訪問看護ステーションの廃業率は?廃業する理由と長く続く職場の見極め方
訪問看護の求人を探していると、「せっかく入職しても、事業所が廃業してしまわないか」と不安になる方は少なくありません。実際、訪問看護ステーションの数は年々増え続けている一方で、廃止・休止する事業所も過去最多を更新しています。需要が高いはずの分野で、なぜ廃業が起きているのでしょうか。
この記事では、公的データをもとに訪問看護ステーションの廃業率の目安と主な理由を整理し、看護師さんが長く働ける職場を見極めるポイント、開業を考える方が廃業を防ぐ方法までをわかりやすく解説します。
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訪問看護ステーションの廃業は過去最多

訪問看護ステーションの数は、この15年ほど増加が続いています。全国訪問看護事業協会の調査では、稼働しているステーション数は15年連続で増加し、令和7年度(2025年4月1日時点)には全国で18,743件に達しました。高齢化や在宅医療の広がりを背景に、訪問看護のニーズは年々高まっています。
その一方で、開業と同じくらいのペースで事業所が姿を消しているのも事実です。新規開設が過去最多を更新すると同時に、廃止・休止する事業所も過去最多を更新しています。具体的には、令和7年度は新規開設が過去最多の2,487件に達した一方で、廃止が886件、休止が355件と、こちらもいずれも過去最多を更新しました。
つまり訪問看護の業界では、「需要は高いのに廃業も増えている」という二極化が起きています。数が増えているという安心感だけで職場を選ぶと、思わぬリスクを見落としかねません。まずは、こうした業界全体の動きを正しく押さえておくことが大切です。
参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション基本情報(令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果)」
訪問看護ステーションの廃業率の目安

新規に開業した訪問看護ステーションが、どのくらいの割合で廃業しているのかも気になるところです。訪問看護システムを提供する民間企業eWeLLの調べでは、新規開業した訪問看護ステーションの廃業率は全国平均で約5%(5.1%)程度とされています。これは2020年度に開設した事業所のうち、2022年1月時点で事業を継続している割合から算出したもので、厚生労働省の介護サービス情報公表システムをもとにした推計です。
ただし、この数値はあくまでひとつの目安です。廃業率は「いつの時点で数えるか」「どの範囲を廃業に含めるか」といった算出方法によって変わります。公的な統計として確定した廃業率があるわけではない点には、留意しておきましょう。
※算出方法で変動する目安。公的な確定統計はない
数字の大小にかかわらず、需要が高い分野でありながら一定数の事業所が数年以内に廃業しているという事実は変わりません。開業を考える方はもちろん、就職・転職先を選ぶ看護師さんにとっても、廃業のリスクとその理由を知っておくことが、後悔しない職場選びにつながります。
参考:eWeLL「過去最高の増加数!訪問看護ステーション 開設・廃止・休止 最新情報」
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需要が高いのに訪問看護ステーションが廃業する理由

需要が高いのに、なぜ廃業してしまうのでしょうか。全国訪問看護事業協会の報告書によると、廃止・休止の理由として特に多いのは「人材の確保が難しい」「利用者が集まらない」の2点です。ここでは、代表的な4つの理由を順に見ていきます。いずれも、職場選びのチェックポイントにも直結する内容です。
廃業に至る2つの悪循環ルート
オンコール負担増
つながりが弱い
看護師などの人材が確保できない
廃業理由として最も多く挙げられるのが、看護師などの人材を確保できないことです。訪問看護は看護師さんが一人で利用者さん宅を訪問するため、一定の人数がいなければサービスを提供できません。採用がうまくいかなかったり、看護師さんが退職して補充できなかったりすると、たちまち事業が回らなくなります。
特に小規模な事業所では、看護師一人の退職が事業継続を左右することもあります。人材不足はそのまま残ったスタッフの負担増につながり、さらなる離職を招く悪循環に陥りやすい点が難しいところです。
利用者を十分に集められない
訪問看護は、利用者さんの数がそのまま収入に直結する仕事です。新規開設が続いた地域では事業所同士の競合が激しくなり、思うように利用者さんを集められないケースが増えています。
利用者さんを紹介してくれるケアマネジャーや医療機関とのつながりが弱いと、開業しても依頼が来ず、収入が安定しません。採算が取れる利用者数に届かないまま、資金が尽きて廃業に至る事業所も少なくありません。
小規模で経営基盤が弱い
訪問看護ステーションは、少人数で運営している小規模な事業所が多くを占めます。小規模であるほど、看護師さんの退職や利用者さんの減少といった変化に弱く、経営基盤が揺らぎやすい傾向があります。
わずかな売上の落ち込みでも資金繰りが厳しくなり、立て直す余力が乏しいまま廃業につながることがあります。運営法人の規模が小さい事業所ほど、こうした外部要因の影響を受けやすい点は知っておきたいところです。
24時間対応・オンコールの負担がある
多くの訪問看護ステーションでは、夜間や休日に利用者さんからの連絡に備える24時間対応・オンコール体制をとっています。この負担が特定の看護師さんに偏ると、心身の疲労から離職につながりやすくなります。
人が辞めればオンコールの当番が回る頻度がさらに増え、残ったスタッフの負担が重くなります。オンコール負担による人材の定着難が、間接的に廃業の一因となっているのです。
参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション基本情報(令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果)」
看護師の求人を探す訪問看護と訪問介護の廃業は別物

