柔道整復師のデメリットとは?体力面や拘束時間など働き方から制度に関する理由を解説
柔道整復師を目指すか迷っている方、すでに現場で働いていて将来に不安を感じている方にとって、デメリットを正しく把握しておくことは大切です。ただ、語られるデメリットは「体力がきつい」「競争が激しい」といった体感の言葉が中心で、なぜそうなるのかまでは説明されていないことが多いといえます。
この記事では、柔道整復師のデメリットを「働き方から生じるもの」と「制度の仕組みから生じるもの」に分けて整理します。あわせて、施術所数や有資格者数といった公表統計から競争環境を確認し、職場ごとの感じ方の違い、そして具体的な対処までを解説します。
気になることを
キャリアパートナーに相談できます
気になる内容をお選びください(複数選択可)
柔道整復師として働くデメリット

まずは、現場で働く方が実感として挙げやすい負担から見ていきます。ここで取り上げるのは、業務そのものの性質や職場環境から生じるデメリットです。
柔道整復師の業務は、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった外傷に対して、整復・固定・後療法を行うことが中心です。柔道整復師法第16条では外科手術や薬品の投与が禁じられているため、施術は手技によって組み立てることになります。この構造が、以下の負担の多くにつながっています。
体力的な負担が大きい
柔道整復師の施術は、手技を用いて患者さんの身体に直接働きかけるものです。徒手による整復や後療法では相応の力を使い、患者さんの体格によっては全身を使って支える場面もあります。
さらに、施術中はほとんどが立ち仕事です。混雑する時間帯には短い間隔で患者さんが入れ替わるため、座って休む時間を確保しにくい職場も少なくありません。手技が業務の中心である以上、身体的な負担は職場を変えても完全にはなくならない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
腰や手指、肩に負担が集中しやすいことから、自分自身のコンディション管理が長く働くための前提になります。
拘束時間が長くなりやすい
整骨院・接骨院は、仕事帰りの患者さんに対応するため夜間まで営業する店舗が多く、勤務時間が後ろにずれ込みやすい傾向があります。開院前の準備や閉院後の片づけ、レセプト業務が加わると、実際の拘束時間はさらに延びます。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で柔道整復師の求人3,737件を見ると、休日・勤務時間の条件がどれくらい付いているかが分かります。
年間休日120日以上の求人は6%、土日祝休みは2%にとどまります。カレンダーどおりの休みを前提に働きたい場合は、職場選びの段階で条件を絞り込む必要があるといえます。
患者対応の負担がある
柔道整復師は患者さんと一対一で接する時間が長く、施術の技術だけでなくコミュニケーションの比重が大きい仕事です。痛みを抱えて来院する方が相手であるため、不安や不満を受け止める場面も生じます。
とくに負担になりやすいのが、健康保険が使えるかどうかの説明です。柔道整復の療養費は急性・亜急性の外傷に限られており、日常的な肩こりや筋肉疲労は保険の対象になりません。
患者さんが「整骨院なら保険で通える」と考えて来院した場合、その線引きを丁寧に伝える必要があります。
保険が使える範囲は施術者が決められるものではなく、国が定めた療養費の取扱いによって決まっています。説明がうまくいかないのは個人のスキル不足ではなく、制度と患者さんの期待との間にズレがあるためです。
技術の研鑽が続く
国家試験に合格した時点で身についているのは基礎であり、現場では患者さんごとに異なる状態を見立てる力が求められます。整復や固定の技術は、経験を重ねながら精度を上げていくものです。
また、柔道整復師法第17条により、脱臼や骨折の患部への施術は応急手当を除いて医師の同意が必要とされています。自分の判断で完結できない領域があることを踏まえ、医療機関との連携を前提に判断する力も欠かせません。
勤務後や休日を使って勉強会・セミナーに参加する方も多く、学び続けることが実質的に前提になっている点は、負担と感じる方もいるでしょう。
他の施術業との違いが伝わりにくい
柔道整復師は国家資格ですが、街にはさまざまな施術を掲げる店舗があり、患者さんから見ると区別がつきにくいのが実情です。整体師やリラクゼーションの施術者は民間資格または無資格でも名乗ることができ、養成課程や業務範囲が大きく異なります。
法律上の線引きは明確です。あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第12条は、免許を持たない者が医業類似行為を業とすることを禁じたうえで、柔道整復については柔道整復師法の定めによるとしています。
柔道整復師法第15条では、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ柔道整復を業としてはならないと定められています。
柔道整復師 と 整体師・リラクゼーション の違い
| 項目 | 柔道整復師 | 整体師・リラクゼーション |
|---|---|---|
| 資格の位置づけ | 国家資格(柔整法15条により業務独占) | 民間資格または無資格 |
| 資格を得るまで | 養成校などで3年以上の修得が必要 | 法律で定められた養成期間はない |
| 根拠となる法律 | 柔整法の定めに基づき施術を実施 | あはき法12条で無免許の医業類似行為は禁止 |
同じ手技でも、根拠となる法律と資格の位置づけが異なる
とはいえ、こうした違いが患者さんに十分伝わっているとは限りません。国家資格の取得に3年以上を要したことが、そのまま評価や単価に反映されにくい点は、やりがいを感じにくくする要因になります。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」
今のあなたの状況は?
