柔道整復師法とは?法律の内容・業務範囲・広告制限・罰則をわかりやすく解説

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柔道整復師として働くうえで、「柔道整復師法」の内容を正しく理解しておくことは欠かせません。業務範囲や広告のルール、施術所の開設手続きなど、日々の業務に直結する規定が数多く定められています。

しかし、法律の条文は専門用語が多く、具体的にどのような行為が許され、何が禁止されているのか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、柔道整復師法の目的や主要条文の内容から、業務範囲、広告制限、療養費のしくみ、罰則、関連法律との違いまで、現場で役立つポイントをわかりやすく解説します。

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目次

柔道整復師法とは?

参考書やメモを見ながら勉強する柔道整復師の男女

柔道整復師法は、柔道整復師の資格や業務に関する基本的なルールを定めた法律です。

ここでは、法律の目的や制定の経緯、正式名称について確認していきましょう。

柔道整復師法の目的と概要

柔道整復師法は、柔道整復師の資格を定め、業務が適正に行われるよう規律することで、医療の普及と公衆衛生の向上に寄与することを目的とした法律です。

具体的には、柔道整復師の定義や免許制度、業務範囲、施術所の開設基準、広告の制限、罰則など、柔道整復師として活動するうえで守るべきルール全般が規定されています。

規定内容概要
柔道整復師の定義・免許制度国家資格としての位置づけ、免許の取得要件・登録手続き
業務範囲骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷に対する施術。骨折・脱臼は応急処置を除き医師の同意が必要
業務独占・名称独占免許を持たない者の施術と「柔道整復師」の名称使用を禁止
施術所の開設基準開設届の提出義務、構造設備基準(面積・換気・衛生管理など)
広告の制限掲示できる事項が限定列挙されており、誇大広告や虚偽広告は禁止
罰則無免許施術・開設届の未提出・広告制限違反などへの罰則規定

全30条と附則で構成されており、条文数としてはコンパクトですが、業務独占や名称独占、施術の制限など、実務に直結する重要な規定が含まれています。

柔道整復師として業務を行ううえで、この法律の内容を知らないまま活動すると、意図せず法令違反となるリスクがあります。開業を考えている方はもちろん、勤務柔道整復師の方も基本的な内容を押さえておくことが大切です。

あはき法から独立して1970年に制定された経緯

柔道整復師に関する法規制は、もともと「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」(通称:あはき法)のなかで、あはき師と一括して規定されていました。

しかし、柔道整復師の業務内容はあはき師とは異なる特性を持つため、独立した法律として整備する必要性が高まりました。

こうした背景から、1970年(昭和45年)に「柔道整復師法」が単独の法律として制定されました。これにより、柔道整復師の免許制度や業務範囲、施術所の基準などが独自に規定されるようになり、柔道整復師という職種の専門性がより明確に位置づけられました。

〜1970年

あはき法で一括規定

  • あはき師と同じ法律内で規定
  • 業務内容が異なるのに同一扱い
  • 柔整師の専門性が不明確
1970年〜

柔道整復師法として独立

  • 独自の免許制度を規定
  • 業務範囲を明確に定義
  • 施術所の開設基準を整備
  • 職種の専門性が確立

柔道整復師法の正式名称と略称

柔道整復師法の正式名称は「柔道整復師法」であり、法律番号は「昭和45年法律第19号」です。一般的に「柔整法」と略されることがあり、実務の現場や業界内ではこの略称が広く使われています。

なお、あはき法と併せて「あはき柔整法」と総称されることもあります。広告規制や療養費の制度改正などでは、あはき師と柔道整復師が同時に議論されるケースが多いため、この総称を目にする機会も少なくありません。

参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)」

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柔道整復師法の主要条文

カルテに記録をとる柔道整復師

柔道整復師法には、資格の定義から罰則まで幅広い規定が設けられています。ここでは、実務上とくに重要な条文をピックアップして解説します。

柔道整復師の定義(第2条)

第2条では、柔道整復師を「厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者」と定義しています。ここでいう「柔道整復」とは、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの外傷に対して、手術をせずに整復・固定・後療法などの施術を行うことを指します。