ニュースなどで「訪問介護の倒産が過去最多」と報じられることがあり、不安に感じた方もいるかもしれません。しかし、これは訪問看護とは別のサービスのデータです。混同しないよう、両者の違いを整理しておきましょう。
| 観点 | 訪問看護 | 訪問介護 |
|---|---|---|
| 主な担い手 | 看護師・准看護師・保健師・理学療法士など医療職 | 訪問介護員(ホームヘルパー)・介護福祉士 |
| サービス内容 | 医療処置・点滴管理・健康状態の観察・リハビリ指導など | 食事・入浴・排泄の介助・掃除・洗濯・買い物などの生活援助 |
| 実施の根拠 | 主治医の訪問看護指示書が必要 | ケアマネが作成するケアプランに基づく |
| 廃業・倒産の 主な統計 |
全国訪問看護事業協会の稼働ステーション数・廃止数で動向を把握倒産ニュースに頻出する「過去最多」の統計ではない | 東京商工リサーチ「訪問介護事業者の倒産」が主な指標2024年に過去最多を更新したと広く報道された |
「訪問介護」は、ホームヘルパーが食事や入浴、掃除などの生活援助を行うサービスです。一方「訪問看護」は、看護師さんが主治医の指示のもとで医療処置や健康管理を行うサービスで、担い手も提供する内容もまったく異なります。東京商工リサーチが公表する倒産統計で過去最多と報じられているのは、訪問看護ではなく訪問介護の数字です。
訪問看護ステーションの動向を正確に知りたいときは、倒産統計ではなく、全国訪問看護事業協会が公表する稼働数・廃止数・休止数を見るのが確実です。報道の見出しだけで「訪問看護も危ない」と早合点しないようにしましょう。
参考:東京商工リサーチ「2024年『介護事業者』倒産が過去最多の172件 『訪問介護』が急増、小規模事業者の淘汰加速」
【看護師向け】長く続く訪問看護ステーションの見極め方