制度に起因するデメリット

柔道整復師のデメリットとして語られる事柄の多くは、実は個人の努力や職場の方針ではなく、療養費と資格制度の仕組みに由来しています。ここを理解しないまま「頑張れば何とかなる」と考えると、収入の作り方や独立の時期の見通しを誤りかねません。
この章で扱う要件や取扱いは改定されるため、進路を検討する際は厚生労働省や地方厚生局の資料で最新の内容を確認することをおすすめします。以下の内容は2026年8月時点で公表されている資料に基づいています。
療養費の対象が限られる
健康保険が使えるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)といった急性・亜急性の外傷に対する施術です。日常生活の疲れからくる肩こりや腰痛、単なる筋肉疲労への施術は療養費の対象外となり、全額が患者さんの自己負担になります。
また、骨折と脱臼については、応急手当の場合を除いて医師の同意を得たうえで施術する必要があります。つまり、柔道整復師が保険を使って単独で完結できる範囲は、打撲と捻挫が中心ということになります。
この制約は、収入の作り方に直結します。慢性症状のケアを得意としていても、それを保険診療として積み上げることはできません。整骨院・接骨院が自費メニューを併設するようになった背景には、この線引きがあります。
施術管理者になるための要件がある
療養費を患者さんに代わって受け取る「受領委任」の取扱いを行うには、施術所ごとに施術管理者を置く必要があります。開業して保険を扱うのであれば、この施術管理者になることが実質的な前提です。
平成30年4月から、施術管理者になるための要件として資格取得後の「実務経験」と「研修の受講」が加わりました。実務経験の期間は段階的に引き上げられており、令和3年度までは1年以上、令和4〜5年度は2年以上、そして令和6年度以降は3年以上(うち保険医療機関で従事した期間は2年まで)が必要です。あわせて、施術管理者研修の修了証が申し出の際に必要になります。
施術管理者の実務経験要件の推移
要件が段階的に引き上げられたことで、以前より独立までの助走期間が長くなっています。資格を取得してすぐに保険を扱う施術所を開くことはできません。
「開業できる資格」という言葉だけを頼りに進路を決めると、想定とのズレが生じかねません。
独立を考えるタイミングになったら、管轄の地方厚生局のページで実務経験の年数と研修の取扱いを必ず確認しましょう。
報酬改定の影響を受ける
柔道整復の療養費は、算定基準や留意事項が国の通知によって定められています。施術料の水準や算定のルールは改定のたびに見直されるため、個々の施術所の努力とは別のところで収入の前提が変わる構造になっています。
厚生労働省の社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)の資料によれば、柔道整復療養費は令和3年度で推計約2,867億円であり、平成24年度をピークに減少に転じたのち、マイナスの傾向が続いています。市場そのものが緩やかに縮小しているなかで、施術所の数は後述のとおり高い水準を保っています。
事務面の負担も増えています。令和4年10月からは患者さんへの明細書交付が義務化され、令和6年4月からはオンライン資格確認(資格確認限定型)の導入が求められるようになりました。
施術以外の業務が積み上がっている点も、現場では負担として実感されやすい部分です。
柔道整復療養費は減少傾向、一方で制度対応は増えている
参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」 / 北海道厚生局「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任に関する申し出」 / 厚生労働省「社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)」
競争環境をデータで見る

「ライバルが多い」「整骨院が飽和している」といった話は、柔道整復師のデメリットとして必ずと言ってよいほど挙がります。ただし、そのほとんどは印象で語られており、根拠となる数値まで示されることは多くありません。
ここでは厚生労働省「衛生行政報告例(就業医療関係者)」をもとに、施術所と有資格者の推移を確認します。同調査は隔年で行われ、各年末時点の状況を集計したものです。最新は令和6年(2024年)末時点の数値になります。
施術所数の推移
柔道整復の施術所数は、平成26年の45,572か所から増加を続け、令和6年は50,924か所となりました。10年間で約5,300か所、率にして11.7%増えた計算です。
一方で、直近の動きは大きく変わっています。令和4年の50,916か所に対し、令和6年は50,924か所と、増加はわずか8か所(±0.0%)にとどまりました。長く続いた増加基調が、ここに来て頭打ちになったことがわかります。
