整骨院は儲かる?二極化の実態と儲かる院の特徴・柔道整復師の年収
「整骨院を開業すれば儲かる」と言われたのは、もう昔の話かもしれません。柔道整復師の数が増え、整骨院どうしの競争が激しくなったいま、現場は「しっかり利益を出す院」と「経営に苦しむ院」に大きく分かれています。
とはいえ、収益の仕組みを理解して正しく運営すれば、整骨院で十分に利益を出すことは可能です。
この記事では、整骨院が儲かる院と儲からない院に分かれる理由、儲ける仕組み、経営者や柔道整復師の年収の目安、そして儲かる院に共通する特徴までを、公的データをもとに現実的に整理します。
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整骨院は「儲かる院」と「苦戦する院」に二極化している

かつては「整骨院を開業すれば食べていける」と言われた時代もありました。しかし現在は状況が変わり、整骨院は「しっかり儲かる院」と「経営に苦戦する院」の二極化が進んでいます。
開業すれば誰でも儲かるわけではない一方で、収益構造を理解して適切に経営すれば、十分に利益を出せる余地も残っています。
二極化の背景にあるのが、柔道整復師の増加と施術所の過当競争です。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、柔道整復の施術所は全国で50,924か所にのぼります。これは、身近な存在であるコンビニエンスストア(約55,736店)に迫る数です。
限られた地域の中で多くの整骨院が患者さんを取り合う構図になっており、何も工夫しなければ埋もれてしまうのが現実です。
さらに、収益の柱だった保険診療も年々厳しくなっています。柔道整復療養費は平成24年度をピークに減少に転じ、令和3年度は推計で約2,867億円まで縮小しました。保険請求の審査も厳しくなっており、保険診療だけに頼る経営はリスクが高まっています。
こうした環境の中で、自費メニューや差別化に取り組めた院と、従来のやり方を続けた院との差が、収益の二極化として表れているのです。
今のあなたの状況は?
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計データ」 / 厚生労働省「社会保障審議会 医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会」
整骨院の収益構造

整骨院が儲かるかどうかを考えるには、まず「どこからお金が入ってくるのか」を理解することが出発点になります。
整骨院の収益は、大きく「保険診療」「自費診療」「交通事故施術(自賠責保険)」の3つが柱です。この3本柱のバランスの取り方が、経営の良し悪しを左右します。
保険診療は、健康保険が使える骨折・脱臼・打撲・捻挫(肉離れを含む)といった急性・亜急性の外傷が対象です。安定した来院につながりやすい一方、慢性的な肩こりや日常的な腰痛は保険の対象外で、1回あたりの単価も高くありません。
自費診療は、保険が使えない施術や特別なメニューを自由な料金で提供でき、客単価を上げやすいのが特徴です。
交通事故施術は自賠責保険が適用され、施術期間が長く単価も高くなりやすい分野です。
- 骨折・脱臼・打撲・捻挫など急性外傷が対象
- 健康保険を使える来院経路
- 単価は低め・件数で稼ぐ構造
- 保険外・料金は院が自由に設定
- 施術メニューを独自に展開できる
- 客単価を引き上げやすい
- 自賠責保険が適用される
- 施術期間が長くなりやすい
- 単価が高め・安定収益になる
近年は保険請求の審査が厳格化し、保険診療だけでは十分な収益を確保しにくくなっています。そのため、自費メニューを取り入れて客単価を上げることが、儲かる院に共通する動きになっています。
そして、整骨院の売上はシンプルな式で捉えられます。売上は「1日の来院者数 × 客単価 × リピート率」で決まる、という考え方です。来院者数を増やす、客単価を上げる、通い続けてもらう。この3つのどれを伸ばすかを意識して手を打つことが、収益改善の土台になります。
逆に言えば、この式のどれか一つでも極端に低いと、経営はすぐに苦しくなります。
柔道整復師の求人を探す参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」
整骨院経営者・柔道整復師の年収

