管理柔道整復師が院にいない場合どうなる?保険請求への影響と対処手順を解説
柔道整復師として保険施術を行っている施術所では、「管理柔道整復師(施術管理者)」を厚生局に届け出ることが義務付けられています。
しかし「管理者が急に退職した」「修了証の有効期限が切れていた」「長期入院で院に来られなくなった」といった事態は、決して他人事ではありません。管理者が院にいない状態になると、保険請求が一切できなくなるほか、放置すれば名義貸しとして行政処分の対象になることもあります。
本記事では、管理柔道整復師が不在になった場合の影響と対処手順、名義貸しの罰則、後任を早急に立てる方法まで、実務に即した形で解説します。
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管理柔道整復師とは?

管理柔道整復師とは、柔道整復療養費の受領委任を取り扱うために必要な責任者のことです。
施術所ごとに1名が厚生局への届出を行い、保険請求と施術の質を管理する立場にあります。まずは定義と要件を確認しておきましょう。
施術管理者とは?
柔道整復師が行う施術に対して、患者さんが健康保険を使って一部負担金のみを支払う仕組みを受領委任といいます。この受領委任を施術所で取り扱うには、厚生局に「施術管理者」として届け出た柔道整復師が施術所に在籍していることが条件です。
施術管理者は保険請求の責任者であり、同時に施術所における施術の質を監督する立場でもあります。施術所の開設届においても管理者として名前が記載される、運営上きわめて重要な役職です。
受領委任を扱うための要件
受領委任を取り扱う施術管理者になるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1つ目は柔道整復師の免許を有していること、2つ目は一定期間以上の実務経験があること、3つ目は施術管理者研修を修了し、有効な修了証を保有していることです。
これらの要件を満たした上で、地方厚生局へ受領委任の取扱いを申し出ます。
施術管理者として届け出るための3つの要件
柔道整復師の国家資格を取得していること
柔道整復師として3年以上の実務経験があること
施術管理者研修を修了し、有効期限5年以内の修了証を持っていること
施術所の責任者としての位置付け
施術管理者は、単に保険請求のための条件を満たす存在ではありません。施術所において常勤し、スタッフの施術管理・指導を行う責任者としての役割も担います。厚生局への届出には「常勤」が前提となっているため、名目だけ管理者として置いておくことは認められていません。
また、複数の施術所を兼務することも原則として認められず、実態として施術所に在籍していることが求められます。
管理柔道整復師が院にいない場合の影響

管理柔道整復師(施術管理者)が何らかの事情で院にいなくなった場合、施術所の経営に深刻な影響をおよぼします。保険請求が停止されるだけでなく、厚生局への届出義務が生じる点も見落とすことができません。
保険請求が一切できなくなる
受領委任制度は、施術管理者として届け出た柔道整復師が施術所に在籍していることを前提としています。管理者が不在・不適格になった時点から、その施術所での受領委任取扱いは認められなくなります。
つまり患者さんは健康保険が使えず、施術費用を全額自己負担しなければならない状況になります。保険請求の停止は即日から適用されるため、管理者が不在になった段階で直ちに対処が必要です。
保険収入の大部分を失うことは、施術所の経営に直結する重大な事態です。
管理者不在になったときの流れ
(退職・死亡・長期休暇・修了証期限切れ など)
(保険施術ができなくなる)
後任の準備を進める
行政処分のリスク
管理者不在は患者・保険者からの信頼を損なう
管理者不在の状態が続くと、患者さんとの信頼関係にも悪影響が生じます。これまで保険適用で施術を受けてきた患者さんが突然全額自費になれば、不満や不信感を抱くのは当然のことです。
また、保険者(協会けんぽ・健保組合など)から定期的に行われる実地調査で管理者不在が発覚した場合、施術所全体の信頼性が問われることになります。
管理者の不在は「施術の質を担保する者がいない」ということでもあり、患者さんへの安全な施術提供にも支障をきたします。
厚生局への届出義務が発生する
施術管理者に変更が生じた場合、変更後10日以内に厚生局へ変更届を提出することが義務付けられています。急な退職や死亡の場合も同様で、この届出を怠った場合は行政指導の対象になることがあります。
届出が遅れると「無届けで受領委任を継続していた」とみなされるリスクがあるため、事実が判明した時点で速やかに手続きを進めることが必要です。
なお、後任が見つかるまでの間に受領委任を一時停止する手続きも選択肢の一つです。
参考:近畿厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」
柔道整復師の求人を探す管理柔道整復師が不在になるケース別の対処方法