出店の余地が縮まっている状況と読むこともできますし、新規開業と廃業がほぼ同数で入れ替わっている状況とも考えられます。いずれにせよ、「増え続けているから厳しい」という説明は、直近のデータには当てはまりません。
有資格者数の推移
就業している柔道整復師の数は、平成26年の63,873人から令和6年の78,666人へと、10年間で約1万5千人(23.2%)増えました。令和4年からの2年間でも1,034人(1.3%)増加しています。
ここで注目したいのは、施術所と有資格者の伸びの差です。施術所は横ばいに転じた一方で、有資格者は増え続けています。1施術所あたりの就業柔道整復師数を計算すると、平成26年の約1.40人から令和6年は約1.54人へと増えています。
10年間の増加率
+23.2%令和4年→令和6年
+1,034人この数字が示すのは、開業して自分の施術所を構える人の割合が相対的に下がり、勤務者として働く人が増えているという構図です。
競争は「店舗同士の争い」だけでなく、一つの施術所のなかでの役割やポジションの競争という形でも現れているといえます。
地域による差
競争環境は全国一律ではありません。就業柔道整復師数を人口10万人あたりに換算すると、地域による差がはっきり見えてきます。
全国平均は約63.5人ですが、最も多い大阪府は約109.4人、次いで和歌山県が約89.7人、京都府が約86.7人と続きます。反対に少ないのは鳥取県の約19.4人、島根県の約23.2人で、大阪府と鳥取県では人口あたりの人数に約5.6倍の開きがあります。
人数が多い地域は患者さんの母数も大きい一方、施術所同士の距離が近く差別化が求められます。人数が少ない地域は競合が限られるものの、求人そのものが少なく、選べる職場の幅が狭くなりがちです。
「競争が激しい」という言葉が自分の働く地域に当てはまるかどうかは、必ず地域単位で確認することをおすすめします。
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 総務省統計局「統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐」
お探しの求人は?
デメリットの感じ方は職場で変わる

ここまで挙げてきたデメリットは、どの職場でも同じ強さで現れるわけではありません。柔道整復師が働く場所は整骨院・接骨院だけではなく、整形外科、介護施設、スポーツの現場など幅があり、負担の中身も変わります。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で柔道整復師の求人3,737件を職場別に見ると、正社員の月給中央値は全体で265,000円でした。以下では職場ごとに、求人の数と条件の傾向を確認していきます。
整骨院・接骨院
求人3,737件のうち2,075件(約56%)を整骨院・接骨院が占めており、柔道整復師にとって最も一般的な職場です。正社員の月給中央値は271,500円と職場別で高い水準にあります。
ただし、金額の幅が大きいことには注意が必要です。同じ整骨院・接骨院でも月給は144,000円から635,000円まで開きがあり、歩合や役職手当の有無で手取りが大きく変わります。夜間営業やシフト制が中心となるため、拘束時間の長さというデメリットは相対的に強く出やすい職場でもあります。
整形外科
病院やクリニックで働く場合、求人数はクリニック189件、病院12件の合わせて201件と、全体の約5%にとどまります。医師の指示のもとでリハビリテーションの補助や物理療法を担当することが多く、保険の説明を自分で行う場面は減ります。
一方で、業務範囲の制約は明確です。エックス線撮影は診療放射線技師法により医師・歯科医師・診療放射線技師に限られており、柔道整復師が撮影を行うことはできません。画像を見て学ぶことはできても、判断の主体は医師にあります。
正社員の月給中央値はクリニックが250,000円、病院が237,500円と、整骨院・接骨院より低めです。労働環境の安定と引き換えに収入の伸びしろが限られる、という形になります。
柔道整復師の求人を探す介護施設
介護分野の求人は、デイケア・デイサービス759件、特別養護老人ホーム266件、有料老人ホーム67件、介護老人保健施設25件、サービス付き高齢者向け住宅13件を合わせて1,130件で、全体の約3割を占めます。多くは機能訓練指導員としての募集です。
厚生労働省の通知「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」では、機能訓練指導員は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師またはあん摩マッサージ指圧師の資格を有する者とされています。通所介護や特別養護老人ホームでは、この職種を1名以上配置することが求められます。
