管理薬剤師と薬局長の違いとは?役割や責任・手当の差を確認
薬局で働いていると、「管理薬剤師」と「薬局長」という2つの肩書きを耳にします。どちらも薬局をまとめる立場に見えますが、実は成り立ちがまったく違います。管理薬剤師は法律で設置が義務づけられた薬局の管理者で、薬局長は会社が独自に置いている社内の役職です。
この違いを知らないまま「管理薬剤師をお願いしたい」と打診されると、引き受けた後に勤務の自由度や副業の可否が変わって戸惑うことがあります。この記事では、管理薬剤師と薬局長の違いを法律上の位置づけ・責任・任命方法から整理し、それぞれの役割、兼務したときに起きること、手当と年収の考え方、就任前に確認したいポイントまでを解説します。
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管理薬剤師と薬局長の違い

先に結論をお伝えすると、管理薬剤師と薬局長は「誰が決めた役割か」がまったく異なります。管理薬剤師は医薬品医療機器等法(薬機法)が置くことを義務づけている法律上の管理者で、薬局長は会社が組織運営のために設けた社内の役職です。
そのため、管理薬剤師の仕事内容は法律と省令に書かれており、全国どの薬局でもほぼ同じです。一方、薬局長の仕事内容は企業ごとの職務分掌で決まるため、会社が変われば求められることも変わります。
ここではその違いを、法律上の位置づけ・責任の範囲・任命のされ方の3つの角度から確認します。
法律上の位置づけの違い
薬機法第7条は、薬局開設者が薬剤師でないときは、その薬局で薬事に関する実務に従事する薬剤師のうちから薬局の管理者を指定し、その薬局を実地に管理させなければならないと定めています。開設者本人が薬剤師の場合は自ら実地に管理するのが原則で、ほかの薬剤師を管理者に指定することもできます。
法律上の正式な呼び名は「薬局の管理者」で、「管理薬剤師」は現場での通称です。呼び方は違っても、指しているのは同じ立場です。
これに対して、薬局長という肩書きは薬機法にも薬剤師法にも出てきません。店舗の責任者を分かりやすく示すために企業が置いている職名で、会社によって「店長」「店舗管理者」「マネージャー」など名称もさまざまです。法律に根拠がないため、薬局長という役職を置かない薬局があっても違法にはなりません。
2つの肩書きの出どころ
- 管理薬剤師(薬局の管理者):薬機法第7条にもとづき、設置が義務
- 薬局長:会社の職制にもとづく社内の役職。法律上の定めはない
責任の範囲の違い
管理薬剤師が負うのは、保健衛生上の責任です。薬機法第8条第1項は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、構造設備および医薬品その他の物品を管理し、業務につき必要な注意をしなければならないと定めています。医薬品の品質や調剤の安全を守る責任が、法律で直接ひもづけられている点が特徴です。
薬局長が負うのは、店舗経営の責任です。売上や利益、人員配置、本部への報告といった運営面の結果責任を負いますが、これは会社と交わした職務上の責任であり、法律が課したものではありません。
つまり、行政指導や行政処分の場面で名前が挙がるのは管理薬剤師であり、人事評価や店舗業績の場面で問われるのは薬局長です。同じ「責任者」でも向いている方向が違うと考えると整理しやすくなります。
任命のされ方の違い
管理薬剤師は、薬局開設者が指定します。薬局開設許可の申請書には管理者の氏名と住所を記載した書類を添えることになっており、管理薬剤師が交代すれば行政への手続きが必要です。社内の異動だけで完結せず、都道府県などの行政に把握される立場だといえます。
さらに薬機法第7条第3項は、薬局の管理者は法律上の義務や省令で定める業務を遂行するために必要な能力および経験を有する者でなければならないと定めています。誰でも就けるわけではなく、実務を回せることが前提になっています。
一方、薬局長は社内の人事発令で決まります。行政への届出は不要で、任命の基準も会社が決めます。店舗の規模や本人のマネジメント経験を見て選ばれるのが一般的で、選考の過程が外部から見えることはほとんどありません。
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