つまり、柔道整復師は国家資格保有者のみが名乗ることができ、資格を持たない者が柔道整復を業として行うことは法律で禁じられています。

免許の取得要件と欠格事由(第3〜4条)

第3条では、柔道整復師の免許は柔道整復師国家試験に合格した者に対して厚生労働大臣が与えると定められています。国家試験の受験には、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した養成施設で3年以上の教育課程を修了する必要があります。

第4条では欠格事由が定められており、以下に該当する場合は免許が与えられないことがあります。

  • 心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
  • 麻薬、大麻またはあへんの中毒者
  • 罰金以上の刑に処せられた者
  • 柔道整復の業務に関し犯罪または不正の行為があった者

ただし、該当するからといって必ず免許が与えられないわけではなく、厚生労働大臣が個別に判断する「相対的欠格事由」とされています。

業務独占(第15条)

第15条は、柔道整復師法のなかでもとくに重要な条文です。「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行ってはならない」と規定しており、柔道整復の施術は柔道整復師の業務独占であることを明確にしています。

これは、無資格者が柔道整復と同様の施術を行うことを禁止する規定であり、患者さんの安全を守るための重要なルールです。違反した場合は罰則の対象となります。

外科手術・薬品投与の禁止(第16条)

第16条では、柔道整復師は外科手術を行うこと、および薬品を投与またはその指示をすることが禁止されています。柔道整復師の施術はあくまで非観血的療法(手術を伴わない方法)に限定されており、メスを使った処置や薬の処方はできません。

これは医師法に基づく医師の業務との明確な線引きであり、柔道整復師が活動できる範囲を法的に示した重要な規定です。

骨折・脱臼の施術には医師の同意が必要(第17条)

第17条では、柔道整復師が骨折または脱臼の患者さんに施術を行う場合、あらかじめ医師の同意を得なければならないと定めています。ただし、応急手当をする場合はこの限りではありません。

つまり、急を要する現場では応急的な整復・固定は単独で行えますが、その後の継続的な施術には医師の同意が必要です。打撲・捻挫・挫傷については医師の同意は不要であり、柔道整復師が単独で施術を行えます。

守秘義務(第17条の2)

第17条の2では、柔道整復師は正当な理由なく、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと規定されています。この守秘義務は柔道整復師でなくなった後も適用され、違反した場合は罰則の対象です。

患者さんの症状や個人情報はもちろん、施術中に知り得たプライベートな情報なども対象となります。施術所のスタッフ間での情報共有にも配慮が必要です。

施術所の開設届出(第19条)

第19条では、施術所を開設した場合、開設後10日以内に施術所の所在地の都道府県知事(保健所設置市または特別区の場合はその長)に届け出なければならないと規定されています。届出には、施術所の名称・所在地・開設者の氏名・施術に従事する柔道整復師の氏名などを記載します。

また、届出事項に変更が生じた場合や施術所を休止・廃止した場合にも届出が必要です。届出を怠ると罰則の対象となるため注意しましょう。

広告の制限(第24条)

第24条は、柔道整復師の業務や施術所に関して広告できる事項を限定列挙しています。この条文の詳細については、後述の「広告で使える表現・使えない表現」のセクションで詳しく解説します。

参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)」

条文内容ポイント
第2条柔道整復師の定義厚生労働大臣の免許を受けて柔道整復を業とする者
第3〜4条免許・欠格事由国家試験合格+養成施設3年以上修了が必要
第15条業務独占柔道整復師でなければ柔道整復を業として行えない
第16条外科手術等の禁止外科手術・薬品投与およびその指示は禁止
第17条骨折・脱臼の制限医師の同意が必要(応急手当を除く)
第17条の2守秘義務業務上知り得た秘密の漏洩禁止(退職後も適用)
第19条施術所の開設届出開設後10日以内に届出が必要
第24条広告の制限広告できる事項は限定列挙
第25〜29条罰則無免許施術・届出違反・広告違反・守秘義務違反