管理柔道整復師が不在になる理由はケースによって異なり、それぞれに応じた対処が必要です。急な事態か予測可能な事態かによって、取るべき行動の優先順位が変わります。
急な退職・死亡の場合
もっとも対応が難しいのは、管理者の急な退職や死亡です。事前の引き継ぎが行われないまま管理者が不在になると、保険請求が即停止されます。
このような場合は、まず事実を確認し、厚生局への変更届を10日以内に提出することを最優先に行動してください。
次に、院内の柔道整復師の中から後任候補を速やかにリストアップし、施術管理者研修の申し込みに向けて動き出すことが重要です。保険請求ができない期間が長引くほど、経営への影響も大きくなります。
産休・育休・長期休暇の場合
産休・育休や長期入院など、ある程度予測できるケースでは、事前の準備が可能です。管理者が不在になる予定日より少なくとも6ヶ月前には後任候補の選定と施術管理者研修の申し込みを始めることをおすすめします。
研修は年に数回しか開催されないため、申し込みのタイミングを逃すと数ヶ月待ちになることがあります。
また、管理者が休暇に入る前に後任者への業務引き継ぎを十分に行い、厚生局への変更届の提出タイミングも事前に確認しておきましょう。
施術管理者研修の修了証が期限切れになった場合
修了証には5年間の有効期限があります。更新研修の受講を忘れて有効期限が切れてしまった場合も、受領委任の取扱いができなくなります。修了証の有効期限が切れる前に、更新研修(同じ施術管理者研修)を受講し、新たな修了証を取得することで継続して管理者として届け出ることができます。
期限切れに気づいた時点で即座に次の研修日程を確認し、申し込みを行うことが求められます。この状況を放置すると、名義貸しとみなされるリスクもあります。
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名義貸しによる行政処分・罰則
管理柔道整復師が実際には院にいないにもかかわらず、書類上だけ管理者として届け出を続ける「名義貸し」は、厳しく処罰される違法行為です。その処罰は段階的に重くなり、最終的には刑事罰にまで発展することがあります。
受領委任の取扱い中止
名義貸しが疑われる事実を厚生局が把握した場合、まず受領委任の取扱い中止処分が下されます。この処分が出ると、以後その施術所での保険請求は一切認められなくなります。中止処分の解除には、適正な管理者のもとで改めて受領委任の届出を行い、厚生局による審査を受ける必要があります。一度処分を受けると施術所の信頼が著しく低下するため、発覚する前に自主的に是正することが重要です。
返還命令
受領委任の取扱い中止に加え、名義貸しが行われていた期間に請求した療養費の全額返還を命じられることがあります。不正請求とみなされた期間が長ければ長いほど、返還金額も大きくなります。返還命令の対象は施術所の開設者(院長・法人)であり、数百万円から場合によっては数千万円規模の返還を求められるケースも報告されています。「ばれなければいい」という考えは絶対に禁物です。
刑事罰の可能性
悪質と判断されたケースでは、詐欺罪として刑事告発される可能性があります。保険者(協会けんぽ・健保組合など)に対して虚偽の事実を申告し、不正に療養費を受け取った場合は詐欺罪(刑法246条)が適用される可能性があり、懲役刑を含む刑事罰の対象になります。過去には受領委任の名義貸しで院長が書類送検された事例も報じられています。名義貸しは軽い法令違反ではなく、施術所の閉鎖・廃業につながりうる重大な違反行為です。
名義貸しが疑われるケース