ただし、すべての介護サービスで同じというわけではありません。介護老人保健施設の人員基準には機能訓練指導員の定めがなく、理学療法士・作業療法士または言語聴覚士を入所者100人あたり1人以上配置することとされています。求人数が25件と少ないのは、この基準の違いが背景にあります。
月給中央値はデイケア・デイサービスが250,000円、特別養護老人ホームが249,400円で、整骨院・接骨院との差はおよそ2万円です。夜間営業がない分だけ生活リズムは整えやすく、拘束時間の負担は軽くなる傾向があります。
スポーツの現場
スポーツ現場でのトレーナー活動は、柔道整復師を目指すきっかけとして語られることの多い働き方です。ただし、専属のポジションとして募集されることはごく限られています。
チーム帯同や大会サポートは、整骨院に勤務しながら休日に担当する形が一般的で、それだけで生計を立てられる求人はほとんど流通していないのが実情です。
「スポーツに関わりたい」という動機で進路を決める場合は、本業をどこに置くかをあわせて考えておく必要があります。
ここまでの4つの職場を、求人の数と月給の水準で並べて比べると次のようになります。
職場タイプ別 求人比較(柔道整復師)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 求人件数 | 2,075件(約56%) |
| 月給中央値 | 271,500円 |
| 月給の幅 | 144,000〜635,000円 |
| 特徴 | 夜間営業・シフト制中心で拘束時間の負担が出やすい |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 求人件数 | 201件(クリニック189件+病院12件・約5%) |
| 月給中央値(クリニック) | 250,000円 |
| 月給中央値(病院) | 237,500円 |
| 特徴 | 医師の指示下でリハビリ補助・物理療法。エックス線撮影はできない |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 求人件数 | 1,130件(約3割) |
| 内訳 | デイケア・デイサービス759件/特養266件/有料67件/老健25件/サ高住13件 |
| 月給中央値(デイ) | 250,000円 |
| 月給中央値(特養) | 249,400円 |
| 特徴 | 機能訓練指導員として配置可。整骨院との差は約2万円 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 求人件数 | 業務委託2件 |
| 特徴 | 整骨院勤務をしながら休日にチーム帯同するのが一般的 |
参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」 / e-Gov法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」 / e-Gov法令検索「診療放射線技師法」
デメリットへの対処

デメリットを並べただけでは判断材料になりません。ここまで見てきた負担は、働き方の設計と資格の使い方である程度コントロールできます。
対処の方向性は大きく4つです。収入源を一か所に依存しない、保険外の領域を持つ、介護分野で役割を得る、関連資格で担える業務を広げる。それぞれ確認していきます。
働く場を分散させる
一つの施術所に勤めるだけでなく、複数の現場を組み合わせる方法があります。求人3,737件のうちパート・アルバイトは695件、週1日勤務OKは65件、時短勤務OKは141件あり、短時間の枠は一定数流通しています。
ただし、副業・WワークOKと明記された求人は103件(3%)にとどまります。実際に掛け持ちを検討する場合は、就業規則の確認を含めて勤務先との調整が前提になります。
なお、あん摩マッサージ指圧師などにある「出張施術業務開始届」の制度は、柔道整復師にはありません。施術所を開設する場合は、柔道整復師法第19条により開設後10日以内に施術所の所在地の都道府県知事へ届け出ることになります。
自費の施術を組み合わせる
療養費の対象が急性の外傷に限られる以上、慢性症状へのケアは自費で提供することになります。保険に依存しない収入源を持つことは、報酬改定の影響を受けにくくする方法の一つです。
ただし、集客の面では制約があります。柔道整復師法第24条は施術所の広告を制限しており、広告できるのは柔道整復師である旨と氏名・住所、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日や施術時間などに限られ、技能や施術方法、経歴を広告することはできません。
自費メニューの訴求を考える際は、この範囲を踏まえる必要があります。
介護分野で役割を担う