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管理薬剤師の役割

管理薬剤師の業務は、薬機法第8条と、その委任を受けた薬機法施行規則に具体的に書かれています。大きく分けると、従業員の監督、医薬品の管理、構造設備や帳簿の管理、そして薬局開設者への意見の申述の4つです。
施行規則第11条は、管理薬剤師が行う管理業務として、管理者が有する権限に係る業務、医薬品の試験検査と結果の確認、帳簿への記載、特定生物由来製品に関する記録の保存を挙げています。
あわせて遵守事項も定められており、近年の改正でサイバーセキュリティの確保のために必要な措置を講じることが加わりました。電子薬歴やレセプトコンピュータを扱う以上、情報システムの安全も管理者の守備範囲になっています。
省令が定める管理薬剤師の業務と遵守事項
| 内容 | 区分 | 根拠(施行規則) |
|---|---|---|
| 管理者が有する権限に係る業務 | 管理業務 | 11条1項1号 |
| 医薬品の試験検査と、その結果の確認 | 管理業務 | 11条1項2号 |
| 薬局の管理に関する帳簿への記載 | 管理業務 | 11条1項3号 |
| 特定生物由来製品に関する記録の保存 | 管理業務 | 11条1項4号 |
| 従業者の監督、構造設備・医薬品の管理、サイバーセキュリティ確保の措置 | 遵守事項 | 11条2項1号 |
| 開設者に述べた意見の書面の写しを3年間保存 | 遵守事項 | 11条2項2号 |
※管理業務4項目と、守るべき事項2項目に分かれている
従業員の監督
管理薬剤師は、保健衛生上支障が生じないように、薬局に勤務する薬剤師やその他の従業者を監督します。監督の対象は薬剤師だけではなく、調剤補助にあたる事務スタッフや登録販売者を含めた薬局の従事者全体です。
具体的には、調剤の手順が手順書どおりに行われているかを確認したり、非薬剤師が行ってよい業務の範囲を超えていないかを見たりします。新人が入ったときの教育や、ヒヤリ・ハットが起きたときの再発防止策づくりも、この監督の一部として担うことになります。
注意したいのは、監督責任は「見ていなかった」では済まされない点です。日々の業務が保健衛生上問題なく回っているかを把握し続けることが求められます。
医薬品の管理
医薬品そのものの管理も、管理薬剤師の中心的な業務です。施行規則第12条は、薬局開設者は薬局の管理者が医薬品の適切な管理のために必要と認める試験検査を管理者に行わせなければならないと定めています。薬局の設備や器具では試験検査が難しいと管理者が判断した場合には、登録試験検査機関を利用でき、その場合も管理薬剤師が検査結果を確認する必要があります。
日常業務では、医薬品の保管温度や遮光の条件が守られているか、使用期限切れが混ざっていないか、不良品や回収対象品が適切に処理されているかといった点を確認します。
麻薬や向精神薬、毒薬・劇薬など、法律で保管方法が細かく決められている医薬品については、施錠管理や記録の整備がとくに重要になります。在庫があるのに見つからない、記録と実数が合わないといった状態は、そのまま管理者の責任問題につながります。
構造設備や帳簿の管理
管理薬剤師は、薬局の構造設備についても管理の責任を負います。調剤室の広さや設備、医薬品の貯蔵設備、情報提供を行う場所などが基準を満たした状態に保たれているかを見る役割です。改装や設備の入れ替えを行うときも、基準から外れないかを確認する立場になります。
帳簿の管理も欠かせません。施行規則第13条は、薬局開設者は薬局の管理に関する事項を記録するための帳簿を備えなければならないと定め、管理薬剤師が試験検査や不良品の処理その他の管理に関する事項を帳簿に記載すること、その帳簿を最終の記載の日から3年間保存することを求めています。
日々の記録は地味な作業ですが、行政の立入検査で最初に確認されるのがこの帳簿です。記載が抜けていると、実際の管理ができていても指摘の対象になります。
開設者への意見の申述
管理薬剤師の役割で見落とされやすいのが、薬局開設者に対して意見を述べる義務です。薬機法第8条第2項は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、薬局の業務につき薬局開設者に対し必要な意見を書面により述べなければならないと定めています。口頭で伝えるだけでは足りず、書面という形が求められている点がポイントです。