柔道整復師が施術できる範囲

施術台で足の施術を行う笑顔の男性柔道整復師

柔道整復師法が定める業務範囲を正しく理解することは、適法に施術を行ううえで不可欠です。ここでは具体的にどのような施術が認められているのかを確認します。

骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷が対象

柔道整復師が施術の対象とできるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の5つの外傷です。これらに対して、整復、固定、後療法を行います。

  • 骨折
    骨が折れた状態。整復・固定が主な施術
  • 脱臼
    関節が外れた状態。整復・固定後に後療法
  • 打撲
    打ち身。冷却・固定・物理療法で対応
  • 捻挫
    関節を捻った際の靭帯損傷。固定・後療法が中心
  • 挫傷
    肉ばなれなど筋肉・腱の損傷。固定・後療法で対応

これらの施術はすべて非観血的療法(手術を伴わない方法)であることが前提です。切開や縫合といった処置は医師の業務であり、柔道整復師が行うことはできません。

骨折・脱臼は応急手当のみ単独で可能

前述の第17条の規定により、骨折・脱臼に対する施術は原則として医師の同意が必要です。ただし、応急手当の場合は医師の同意なく施術できます。

  • 応急手当(現場での整復・固定など)
    医師の同意なしで可能
  • 継続施術(2回目以降の施術)
    医師の同意が必要
  • 打撲・捻挫・挫傷
    医師の同意は不要

実務上は、骨折や脱臼が疑われる場合に応急処置を行った後、速やかに医療機関への受診を勧めるか、医師の同意を得たうえで継続施術を行う流れが一般的です。

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柔道整復師が法律上できないこと

STOPと書かれた札を持つ手元

柔道整復師法は業務範囲を明確にすると同時に、できないことも規定しています。法令違反を防ぐために、禁止事項を正確に把握しておきましょう。

外科手術・投薬・レントゲン撮影

柔道整復師法第16条により、外科手術と薬品の投与・指示は明確に禁止されています。

さらに、レントゲン撮影などの放射線を使用する検査は、診療放射線技師法により診療放射線技師や医師のみが行える業務です。

  • 外科手術(切開・縫合などの観血的処置)は禁止
  • 薬品の投与およびその指示は禁止
  • レントゲン撮影・CT・MRIなどの画像検査は行えない
  • 注射・点滴などの医療行為は行えない

これらの行為を行った場合、柔道整復師法違反だけでなく医師法違反にも問われる可能性があります。

骨盤矯正・慢性の肩こり・単なるマッサージも業務範囲外

法律上、柔道整復師の業務範囲は急性・亜急性の外傷(骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷)に限定されています。そのため、以下のような施術は柔道整復師の法定業務には含まれません。

  • 慢性的な肩こりや腰痛に対する施術
  • 骨盤矯正や姿勢矯正を目的とした施術
  • リラクゼーション目的の単なるマッサージ
  • 美容目的の施術

とくに保険適用の観点では、慢性的な症状に対して柔道整復の保険施術を行うことは認められていません。原因のある急性・亜急性の外傷でなければ、健康保険の対象とならない点は重要なポイントです。

自費施術として行う場合でも、あん摩マッサージ指圧師の業務範囲との関係に注意が必要です。

施術所の開設に関するルール

複数人が施術を行っている施術所の様子

開業を目指す柔道整復師にとって、施術所の開設に関するルールを正しく理解しておくことは必須です。届出手続きや構造設備基準、施術管理者の要件を確認しましょう。

開設届の提出先と手続き

施術所を開設した場合、第19条の規定により、開設後10日以内に所在地を管轄する都道府県知事(保健所設置市は市長、特別区は区長)への届出が必要です。届出には以下の事項を記載します。

  1. 施術所の名称および所在地
  2. 開設者の氏名および住所(法人の場合は名称・所在地・代表者の氏名)
  3. 施術に従事する柔道整復師の氏名
  4. 施術所の構造設備の概要および平面図
  5. 開設年月日