整骨院に関わる収入は、「自分の院を開業した経営者」か「整骨院などに雇われて働く勤務柔整師」かで大きく変わります。
ここでは、開業した場合と勤務した場合の年収の目安を、それぞれ見ていきます。数値はいずれも目安であり、院の規模や地域、経営状況によって幅が大きい点に注意してください。
開業した場合の年収
自分の整骨院を開業した経営者の年収は、おおむね400〜800万円程度が一つの目安とされ、経営がうまくいけば1,000万円を超えるケースもあります。勤務時代の給与に天井を感じて独立する柔道整復師も少なくありません。
ただし、開業は大きなリターンが期待できる一方で、相応のリスクも伴います。売上が伸びなければ、家賃・人件費・広告費といった固定費が重くのしかかり、経営者の手取りが勤務時代を下回ることもあります。開業はリスクとリターンの両面を理解したうえで判断することが大切です。
開業の条件や資金の調達方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
勤務した場合の年収
整骨院や整形外科などに勤務する柔道整復師の年収は、厚生労働省のデータをもとにした職業情報提供サイト(jobtag)では、おおむね400万円台が目安とされています。全国の平均的な水準に近く、開業経営者ほどの上振れは期待しにくいものの、収入が安定しやすいのが勤務のメリットです。
実際の求人の水準を月給で見ると、勤務先による違いが表れます。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、整・接骨院の正社員の月給中央値は271,500円、クリニックは250,000円で、整骨院での勤務は比較的高めの傾向がうかがえます。
年収は年齢や経験、役職によっても変わります。年代別の収入や、勤務と開業でどう差が開いていくかを知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
お探しの求人は?
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)柔道整復師」
儲かる整骨院の特徴

儲かる整骨院には、いくつかの共通点があります。ここでは、読者の方が自院の経営に取り入れやすい4つの特徴を整理します。
いずれも特別な才能が必要なわけではなく、仕組みとして取り組めるものです。
| 儲かる院 | 苦戦する院 | |
|---|---|---|
| 客単価(自費メニュー) | ◯ 自費で単価を上げる | ✕ 保険中心で単価が低い |
| リピート率 | ◯ 通院につなげる仕組み | ✕ 初回で終わりがち |
| 立地・ターゲット | ◯ ターゲットと立地が明確 | △ 誰向けか曖昧 |
| 数値管理 | ◯ 数字で課題を把握 | ✕ 感覚で経営 |
自費メニューで客単価を上げている
儲かる院の多くは、保険診療だけに依存せず、自費メニューで客単価を上げています。保険診療は単価が低く、審査も厳しくなっているため、保険だけで大きく利益を伸ばすのは難しくなっています。
そこで、姿勢矯正や骨盤矯正、特殊な手技、スポーツコンディショニングなど、患者さんの悩みに合わせた自費メニューを用意し、価値に見合った料金を設定します。
「保険で安く」ではなく「自費でもここに通いたい」と思ってもらえる価値を提供できるかが、収益を大きく左右します。
リピート率が高い
新規の患者さんを集めることも大切ですが、それ以上に経営を安定させるのがリピート率です。初回で終わってしまう院と、症状が改善するまで通い続けてもらえる院とでは、売上に大きな差が生まれます。
儲かる院は、初回のカウンセリングで症状や通院の見通しをていねいに説明し、次回予約や施術計画の提案までを仕組みにしています。広告費をかけて新規を集めても、リピートにつながらなければ利益は残りません。
既存の患者さんに満足して通い続けてもらうことが、安定した収益の基盤になります。
立地・ターゲットが明確
どこで、誰に向けて開業するかも、儲かるかどうかを大きく分けます。儲かる院は、ターゲット層に合った立地とコンセプトを選んでいます。
たとえば、高齢者が多い住宅街なら地域密着で慢性症状に対応する、オフィス街なら仕事帰りに立ち寄れる肩こり・腰痛ケアを打ち出す、といった具合です。
競合が多い場所でも、ターゲットと提供価値が明確であれば選ばれる理由が生まれます。
逆に、なんとなく良さそうな場所に、誰向けかあいまいなまま開業すると、競合に埋もれてしまいます。
数値を管理し改善している
最後に、儲かる院は経営を数値で管理し、改善を続けています。売上、来院数、新規数、リピート率、客単価といった数字を把握し、どこに課題があるかを見極めて手を打っています。
「なんとなく忙しい」「なんとなく暇」という感覚だけで経営していると、問題に気づくのが遅れます。毎月の数字を振り返り、来院数が落ちているのか、リピートが弱いのかを切り分けて対策する。
この地道な積み重ねが、儲かる院と苦戦する院を分けていきます。
儲からない整骨院に共通する原因

一方で、経営に苦戦する整骨院にも共通点があります。儲かる院の特徴を裏返したものが多く、言い換えれば改善の余地でもあります。
苦戦する院に多いのは、次のようなパターンです。保険診療に依存したまま客単価を上げられていない、競合が多い立地で差別化ができていない、集客の仕組みがなく新規もリピートも取れていない、数字を把握せず感覚で経営している、といったものです。
これらは一つだけでなく、いくつも重なって負のループに陥ることが少なくありません。
たとえば、保険中心で単価が低いために売上が伸びず、広告に十分な費用をかけられない。すると新規が集まらず、リピートの仕組みもないため来院数が先細りしていく。数字を見ていないので手を打つのが遅れ、気づいたときには経営が厳しくなっている、という流れです。
大切なのは、これらの原因が裏を返せばすべて改善できるポイントだということです。自費メニューの導入、ターゲットの明確化、集客とリピートの仕組みづくり、数値管理。一つずつ取り組めば、苦戦する院から抜け出す道は開けます。
柔道整復師の求人を探す整骨院で収益を伸ばす方法