意図せず名義貸しと判断されてしまう状況もあり、ここでは具体的なケースごとに解説します。
以下に該当する場合は、早急に実態を見直し、必要に応じて届出の変更や是正を行うことをおすすめします。
勤務実態のない管理者
施術管理者として届け出ているものの、実際には別の施術所や他の職場にフルタイムで勤務しており、当院にはほとんど来ていないケースです。
厚生局の実地調査では、出勤記録や施術録、スタッフへの聞き取りなどを通じて実態が確認されます。「名目上は管理者だが実際には来ていない」という状況は、書類上の意図がどうであれ名義貸しとみなされる場合があります。
管理者は施術所に常勤していることが前提です。
実地調査で確認される主な項目
- 出勤記録・タイムカード 管理者本人の勤務日数・勤務時間と、施術所の開院日との整合性
- 施術録(カルテ)の記載者 施術管理者の名前で記載されている施術が、実際に本人によって行われたか
- 療養費支給申請書の作成・確認状況 請求の責任者として、内容を本人が確認・押印しているか
- スタッフ・他の柔道整復師への聞き取り 「管理者がいつ来院しているか」「日常的に施術所にいるか」の証言
- 他施設での勤務実態との突合 別の施術所・整形外科・企業などでの常勤雇用の有無
他院と掛け持ちしている管理者
2つ以上の施術所で管理者として届け出ている場合、双方の施術所での「常勤性」が問われます。受領委任の取扱いに関する規程では、管理者は1つの施術所に常勤することが求められています。
物理的に複数の施術所を掛け持ちすることは、少なくとも一方の施術所での常勤が満たされない可能性が高く、いずれかの施術所での名義貸し状態に当たると判断されることがあります。
厚生労働省が定める兼任のルール
- 一人の柔道整復師が複数の施術所の管理者となることは、原則として認められていない
- 例外的に複数施術所の管理者となる場合でも、同時に複数施術所を管理することはできないため、各施術所における管理を行う日時(曜日)を明確に分ける必要がある
- 複数施術所を管理する場合は、届出時に「勤務形態確認表」の提出が必要
- 勤務形態に虚偽があれば、いずれの施術所も受領委任の取扱い中止処分の対象となりうる
休業中・長期不在の管理者
産休・育休・長期入院・長期出張などにより、実際には施術所に出勤できていない状態が続いているにもかかわらず、変更届を出さずに管理者として届け出を継続しているケースです。この状況も、実地調査によって実態が明らかになれば名義貸しとみなされる恐れがあります。
長期不在が確定した段階で速やかに変更届の提出または後任の準備を始めることが求められます。
- 管理者として届け出ているが出勤記録が月数回程度しかない
- 複数施術所を掛け持ちしており、いずれかでの常勤が確認できない
- 産休・育休・入院中でも変更届を出さずに管理者として継続している
後任の管理柔道整復師を早急に立てる手順

管理者不在が発生した、またはその見込みがある場合、後任の施術管理者を立てることが最優先の課題です。ここでは研修の申し込みから受領委任再開までの具体的なステップと、空白期間を乗り切るための実践的な方法を解説します。
施術管理者研修の受講優先度と申し込みタイミング
後任候補が決まったら、最初に確認すべきことは「実務経験3年以上を満たしているか」です。この条件を満たしていれば、すぐに施術管理者研修の申し込みを行います。
研修は公益財団法人柔道整復研修試験財団が実施しており、年に数回の開催です。申し込み開始日は定員に達すると締め切られることもあるため、公式サイトで日程を確認し、申し込み開始日に即座に手続きすることが重要です。
修了証発行までの期間と保険請求の空白期間を乗り切る方法
研修を修了しても、修了証の発行と厚生局への変更届の受理まで数週間かかる場合があります。
この空白期間中、保険請求ができないことで患者さんに負担がかかります。まずは全額自費での施術に切り替えた上で、患者さんへ丁寧な説明を行うことが信頼維持の鍵です。
空白期間が長引く場合は、他地域の施術管理者研修を受講できないか検討したり、後任候補に対して早めの申し込みを促したりすることが現実的な対策です。
後任が必要になってから6ヶ月以内に動くべき理由
施術管理者研修の次の開催まで3〜4ヶ月待つケースも珍しくありません。そこから研修受講(2日間)・修了証取得・厚生局への変更届と審査を経ると、最短でも2〜3ヶ月はかかります。
つまり後任が必要になってからでは6ヶ月以上保険請求が止まる可能性があります。
特に管理者の産休・育休・退職を予見できる状況では、半年前からの準備が受領委任の空白期間を最小化する最善策です。
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管理柔道整復師の要件と研修内容