前章のとおり、通所介護や特別養護老人ホームでは機能訓練指導員として柔道整復師を配置できます。高齢化が進むなかで需要のある領域であり、夜間営業がないため生活リズムも整えやすい働き方です。
さらに一歩進めるなら、介護支援専門員(ケアマネジャー)という選択肢もあります。介護保険法施行規則第113条の2では柔道整復師が受験資格の対象職種として挙げられており、通算5年以上の実務経験があれば受験できます。
施術者としてではなくマネジメント側に回ることで、身体的な負担を抑えたキャリアを描けます。
- 介護分野に移るなら、求人が最も多い通所介護から探すのが現実的です
- 夜間営業がないぶん、拘束時間の負担は整骨院より軽くなりやすいです
- ケアマネジャーを見据えるなら、通算5年の実務経験をどこで積むか先に決めましょう
関連する資格を取得する
担える業務を広げる方法として、関連資格の取得もあります。代表的なものを挙げます。
-
JSPO公認アスレティックトレーナースポーツ現場での活動を裏づける資格。共通科目150時間・専門科目600時間の講習を受講し、受講料は共通22,000円・専門55,000円(税込)
-
健康運動指導士運動プログラムの作成・指導を行う資格。柔道整復師は104単位コースが対象で、受講料は291,500円(教材費込)
-
介護支援専門員通算5年以上の実務経験で受験可能。ケアプラン作成など介護分野のマネジメントを担う
いずれも時間と費用がかかるため、今の職場で活かせる資格かどうかを先に確認してから着手することをおすすめします。資格を増やすこと自体が目的になると、負担だけが増えかねません。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」 / 日本スポーツ協会「アスレティックトレーナー – スポーツ指導者 – JSPO」 / 健康・体力づくり事業財団「健康ネット | 健康運動指導士 | 健康運動指導士養成講習会開催要領」
転職活動するなら?
柔道整復師として働くメリット

ここまでデメリットを中心に見てきましたが、この資格が長く支持されてきた理由もあります。判断材料として、あわせて確認しておきましょう。
開業が認められている資格である
医療系の国家資格の多くは、独立して自分の名前で施術所を構えることができません。柔道整復師は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師と並び、自ら施術所を開設して業務を行うことが法律上認められている数少ない資格です。
柔道整復師法第19条では、施術所を開設したときは開設後10日以内に施術所の所在地の都道府県知事へ届け出ることとされています。医療機関の開設のような許可制ではなく、届出で足りる点も特徴です。
求人データでも「独立・開業支援あり」の募集は594件(16%)あり、勤務しながら独立の準備を進められる環境は一定数存在します。前章で触れたとおり保険を扱うには実務経験3年以上が必要ですが、その先に自分で経営を選べる道があることは、勤務のみの資格にはない強みです。
柔道整復師の求人を探す働ける場所が広い
整骨院・接骨院、整形外科、介護施設、スポーツの現場、訪問マッサージと、活躍できる場が分散しているのも特徴です。求人3,737件のうち、整骨院・接骨院以外の職場が約44%を占めています。
これは、体力面の負担や拘束時間が合わなくなったときに、資格を持ったまま働き方を切り替えられるということでもあります。年齢やライフステージの変化に応じて職場を移せる点は、長く働くうえで大きな安心材料になります。
柔道整復師の勤務先の内訳
訪問マッサージの求人数
227件
訪問マッサージの月給中央値
290,000円
整骨院・接骨院以外の職場にも幅広い選択肢がある
なお、訪問マッサージの求人は227件で、正社員の月給中央値は290,000円と職場別で高い水準にありました。
技術が経験として積み上がる
柔道整復の施術は手技が中心であるため、機器や設備の更新に左右されにくく、身につけた技術がそのまま資産になります。経験を重ねるほど見立ての精度が上がり、患者さんからの信頼にもつながります。
求人データでは「未経験可」の募集が2,943件(79%)を占めており、資格を取得した直後から現場に入りやすい環境が整っています。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によれば、柔道整復師の全国平均年収はおおむね400万円台です。
長く働くうえでの強み
- 届出により自分の施術所を開設できる
- 整骨院以外にも整形外科・介護・訪問と職場を選べる
- 手技の技術は経験として積み上がり、設備投資に左右されにくい
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / 厚生労働省「柔道整復師 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト)」
