とでは、意味がまったく違うためです。

    令和7年賃金構造基本統計調査では、薬剤師のきまって支給する現金給与額が398,700円、そこから時間外・休日・深夜労働手当を除いた所定内給与額が369,700円と集計されています。差額の29,000円が時間外などの変動手当で、年間に直すと約34万8千円です。この分は残業が減れば消える収入である点を押さえておきましょう。

    給与明細の5項目を「動きやすさ」で仕分ける
    下がりにくい部分
    • ①源泉徴収票の支払金額
    • ②基本給
    • ③固定手当
    変動する部分
    • ④変動手当
    • ⑤賞与年間合計
    ④変動手当の出し方(例)
    398,700円 きまって支給する現金給与額
    −
    369,700円 所定内給与額
    =
    29,000円 変動手当(月)
    年間に換算すると約34.8万円になる

    確認する順序は、①源泉徴収票の支払金額(額面年収)、②給与明細の基本給、③固定的な手当(管理薬剤師手当・住宅手当など)、④変動する手当(時間外・休日出勤)、⑤賞与の年間合計、の5項目です。このうち①〜③が下がりにくい部分、④が景気や人員配置で動く部分にあたります。

    相場より低いと判断できる基準を確認する

    条件をそろえて内訳まで分解したうえで、次のいずれかに当てはまる場合は、相場より低い可能性を検討する余地があります。

    • 同じ年代・同じ役職なしの目安より年間50万円以上低い
    • 基本給が数年間ほとんど変わらず、昇給が年数千円にとどまっている
    • 額面は保たれているが、その多くを時間外手当が占めている
    • 賞与が年間で月給1か月分に満たない状態が続いている
    • 管理薬剤師を担っているのに、一般薬剤師との差が年50万円に届かない

    特に4つ目は見落とされがちです。保険薬局の薬剤師の賞与は平均548,881円で、月給約35万4千円に対しておおむね1.5か月分にあたります。賞与が月給1か月分を下回る状態が続いているなら、平均から離れていると判断できます。

    一方、これらに当てはまらない場合は、年収そのものより働き方や将来のキャリアで比べたほうが納得できる選択につながります。

    参考:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の報告(令和7年実施)」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

    調剤薬局の年収が上がりにくいといわれる理由

    調剤室でノートを見ながら考え込む女性薬剤師

    調剤薬局は「初任給は高いが、その後が伸びにくい」といわれることがあります。実際、年代別の推移を見ても30代後半から40代前半にかけて一度伸びが止まります。

    これは個々の薬局の方針というより、調剤薬局というビジネスの構造から生まれる現象です。理由を知っておくと、どこに手を打てば年収が動くのかが見えてきます。

    収入が調剤報酬に依存しているため

    第25回医療経済実態調査によると、保険薬局1施設あたりの年間収益は175,813千円で、そのうち保険調剤収益が159,225千円を占めています。収益の90.1%が調剤報酬による収入という構造です。

    さらに費用の内訳を見ると、医薬品等費が収益の63.2%を占めています。薬の仕入れ代が支出の大半を占めるため、給与費に回せるのは収益の18.1%、最終的に手元に残る損益差額は5.0%にとどまります。

    保険薬局1施設あたりの収益・費用の構成比
    収益の内訳
    90.1%保険調剤収益
    90.1%保険調剤収益
    9.2%その他の薬局事業収益
    収益100に対する使われ方
    63.2%医薬品等費
    63.2%医薬品等費
    18.1%給与費
    12.1%その他の経費
    1.6%減価償却費・委託費など
    5.0%手元に残る損益差額
    いずれも収益を100としたときの割合。薬の仕入れ代だけで6割を超える

    調剤報酬の点数は診療報酬の算定方法(厚生労働省告示第59号)で全国一律に定められており、薬局が独自に単価を決めることはできません。売上の伸ばし方が制度によって枠づけられているため、人件費の原資も大きくは増えにくいというのが実態です。

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    管理職のポストが限られ昇給の幅も小さいため

    前章のとおり、管理薬剤師は1薬局に1人という配置が基本です。1施設あたりの延べ人員数は管理薬剤師11.7人月、薬剤師24.1人月で、常勤の薬剤師2人に対して管理職の枠は1つという計算になります。

    病院のように主任・係長・薬剤部長といった段階的な階層が組まれているわけではなく、多くの調剤薬局では「一般薬剤師」と「管理薬剤師」の2段階しかありません。そのため、役職に就くまでのあいだは昇給が基本給の定期昇給分に限られやすくなります。