廃業する理由がわかれば、その裏返しが「長く続く職場」を見極めるポイントになります。
ここでは、就職・転職先の安定性を確かめるために、看護師さんが面接や見学のときに確認しておきたい4つの視点を紹介します。求人票だけでは分からない部分も多いため、気になる点は遠慮なく質問してみましょう。
面接・見学で確認したい4つの視点
定着状況
- 「常勤看護師は何名いますか?」と数を直接聞く
- 「過去1年で辞めたスタッフはいますか?」と離職の実態を確認
- 一人体制や2名以下の場合は理由を必ず聞く
稼働状況
- 「登録利用者は何名いますか?」と現在の規模を確認
- 「一日の平均訪問件数はどのくらいですか?」と1人当たりの件数を聞く
- 開設からの年数・これまでの利用者推移を聞く
働き方の負担
- 「オンコールは月に何回ほど当たりますか?」と頻度を数字で確認
- 「夜間の呼び出しは月平均何件ですか?」と実際の出動実績を聞く
- オンコール手当の金額と、負担が特定の人に偏っていないかを確認
経営体制
- 「他に拠点はありますか?」と複数展開か単独かを確認
- 「母体の法人(病院・介護事業所等)はありますか?」とバックアップ体制を聞く
- 管理者・所長が現場で動いているか見学時に目視確認する
スタッフの人数と定着状況を確認する
まず確認したいのが、看護師さんの人数と定着状況です。廃業の最大の理由が人材確保である以上、一定数の看護師が在籍し、離職が少ない事業所ほど安定していると考えられます。
看護師さんが一人だけの一人体制は、その人が休んだり辞めたりすると事業が止まるため不安定です。常勤換算で何人が働いているか、勤続年数の長いスタッフがいるか、直近で大量退職が起きていないかを確認しておきましょう。
利用者数・稼働状況を確認する
利用者さんの数が安定しているかどうかも、経営の安定を測る大切な指標です。訪問件数が少なすぎる事業所は収入が不安定で、廃業のリスクが高まります。
登録している利用者さんの数や、一日あたりの平均訪問件数、開設からの年数などを聞いてみましょう。ある程度の年数を継続できている事業所は、地域に利用者さんの基盤ができていると考えられます。
オンコールや働き方の負担を確認する
長く働き続けるには、オンコールをはじめとする働き方の負担が過重でないかも重要です。オンコールの当番がどのくらいの頻度で回ってくるのか、手当はいくらか、夜間の呼び出しが実際にどの程度あるのかを具体的に確認しましょう。
負担が一部のスタッフに偏っていないかも見極めのポイントです。オンコール体制が整い、負担が分散されている事業所は、人材が定着しやすく長続きしやすい傾向があります。
運営元の規模・経営体制を確認する
最後に、運営している法人の規模や経営体制を確認しましょう。小規模で経営基盤が弱い事業所ほど廃業しやすいため、運営法人の規模や複数拠点の展開状況は、安定性を測る手がかりになります。
複数のステーションを運営している法人や、母体がしっかりしている事業所は、一つの拠点が不調でも支え合える体制があります。求人を探す際は、事業所単体だけでなく、その運営元の規模や体制まで見ておくと安心です。
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【開業検討者向け】訪問看護ステーションの廃業を防ぐには

自分で訪問看護ステーションの開業を考えている方にとっても、廃業の理由を知ることは大きなヒントになります。廃業を防ぐために、開業前後で押さえておきたいポイントを整理します。
開業前
開業後
開業前にまず行いたいのが、地域の需要と競合の調査です。利用者さんを確保できる地域かどうか、近隣にどれだけ競合の事業所があるかを見極めておくことで、開業後に利用者さんが集まらないという事態を避けやすくなります。
運営が始まってからは、看護師など人材の採用・定着の仕組みを整えることが欠かせません。あわせて、レセプト請求や収支の管理を正確に行い、資金繰りを把握しておくことも重要です。無理のないオンコール体制を設計し、特定のスタッフに負担が偏らないようにすることも、人材の定着につながります。
小規模ゆえの脆弱さを補うには、運営体制やサポート体制を整えておくことが大切です。廃業に至る事業所の多くは、これらの準備が不十分なまま開業しています。裏を返せば、事前の備えを丁寧に行うことが、そのまま廃業を防ぐ最大の対策になります。
まとめ
訪問看護ステーションは15年連続で数が増える一方、廃止・休止も過去最多を更新し、二極化が進んでいます。新規開業の廃業率は約5%程度という目安があるものの、需要が高い分野でも一定数が廃業しているのが実情です。主な理由は、人材の確保難、利用者の不足、小規模ゆえの経営基盤の弱さ、オンコールの負担にあります。
看護師さんが長く働ける職場を選ぶには、スタッフの人数と定着状況、利用者数、オンコールの負担、運営元の規模という4つの視点で見極めることが大切です。開業を考える方は、需要と競合の調査、人材の採用・定着、収支管理、無理のない体制づくりが廃業を防ぐ鍵になります。廃業のリスクと理由を正しく理解し、安定して長く続けられる訪問看護との関わり方を見つけていきましょう。
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