受領委任を取り扱うには、実務経験と施術管理者研修の修了が必須です。2024年4月以降は要件が強化されており、また2026年度以降は研修の形式も変わります。改めて最新の情報を確認しておきましょう。
必要な実務経験年数
受領委任の届出に必要な実務経験年数は、制度開始当初から段階的に引き上げられてきました。2018年の制度開始時は1年以上でしたが、2022年度からは2年以上、そして2024年4月1日以降は3年以上が必要となりました。
「実務経験」として認められるのは、柔道整復師として勤務した期間であり、施術管理者研修を申し込む時点で要件を満たしていることが必要です。
将来的に管理者を目指している柔道整復師は、キャリア計画の中に実務経験年数をしっかり組み込んでおくことが重要です。
参考:近畿厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」
施術管理者研修の内容・費用・日程
施術管理者研修は、公益財団法人柔道整復研修試験財団が主催しています。研修は土・日・祝日を使った連続2日間で実施され、合計16時間のカリキュラムが設けられています。
受講料は25,000円です(2025年度実績)。研修の内容は、受領委任取扱規程・療養費の適正申請・倫理教育など、施術管理者として必要な知識を習得するものです。
また、2026年度以降はオンライン形式での研修が廃止され、会場(対面)での受講のみとなるため、これまでオンラインで受けていた方は日程調整に余裕を持って申し込む必要があります。
参考:公益財団法人柔道整復研修試験財団「令和7年度 柔道整復師施術管理者研修」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | 公益財団法人柔道整復研修試験財団 |
| 研修形式 | 会場(対面)のみ ※2026年度以降オンライン廃止 |
| 研修時間 | 連続2日間・合計16時間(土・日・祝を利用) |
| 受講料 | 25,000円(2025年度実績) |
| 修了証の有効期限 | 交付日より5年間 |
| 更新 | 有効期限内に同研修を受講することで更新可能 |
管理柔道整復師不在を防ぐための院内体制づくり

管理者不在のリスクを減らすには、日頃からの院内体制整備が欠かせません。万が一の事態に備えて複数の管理者候補を育成し、修了証の有効期限を一元管理する仕組みを整えておくことが、安定した施術所運営の土台になります。
複数スタッフに研修を受けさせておく
管理者が1名だと、その人が離職・長期休暇になった途端に保険請求が止まります。施術所に実務経験3年以上の柔道整復師が複数いる場合は、全員に施術管理者研修を受講させておくことが理想的です。
ただし費用(1人あたり25,000円)と研修日程の確保が必要になるため、計画的に進めることが重要です。
複数のスタッフが修了証を持つことで、主力の管理者に何かあってもすぐに後任を立てられる体制が整います。
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修了証の有効期限(5年)を管理する
施術管理者研修の修了証には5年間の有効期限があります。複数名が修了証を持つ院では、各自の有効期限がバラバラになりがちです。
有効期限の一覧を院内で共有し、期限の1年前には更新研修の申し込みをリマインドする仕組みを作っておきましょう。
また、更新研修も同じ施術管理者研修であり、受講料・時間・内容は初回と同様です。修了証の期限切れは「うっかりミス」では済まされないため、定期的な確認体制を整えることが安定した運営への近道です。
まとめ
本記事では、管理柔道整復師が院にいない場合のリスクと対処方法について解説しました。要点を整理しておきます。
- 管理者不在は保険請求の即停止に直結し、施術所の経営に深刻な打撃を与える
- 変更後10日以内に厚生局への変更届を提出することが義務
- 名義貸しは行政処分・返還命令・刑事罰の対象となる重大な違反行為
- 後任を立てるには研修申し込みから受領委任再開まで最短でも2〜3ヶ月かかる
- 不在が見込まれる場合は6ヶ月以上前から準備を始めることが重要
院内体制として、実務経験3年以上の複数スタッフに施術管理者研修を受講させておくことが、最も現実的なリスク回避策です。修了証の有効期限(5年)も定期的に管理し、更新漏れを防ぐ仕組みを整えることが、安定した施術所運営への第一歩となります。
管理者の選定・採用でお困りの場合は、柔道整復師専門の転職エージェントに相談するのも一つの方法です。まずは現在の院の状況を整理し、必要な対策から着手していきましょう。