    チェーン薬局ではエリアマネージャーや本部職といったポストもありますが、店舗数に対して数が少なく、全員が到達できる道ではありません。ポストの絶対数が少ないことが、昇給幅の小ささにつながっています。

    個人の成果が店舗の売上に反映されにくいため

    調剤薬局の収入は、来局した患者さんに対して算定される調剤報酬で決まります。第25回医療経済実態調査では、1施設あたりの年間処方せん枚数は16,732枚と集計されています。この枚数は近隣の医療機関の規模や診療体制に左右される部分が大きく、薬剤師個人の努力で大きく増やせるものではありません。

    算定できる点数も制度側で決まっています。令和8年度の調剤報酬では、特定の医療機関からの処方せん集中率が高い薬局に対する門前薬局等立地依存減算(15点の減算)のように、立地や体制によって点数が変わる仕組みが設けられています。個人の接遇や知識ではなく、薬局の置かれた条件が収入を決める部分が大きいということです。

    こうした構造があるため、営業職のように成果が給与へ直結する仕組みは作りにくくなっています。年収を動かしたい場合は、個人の頑張りの量ではなく「担う業務の種類」を変えるほうが効果的です。

    参考:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の報告(令和7年実施)」 / 厚生労働省「診療報酬の算定方法」

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    調剤薬局で年収を上げる方法

    調剤薬局でガッツポーズをする薬剤師

    前章のとおり、調剤薬局の年収は構造的に伸びにくい面があります。裏を返せば、構造のなかで年収が動くポイントは限られており、そこを押さえれば効率よく上げられるということです。

    ここでは、公的なデータや制度で裏づけのある4つの方法を紹介します。いずれも今の職場で始められるものから、転職を前提とするものまで幅があるので、自分の状況に近いところから検討してみてください。

    管理薬剤師などの役職に就く

    最も効果が大きいのは管理薬剤師になることです。保険薬局の薬剤師が約479万円、管理薬剤師が約725万円ですから、年収ベースで約246万円の上乗せが期待できます。他のどの方法よりも金額の動きが大きい選択肢です。

    管理薬剤師には、医薬品医療機器等法上の要件があります。同法第7条第3項では、管理者は法令上の義務を遂行するために必要な能力と経験を有する者でなければならないと定められています。何年の実務経験が必要かは法律で一律に決まっているわけではなく、薬局や地方厚生局の運用によって扱いが異なる点は確認が必要です。

    なお、店舗数別のデータでは2〜5店舗のグループの管理薬剤師が約834万円と最も高い水準でした。大手チェーンの管理薬剤師より、中規模グループの管理薬剤師のほうが高いという結果は、役職を目指す際の職場選びの参考になります。

    医薬品医療機器等法 第7条
    薬局の管理者(管理薬剤師)の指定に関する規定
    第1項 開設者が薬剤師であるときは、自らその薬局を実地に管理しなければならない。ただし、その薬局で実務に従事する他の薬剤師を管理者に指定して管理させるときは、この限りでない
    第2項 開設者が薬剤師でないときは、その薬局で実務に従事する薬剤師のうちから管理者を指定し、実地に管理させなければならない
    第3項 薬局の管理者は、義務の遂行と事項の遵守に必要な能力および経験を有する者でなければならない
    開設者が薬剤師かどうかにかかわらず、薬局の管理者は法律上「薬剤師」であることが前提であり、能力・経験の要件を満たした者が指定される役職として位置づけられています。

    認定薬剤師・専門薬剤師の資格を取得して手当を得る

    資格取得も年収を動かす手段のひとつです。ただし、認定薬剤師や専門薬剤師の手当額を集計した公的統計はないため、金額そのものは求人票で個別に確認する必要があります。

    制度面で押さえておきたいのが、認定薬局の仕組みです。医薬品医療機器等法では、都道府県知事が認定する薬局として次の2つが定められています。

    • 地域連携薬局(第6条の2)
      他の医療提供施設と連携し、地域における薬剤・医薬品の適正な使用の推進と効率的な提供に必要な情報提供や薬学的知見に基づく指導を行う薬局
    • 専門医療機関連携薬局(第6条の3)
      がんなど厚生労働省令で定める傷病の区分ごとに、専門的な薬学的知見に基づく指導を行う薬局

    これらの認定を受けるには、体制に関する基準を満たす必要があります。専門的な研修を修了した薬剤師の存在が薬局側の価値に直結するため、資格が個人の評価だけでなく薬局の認定要件にも関わる点が、他業種の資格手当との違いです。認定取得を目指している薬局であれば、資格が処遇に反映されやすくなります。