さらに施行規則第11条第2項は、この意見を記載した書面の写しを3年間保存することを管理薬剤師の遵守事項としています。
受け取る側にも義務があります。薬機法第9条第2項は、薬局開設者は管理薬剤師の意見を尊重するとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは措置を講じ、講じた措置の内容(措置を講じない場合はその旨と理由)を記録して適切に保存しなければならないと定めています。
人員が足りない、設備が古い、業務量に対して安全が保てないといった懸念は、管理薬剤師が書面で伝えれば会社側に記録の義務が生じます。現場の声を通す仕組みとして用意されている制度だといえます。
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 / e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」
薬局長の役割

薬局長には法律の定めがないため、業務の中身は企業ごとに異なります。ここで紹介するのは、調剤薬局チェーンや個店で一般的に見られる傾向であり、すべての薬局に当てはまるものではない点をあらかじめお伝えします。
共通しているのは、薬局長の仕事は「薬をあつかう仕事」ではなく「店舗をあつかう仕事」だという点です。調剤や服薬指導は薬剤師として当然行いますが、それに加えて店舗という単位の成果を預かります。厚生労働省の統計では届出薬剤師32万9,045人のうち約6割にあたる19万7,437人が薬局に従事しており、薬局長は多くの薬剤師にとって身近な昇進先といえます。
店舗の運営管理
薬局長の中心的な業務は、店舗を問題なく回すことです。開局から閉局までの体制づくり、シフトの組み立て、備品や消耗品の手配、患者さんからの問い合わせやクレームへの対応まで、店舗で起きることの窓口になります。
近隣の医療機関との関係づくりも、薬局長が担うことが多い業務です。処方元の医院と処方内容や在庫について調整したり、地域の勉強会や連携の会議に出席したりと、店舗の外に出る機会が増えます。
管理薬剤師が「保健衛生上問題がないか」を見るのに対し、薬局長は「店舗として成り立っているか」を見ると考えると、役割の違いがつかみやすくなります。
スタッフの労務管理
薬局長は、店舗で働くスタッフの労務面を預かります。勤務シフトの作成、有給休暇の調整、残業時間の把握、採用面接への同席などが該当します。人員が足りないときに本部へ増員を要請するのも薬局長の役目です。
ここで押さえておきたいのが、管理薬剤師の監督との違いです。管理薬剤師の監督は保健衛生上の観点からの監督であり、労務管理そのものは含まれません。勤怠や評価といった雇用に関わる管理は、会社が薬局長に委ねている業務です。
- シフト作成と勤怠の管理
- 有給休暇や休憩取得の調整
- 採用面接への同席や新人の受け入れ
- 人事評価にかかわる情報の取りまとめ
本部との連絡や報告
チェーン薬局では、薬局長が本部との窓口になります。日次や月次の売上報告、在庫や発注に関する連絡、店舗で起きたトラブルの報告などが日常的に発生します。
本部から降りてくる施策を店舗で実行するのも薬局長の役割です。新しい取り組みの導入や、社内ルールの変更をスタッフに伝えて定着させるところまでが含まれます。個店経営の薬局では本部がない代わりに、経営者と直接やり取りする形になります。
売上や在庫の管理
薬局長は、店舗の数字にも責任を持ちます。処方箋の応需枚数、売上、在庫金額、廃棄額といった指標を確認し、目標との差を把握します。
在庫管理は、管理薬剤師の業務と重なって見える部分です。ただし目的が異なります。管理薬剤師が見るのは医薬品の品質と安全、薬局長が見るのは在庫金額と欠品の回避です。同じ棚を見ていても、判断の基準が違います。
在庫を絞りすぎれば欠品して患者さんに迷惑がかかり、持ちすぎれば期限切れの廃棄が増えます。このバランスを取ることが、薬局長の腕の見せどころのひとつになります。
参考:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
薬剤師の求人を探す兼務している場合に何が変わるか

ここまで2つの役割を分けて説明してきましたが、実際の薬局では同一人物が管理薬剤師と薬局長を兼ねている店舗が多く見られます。とくに薬剤師が2〜3名で回している中小規模の薬局では、兼務が前提になっていることも珍しくありません。