進路を決める前に確認したいこと

デメリットとメリットを踏まえたうえで、進路を決める前に確かめておきたい点を3つに整理します。いずれも、あとから変更しにくい判断に関わる部分です。
養成校の学費と修業年限
柔道整復師の受験資格は、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した養成施設で、3年以上、必要な知識と技能を修得した者に限られます。養成課程には3年制の専門学校と4年制の大学があり、通信教育や独学で取得できる資格ではありません。
カリキュラムも柔道整復師学校養成施設指定規則で定められており、教育課程は99単位以上・2,750時間以上で編成されます。解剖学・生理学・運動学・整形外科学・柔道整復理論といった科目に加え、実技と臨床実習が含まれます。
学費は3年間でおよそ300万〜500万円が目安とされますが、学校ごとに幅があるため、必ず志望校の募集要項で確認してください。なお、厚生労働省の専門実践教育訓練給付金の対象講座であれば、受講中は費用の50%(年間上限40万円)、資格取得後に就職すると合計で最大70%(年間上限56万円)が支給されます。
対象講座かどうかは学校ごとに異なるため、事前の確認が必要です。
就職先の労働条件
拘束時間や休日の条件は職場によって大きく異なるため、内定前の書面で確認しておくことが重要です。労働基準法第15条により、使用者は労働契約の締結時に労働条件を明示する義務を負っています。
さらに、令和6年4月から労働条件明示のルールが改正され、就業場所・従事すべき業務の「変更の範囲」も明示事項に加わりました。複数店舗を展開する整骨院グループでは異動の可能性があるため、この項目は必ず確認しておきたいところです。
就業場所・従事すべき業務の「変更の範囲」と、賞与・退職金の有無は、口頭ではなく労働条件通知書で確かめておきましょう。
求人データで待遇面の内訳を見ると、項目によって明記されている割合に差があります。
求人に見る待遇項目の充足割合(求人3,737件中)
| 待遇項目 | 充足している求人の割合 | 求人での一般度 |
|---|---|---|
| 社会保険完備 |
95%
|
◯ |
| 賞与・ボーナスあり |
64%
|
△ |
| 退職金制度あり |
21%
|
✕ |
項目により求人での明記状況に差がある
社会保険はほぼ整備されている一方、退職金制度がある職場は限られます。長く勤めることを前提に考えるなら、賞与と退職金の有無は入職前に確認しておきたい項目です。
将来の働き方の見通し
10年後にどう働いていたいかによって、選ぶべき最初の職場は変わります。開業を目指すなら実務経験3年以上と施術管理者研修が必要になるため、保険を扱う施術所での勤務が近道です。介護分野で機能訓練指導員として働きたいなら、早い段階でその現場を経験しておくほうが有利といえます。
前章で見たとおり、有資格者は増え続ける一方で施術所は横ばいに転じ、療養費も減少傾向にあります。「資格を取れば安泰」という前提は成り立ちにくくなっているため、どの領域で価値を出すかを早めに決めておくことが、デメリットへの最も現実的な備えになります。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「柔道整復師学校養成施設指定規則」 / 厚生労働省「教育訓練給付金」 / 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
まとめ
柔道整復師のデメリットは、体力面や拘束時間といった働き方から生じるものと、療養費や資格制度の仕組みから生じるものに分けて考えると整理しやすくなります。とくに後者は個人の努力では変えられない部分であり、収入の作り方や独立の時期に直接影響します。
競争環境についても、印象ではなく数値で確認することが大切です。就業柔道整復師は令和6年で78,666人と増え続ける一方、柔道整復の施術所は50,924か所と横ばいに転じました。さらに人口10万人あたりの人数は都道府県で約5.6倍の開きがあり、状況は地域によって大きく異なります。
一方で、届出により自分の施術所を開設できること、整骨院以外にも整形外科・介護・訪問と職場を選べることは、この資格ならではの強みです。デメリットの多くは、働く場の選び方や関連資格の取得によって和らげることができます。
進路を決める前には、養成校の修業年限と学費、就職先の労働条件、そして10年後の働き方の見通しを確認しておきましょう。まずは求人情報で自分の地域の条件を確かめ、判断材料を具体的にするところから始めてみてください。
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 総務省統計局「統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐」