    在宅対応や無菌調剤など加算につながる業務を担う

    薬局の収入を直接押し上げる業務を担うのも有効です。調剤報酬には、通常の外来調剤より高い点数が設定されている業務がいくつかあります。

    在宅患者訪問薬剤管理指導料は、単一建物診療患者が1人の場合650点、2人以上9人以下で320点、それ以外は290点です。原則として患者さん1人につき月4回まで算定でき、末期の悪性腫瘍の患者さんなど一定の条件では週2回かつ月8回まで算定できます。

    無菌製剤処理加算は、届出を行った薬局で注射薬に無菌製剤処理を行った場合に1日につき算定できます。中心静脈栄養法用輸液が69点、抗悪性腫瘍剤が79点、麻薬が69点で、15歳未満の小児の場合はそれぞれ237点・147点・137点と大きく上がります。

    これらは設備や届出、対応できる薬剤師の確保が前提になる業務です。担える人が限られるほど、その薬局にとって代えのきかない存在になります。処遇交渉の材料としても使いやすい領域だといえます。

    在宅患者訪問薬剤管理指導料/無菌製剤処理加算の点数

    単一建物診療患者の人数点数(1回につき)
    1人650点
    2人以上9人以下320点
    それ以外290点

    ※月4回まで算定可。末期の悪性腫瘍等は週2回かつ月8回まで算定できる

    無菌製剤処理を行う薬剤通常15歳未満の小児
    中心静脈栄養法用輸液69点237点
    抗悪性腫瘍剤79点147点
    麻薬69点137点

    ※1日につき算定。届出を行った保険薬局で注射薬を調剤した場合が対象

    年収水準の高い薬局・地域へ転職する

    今の職場で条件が動かない場合は、転職が現実的な選択肢になります。ここまで見てきたデータは、どこを狙うべきかの手がかりになります。

    判断材料になるのは、①店舗数規模(20〜49店舗の薬剤師が約515万円と最も高い)、②経営母体(法人立が約480万円、個人立が約401万円)、③薬剤師偏在指標が低い地域の3点です。特に3点目は見落とされやすく、薬剤師が相対的に不足している地域では、確保のために条件を上げる薬局が出てきます。

    求人条件を見るときは、月給だけでなく賞与の支給実績と昇給の仕組みまで確認しておきましょう。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、薬剤師求人のうち賞与・ボーナスありが66%、退職金制度ありが57%、住宅補助ありが23%でした。月給が同じでも、賞与と手当の有無で年収は数十万円変わります。

    年収を上げる4つの方法の比較

    ① 役職に就く
    年収への効果
    管理薬剤師で年収+約246万円の上乗せ
    今の職場でできるか
    できる(転職不要)
    ② 資格取得
    年収への効果
    手当額は施設ごとに異なり、公的統計はなし
    今の職場でできるか
    できる(転職不要)
    ③ 在宅対応・無菌調剤など加算業務
    年収への効果
    加算につながるかは施設の体制次第
    今の職場でできるか
    できる(転職不要)
    ④ 転職
    年収への効果
    店舗数20〜49店舗規模で約515万円/法人立480万円、偏在指標が低い地域も選択肢
    今の職場でできるか
    転職が必要

    参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法」 / e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 / 厚生労働省「第25回医療経済実態調査の報告(令和7年実施)」

    まとめ

    調剤薬局で働く薬剤師の平均年収は、厚生労働省の第25回医療経済実態調査で約479万円、管理薬剤師は約725万円でした。年代別に見ると20代後半で約495万円、30代後半で約598万円、45〜49歳の約676万円がピークという推移をたどります。

    大切なのは、平均と自分を単純に比べないことです。年代・役職・薬局の規模と経営母体をそろえてから照合し、額面ではなく基本給・固定手当・変動手当・賞与に分解して確認すると、自分の年収が妥当かどうかを根拠を持って判断できます。特に賞与は月給1.5か月分が平均的な水準ですので、ここが大きく下回っていないかは確認しておきたいポイントです。

    年収を上げる方法としては、管理薬剤師などの役職に就く、認定薬局の要件にも関わる資格を取得する、在宅対応や無菌調剤といった加算につながる業務を担う、条件のよい薬局や地域へ移るという4つがあります。まずは給与明細と源泉徴収票を開いて内訳を分解するところから始めてみてください。現状が数字で把握できれば、今の職場で交渉するのか、環境を変えるのかの判断がしやすくなります。

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    ※調査方法:アンケート/対象者:サービス利用による内定者288名/集計期間:2025年1月1日~2025年8月31日

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    医療キャリアナビ編集部

    医療キャリアナビ編集部

    記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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