肩書きの定義よりも、読者が直面するのは「両方の責任を一人で負う」状況です。ここでは兼務が多い理由と、兼務によって起きやすいこと、役割を分けている薬局の形を見ていきます。
兼務が多い理由
最大の理由は、薬局あたりの薬剤師数が限られていることです。厚生労働省の統計では、令和5年度末時点の薬局数は6万2,828施設にのぼります。薬局が多いということは、1店舗あたりに配置できる薬剤師が薄くなりやすいということでもあります。
制度面の事情もあります。薬局の業務体制を定める省令は、調剤に従事する薬剤師の員数を1日平均取扱処方箋数を40で除して得た数(1未満は1、端数は切り上げ)以上と定めています。処方箋が1日40枚以下の薬局であれば、法令上は薬剤師1名でも基準を満たします。
つまり、小規模な薬局では管理薬剤師を務められる薬剤師がそもそも一人しかいないことがあります。その一人が店舗の責任者も兼ねるのは、自然な流れだといえます。
責任が一人に集中しやすい
兼務で起きやすいのが、性質の異なる責任が一人に集まる状態です。保健衛生上の管理責任と、店舗の業績責任を同時に負うことになります。
この2つは、ときに逆方向を向きます。人員が足りず安全が保てないと感じても、人件費を抑える目標を同時に負っていると、増員を求めにくくなります。在庫を十分に持ちたくても、在庫金額の圧縮を求められることがあります。
兼務すると2つの責任が同じ人に重なる
書面の意見は開設者の対応が記録に残り、相談止まりの話は記録に残りにくい構図です
こうした場面で使えるのが、先に触れた意見の申述です。管理薬剤師として書面で意見を述べれば、開設者側に尊重義務と記録の義務が生じます。薬局長としての立場では「相談」で終わってしまう内容も、管理薬剤師としての書面にすることで会社の対応が残る形になります。
兼務しているからこそ、この使い分けを知っておく価値があります。
- 兼務そのものは違法ではありません。
- 安全に関わる懸念は、管理薬剤師として書面で出しましょう
- 書面にすれば、会社側に尊重する義務と記録する義務が生まれます
役割を分けている薬局の例
一方で、管理薬剤師と薬局長を別の人が務めている薬局もあります。分け方には、いくつかのパターンがあります。
ひとつは、管理薬剤師しか行えない業務と、それ以外の運営業務を分担する形です。試験検査、帳簿の記載、医薬品の品質管理、開設者への意見の申述は管理薬剤師が担い、売上管理やシフト作成、本部報告は薬局長が担うという分け方です。
もうひとつは、経験年数と適性で分ける形です。調剤や医薬品管理に強い薬剤師が管理薬剤師を務め、マネジメントや対外的な調整が得意な薬剤師が薬局長を務めるという配置です。
-
業務内容で分ける法令上の管理業務は管理薬剤師、運営・数字は薬局長が担当
-
適性で分ける医薬品管理に強い人が管理薬剤師、マネジメントに強い人が薬局長
-
勤務形態で分ける常時勤務できる薬剤師が管理薬剤師、複数店舗を見る立場が薬局長
役割が分かれている薬局では、管理薬剤師が薬局長より年次が上ということも、その逆もあります。肩書きの上下と社内の序列は必ずしも一致しません。転職先を検討するときは、どちらの役割を求められているのかを確認しておくと認識のずれを防げます。
参考:厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」 / e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」
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管理薬剤師に課される制限

管理薬剤師を打診されたときに、引き受ける前に知っておきたいのが勤務上の制限です。手当が付く一方で、働き方の自由度に影響が出ます。ここは上位の情報サイトでもあまり触れられていない部分ですが、判断材料としては大きな要素になります。
制限の根拠は薬機法と、業務体制を定める省令にあります。制度は改正されることがあるため、実際に判断するときは参照時点の条文を確認するようにしてください。ここで紹介する内容は2026年8月時点のものです。
その薬局に常時勤務することが求められる