単院の経営が軌道に乗ったら、さらに収益を広げる選択肢もあります。ここでは、代表的な3つの方向性を紹介します。ただし、いずれも新たな知識やスキルが必要になる点は押さえておきましょう。
2院目・3院目を出店して規模を拡大する方法。スタッフの採用・育成と業務の仕組み化が土台となり、経営者としての視点と管理能力が問われる。
サポーター・健康器具・インソールなどを院内で販売し、施術以外の収益源を持つ方法。患者さんの悩みに直結した商品選定が信頼につながり、客単価の向上にも寄与する。
自院で培った集客・自費診療のノウハウを開業予定者や同業者に向けて発信し収益化する方法。十分な実績と再現性のある成功体験があってこそ成り立つ。
1つ目は、複数店舗の展開とスタッフのマネジメントです。2院目、3院目と店舗を増やせば、売上の規模を大きくできます。ただし多店舗展開には、経営知識に加えて、スタッフを採用・育成し、自分がいなくても回る仕組みをつくるマネジメントスキルが欠かせません。院長が現場に出ずに経営に集中できる体制をつくれるかが分かれ目です。
2つ目は、物販の導入です。サポーターや健康器具、インソール、セルフケア用品などを取り扱い、施術以外の収益源をつくります。患者さんの悩みに合った商品であれば、満足度を高めながら客単価アップにもつながります。
3つ目は、経営ノウハウを活かしたセミナー講師です。自院で培った集客や自費メニューの仕組みを、これから開業する柔道整復師に向けて伝える形で収益化する方法です。実績があってこそ成り立つ分野ですが、施術以外の柱を持ちたい経営者にとって選択肢になります。
転職活動するなら?
整骨院経営に関するよくある質問

最後に、整骨院の経営や開業を考える方からよく寄せられる質問に、現実的な視点でお答えします。
整骨院は1日何人来れば儲かる?
「1日何人来れば儲かるか」は、客単価と固定費によって変わるため、一概に何人とは言えません。客単価が高く固定費が低い院なら少ない来院数でも黒字になりますし、逆に単価が低く固定費が高ければ、多くの来院があっても利益が残りにくくなります。
まずは自院の損益分岐点、つまり「毎月いくらの売上が必要か」を把握し、それを客単価で割って必要な来院数を逆算するのが現実的です。
来院数の目安や経営状態の判断基準については、以下の記事で詳しく解説しています。
整骨院の利益率はどのくらい?
整骨院の利益率も、自費診療の比率によって大きく変わります。単価の低い保険診療が中心の院と、自費メニューをうまく取り入れている院とでは、同じ売上でも手元に残る利益が変わってきます。
一般的に、人件費や家賃といった固定費の割合が利益率を左右します。売上を追うだけでなく、コストとのバランスを見て、単価の高い自費診療の比率を高めることが、利益率の改善につながります。
これから整骨院を開業しても儲かる?
これから開業しても儲かるかどうかは、二極化の中で自費・差別化ができるかどうかにかかっています。施術所が飽和に近い状況で、これまでと同じ「保険中心・立地任せ」の開業では、厳しい戦いになる可能性が高いといえます。
一方で、明確なターゲットと自費メニュー、集客とリピートの仕組みを準備できれば、これからの開業でも十分に勝機はあります。安易に「資格があるから」と開業するのではなく、経営の準備を整えてから踏み出すことが、儲かる院への近道です。
まとめ
整骨院は「開業すれば儲かる」時代から、「儲かる院」と「苦戦する院」に二極化する時代へと変わりました。施術所の過当競争と保険診療の厳しさが背景にあり、従来のやり方だけでは利益を出しにくくなっています。
一方で、収益構造を理解して手を打てば、整骨院で十分に利益を出すことは可能です。儲かる院に共通するのは、自費メニューで客単価を上げる、リピート率を高める、ターゲットと立地を明確にする、数値で経営を管理する、という4つの取り組みでした。
年収の目安は、勤務でおおむね400万円台、開業経営者で400〜800万円、成功すれば1,000万円超と幅がありますが、いずれも経営次第で変わります。
これから開業する方も、いまの経営を見直したい方も、まずは自院の数字を把握し、自費と差別化に取り組むことから始めてみてください。次の一歩として、働き方やキャリアを見直したい方は、求人情報もあわせてチェックしてみましょう。