薬機法第7条は、管理薬剤師にその薬局を「実地に管理」させることを求めています。書類上の名義だけを置くことは認められておらず、実際にその薬局にいて管理する必要があります。
業務体制を定める省令も、薬局の開店時間内は常時、その薬局において調剤に従事する薬剤師が勤務していることを基準としています。例外として認められているのが「薬剤師不在時間」で、在宅訪問など薬局以外の場所で薬局の業務を行うため、やむを得ず一時的に薬剤師が不在になる時間を指します。
この不在時間にも上限があります。省令は、1日当たりの薬剤師不在時間は4時間、または1日の開店時間の2分の1のうちいずれか短い時間を超えないことと定めています。さらに、不在時間内は管理薬剤師が薬局に勤務している従事者と連絡が取れる体制を備えることも求められています。
- 薬剤師不在時間はあくまで例外的な取扱いです
- 在宅訪問など、その薬局の業務を行うための外出が前提です
- 不在中も管理薬剤師は従事者と連絡が取れる状態にしておく必要があります
他の場所で業務を行うには許可が必要になる
管理薬剤師にとって最も大きな制限が、薬機法第7条第4項です。この条文は、薬局の管理者はその薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならないと定めています。ただし書きで、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは例外が認められています。
この「兼務許可」について、厚生労働省は考え方を示した通知を出しています。通知では、許可を与えられる例として、非常勤の学校薬剤師を兼ねる場合のほか、薬局の営業時間外である夜間休日に地域の輪番制の調剤業務に従事する場合、へき地で管理者の確保が困難な地域において営業時間外に他の薬局に勤務する場合などが挙げられています。
ただし通知は、兼務許可はあくまで例外的な取扱いとすべきであるという点にも念を押しています。都道府県知事等が地域の実情や個別の事案を勘案し、管理者としての業務に支障が生じないと判断した場合に限って認められるという整理です。
なお、この通知は平成31年に出されたもので、当時の条番号である「第7条第3項」の表記が使われています。その後の法改正で条文の項が繰り下がり、現在は第7条第4項が該当する規定です。
副業や掛け持ちへの影響
以上の制限は、副業や掛け持ちを考えている薬剤師にとって直接の影響があります。他の薬局でのアルバイト、ドラッグストアでの勤務、派遣薬剤師としての単発勤務など、薬事に関する実務にあたる副業は、知事の許可がなければ原則としてできません。
一方で、薬事に関する実務にあたらない仕事であれば、この条文の制限は及びません。執筆や講師、資産運用などが該当しますが、会社の就業規則で副業が制限されている場合はそちらの確認が必要です。
管理薬剤師を打診されたときは、今行っている、あるいは今後行いたい薬剤師としての副業を続けられるかを、引き受ける前に確認しておくことをおすすめします。就任後に「実は続けられなかった」と分かると、収入計画が崩れてしまいます。
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 / e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」 / 厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第7条第3項に規定する薬局の管理者の兼務許可の考え方について」
手当と年収の違い

管理薬剤師にも薬局長にも、多くの企業で手当が用意されています。ただし金額は会社ごとにばらつきが大きく、管理薬剤師手当や役職手当の相場を示した公的な統計は確認できません。この記事でも平均額を断定することは避け、求人票で確認するための視点をお伝えします。
判断の出発点になるのは、手当が付く前の水準です。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、薬剤師の正社員求人の月給中央値は35万円でした。提示された条件がこの目安とどう違うかを見ていくと、手当の実質的な価値がつかみやすくなります。
管理薬剤師手当
管理薬剤師手当は、管理薬剤師に就任した薬剤師に支給される手当です。法律で支給が義務づけられているものではなく、企業が独自に設けています。
金額の幅が大きい理由のひとつは、この手当が担う意味が会社によって違うことです。法令上の責任を負うことへの対価として位置づけている会社もあれば、店舗運営を任せることへの対価として支給している会社もあります。
前者であれば管理薬剤師を外れると手当も止まり、後者であれば役職手当と一体で運用されていることがあります。
求人票を見るときは、次の点を確認しておくと実態がつかめます。
- 管理薬剤師手当が月給に含まれているか、別途支給か
- 提示されている年収が管理薬剤師就任を前提とした金額かどうか
- 管理薬剤師を外れた場合に手当が止まるかどうか
- 賞与の算定基礎に手当が含まれるかどうか
役職手当
役職手当は、薬局長などの役職に対して支給される手当です。管理薬剤師手当と別建ての会社もあれば、ひとつにまとめている会社もあります。
役職手当を見るときに注意したいのが、残業代との関係です。労働基準法は、監督もしくは管理の地位にある者(管理監督者)について労働時間の規制を適用除外としています。薬局長が管理監督者に当たると扱われると、深夜割増を除いて時間外の割増賃金が支払われないことになります。
ただし、管理監督者に当たるかどうかは役職名ではなく実態で判断されます。厚生労働省は、名称にとらわれず実態に即して判断すべきものであり、管理職と呼ばれる地位に至った労働者が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当するものではないと示しています。
管理監督者にあたるかを判断する3つの要素
※役職名でなく実態に即して判断される
役職手当が付いても、残業代がなくなれば手取りが増えないことがあります。昇進の打診を受けたときは、手当の額だけでなく残業代の扱いがどう変わるかもあわせて確認しておくと安心です。
年収差をどう見るか
管理薬剤師や薬局長になると年収が上がるかどうかは、手当の額だけでは判断できません。基本給の水準、賞与の算定方法、残業代の扱い、そして就任後に実際に働く時間まで含めて見る必要があります。
年齢による賃金の伸びも参考になります。役職に就く時期と、薬剤師全体の年収が伸びきる時期は重なります。
年収が伸びきるのは50代前半
賃金構造基本統計調査では、薬剤師の平均年収は50〜54歳の階級で約744万円とピークを迎えます。管理職に就く年代と重なりますが、役職に就いた人だけを取り出した数値ではありません。
※薬剤師全体の統計。管理薬剤師・薬局長に限定した集計ではない
年収差を見るときのチェックポイント
- 手当を除いた基本給がいくらか
- 賞与が基本給ベースか年収ベースか
- 残業代の扱いが変わるかどうか
- 就任後に想定される労働時間の増加分
- 手当を月給ではなく時給換算で見たときの水準
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 / 厚生労働省「管理監督者|裁判例|確かめよう労働条件」
薬剤師の求人を探すそれぞれになるための条件

最後に、管理薬剤師と薬局長になるための条件を整理します。法律で要件が定められているのは管理薬剤師だけで、薬局長の条件は企業ごとに異なります。
就任の条件を比べると
| 項目 | 管理薬剤師 | 薬局長 |
|---|---|---|
| 法律上の要件 | 薬機法7条3項で規定されている | 法律上の要件はない |
| 要件の中身 | 管理者の義務・省令で定める業務を遂行するために必要な能力及び経験 | 企業が独自に定めた基準(実務経験+マネジメント経験など) |
| 経験年数の定め | 「◯年以上」という具体的な年数の記載はない | 年数の目安を設けるかどうかも会社次第 |
| 誰が判断するか | 要件を満たすかを開設者が判断 | 昇格試験や人事評価など会社の制度で判断 |
※法律に定めがあるのは管理薬剤師の要件のみ
管理薬剤師に求められる要件
管理薬剤師になるための第一の条件は、その薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師であることです。薬機法第7条は、薬局の管理者をその薬局で実務に従事する薬剤師のうちから指定すると定めています。外部の薬剤師を名義だけ置くことはできません。
第二の条件が、薬機法第7条第3項が定める能力と経験です。管理者の義務や省令で定める業務を遂行し、遵守事項を守るために必要な能力および経験を有する者でなければならないとされています。法律は「経験年数◯年以上」という具体的な数字を定めていませんので、何年目から就任できるかは会社の判断になります。
第三に、実際にその薬局に勤務できることです。前章のとおり、管理薬剤師は他の場所で業として薬事に関する実務に従事することができません。掛け持ちや複数店舗の兼任は原則として想定されていない立場です。
- その薬局で薬事に関する実務に従事する薬剤師であること
- 管理者の業務を遂行するために必要な能力と経験があること
- その薬局を実地に管理できる勤務状況であること
薬局長に求められる要件
薬局長には法定の要件がありません。会社が定めた基準を満たせば就任でき、その基準は企業ごとに異なります。一般的には、調剤や服薬指導の実務経験に加えて、シフト管理や人材育成、数値管理といったマネジメントの経験が見られる傾向があります。
チェーン薬局では、社内の等級制度や昇格試験と結びついていることもあります。個店や小規模法人では、経営者との距離が近い分、実務の信頼関係で決まる場面が多くなります。
薬剤師免許を持たない人が薬局長になるケースはまれですが、会社の職制上は禁じられていません。ただし調剤に関わる判断は薬剤師でなければ行えないため、実際には薬剤師が就くのが一般的です。薬局を含む薬剤師の就職先ごとの働き方は、次の記事で比較しています。
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打診されたときに確認したいこと
管理薬剤師や薬局長を打診されたら、返事をする前に確認しておきたいことがあります。打診の段階では手当の額だけが伝えられ、制限や責任の範囲が説明されないことも少なくありません。
とくに管理薬剤師は、引き受けることで働き方そのものが変わります。副業をしている、あるいは将来考えている場合は、就任前に確認しておく必要があります。
- 管理薬剤師と薬局長のどちらを、あるいは両方を任されるのか
- 手当の額と、賞与や残業代の扱いがどう変わるか
- 薬剤師としての副業を続けられるか(続ける場合は兼務許可の要否)
- 店舗の1日平均処方箋枚数と、配置されている薬剤師の人数
- 管理薬剤師を外れることになった場合の処遇
- 意見を述べたときに会社がどう対応してきた実績があるか
処方箋枚数と薬剤師数は、就任後の負担を測る手がかりになります。業務体制の省令は1日平均取扱処方箋数を40で除した数以上の薬剤師配置を求めていますが、これは最低基準です。基準ぎりぎりの人数で回している店舗では、管理業務にあてる時間を確保しにくくなります。
条件を確認したうえで折り合いがつかない場合は、社内で調整するか、環境の異なる薬局を探すという選択肢もあります。
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 / e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」
まとめ
管理薬剤師と薬局長は、どちらも薬局の責任者に見えますが、成り立ちが異なります。管理薬剤師は薬機法が設置を義務づけた薬局の管理者で、業務と責任は法律と省令に定められています。薬局長は会社が置く社内の役職で、店舗の運営と数字に責任を持ちます。
管理薬剤師の役割は、従業員の監督、医薬品の管理、構造設備や帳簿の管理、そして薬局開設者への意見の申述の4つが柱です。とくに意見の申述は書面で行うことが求められ、会社側にも尊重と記録の義務が生じます。現場の課題を通すための仕組みとして活用できます。
一方で、管理薬剤師にはその薬局以外の場所で薬事に関する実務に従事できないという制限があります。副業や掛け持ちを考えている場合は、都道府県知事の兼務許可が必要になる点を押さえておいてください。
手当については、管理薬剤師手当も役職手当も公的な相場データがありません。提示された金額だけでなく、基本給・賞与の算定方法・残業代の扱い・想定される労働時間まで含めて確認することが、納得できる判断につながります。
打診を受けたら、その場で返事をせず、この記事のチェックポイントを手元に置いて条件を確かめてみてください。条件が合う職場を探す段階に入ったときは、求人情報を比較しながら検討を進めることをおすすめします。