届出先は具体的には所在地の保健所です。届出に不備がある場合は補正を求められることがあるため、事前に管轄の保健所に確認しておくとスムーズです。

施術所の構造設備基準

柔道整復師法施行規則では、施術所の構造設備に関する基準が定められています。

  • 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること
  • 3.3平方メートル以上の待合室を有すること
  • 施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放できること(換気装置がある場合はこの限りでない)
  • 施術に用いる器具・手指等の消毒設備を有すること

これらの基準を満たさない場合は開設届が受理されない可能性があるため、物件選びの段階から基準を意識しておく必要があります。

施術管理者の要件(実務経験+研修)

2018年4月から、柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う「施術管理者」になるためには、柔道整復師の資格に加えて実務経験と研修の受講が要件となりました。

施術管理者の要件


  • 資格要件:柔道整復師の免許を保有していること
  • 実務経験:施術所で一定期間の実務経験が必要(2024年度以降は原則3年以上)
  • 研修受講:厚生労働大臣が指定する施術管理者研修を修了していること

この要件の厳格化は、不正請求問題を背景に施術管理者の質の確保を目的として導入されました。開業を考えている方は、十分な実務経験を積んでから計画を立てることが重要です。

参考:地方厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」

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広告で使える表現・使えない表現

注意点と書かれた付箋

施術所の集客において広告は重要な手段ですが、柔道整復師法では広告できる内容が厳しく制限されています。法令を正しく理解し、適切な広告活動を行いましょう。

広告できる事項は法律で限定列挙されている

柔道整復師法第24条第1項では、柔道整復の業務や施術所について広告できる事項が限定列挙されています。法律で認められた事項以外の広告は原則として禁止されており、この点が医療機関の広告規制(原則禁止・例外許可方式)と同じ考え方です。

広告の対象には、看板やチラシだけでなく、不特定多数の人が閲覧できるメディアが幅広く含まれます。

広告OKの具体例

法律および関連省令で認められている広告事項は以下のとおりです。

  • 柔道整復師である旨
  • 施術所の名称、電話番号、所在地
  • 施術日・施術時間
  • 休日・夜間における施術の実施
  • 出張による施術の実施
  • 予約に基づく施術の実施
  • 駐車設備に関する事項
  • 法令に基づく届出をした旨
  • 医療保険療養費支給申請ができる旨(届出済みの場合)

これらの範囲内であれば、看板・チラシ・ウェブサイトなどで自由に表示できます。

広告NGの具体例

以下のような表現は広告として認められていません。

  • 「治る」「必ず改善」などの治療効果を保証する表現
  • 施術料金の具体的な記載(一部例外あり)
  • 経歴や出身校の詳細
  • 他の施術所との比較広告
  • 「日本一」「最高の技術」などの誇大表現
  • 「交通事故専門」「スポーツ障害専門」などの専門性の標榜
  • 患者さんの体験談や口コミの掲載
  • ビフォーアフターの写真掲載

これらの表現を使用すると広告制限違反となり、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。

ホームページやSNSに関する最新の規制動向

従来、ホームページやSNSは「広告」ではなく「広報」として扱われ、広告規制の対象外とされてきました。

しかし、不適切な情報発信が問題視されるなか、厚生労働省では「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」を設置し、ウェブサイトやSNSも含めた広告ガイドラインの策定が進められています。

2025年2月には「あはき・柔整広告ガイドライン」が公表され、ウェブサイトについても一定の規制が適用される方向が示されています。今後はホームページやSNSの記載内容にも、より慎重な対応が求められるようになるでしょう。

参考:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」

広告の内容可否根拠・補足
柔道整復師である旨○ OK法第24条で明記
施術所の名称・住所・電話番号○ OK法第24条で明記
施術日・施術時間○ OK法第24条で明記
予約制・駐車場の有無○ OK省令で追加された事項
医療保険療養費支給申請ができる旨○ OK届出済みの場合に限る
「交通事故専門」「スポーツ専門」× NG専門性の標榜は認められていない
「必ず治る」「痛みが消える」× NG効果の保証・誇大表現に該当
施術料金の詳細× NG限定列挙事項に含まれない
経歴・出身校× NG限定列挙事項に含まれない
患者の体験談・ビフォーアフター× NG誘引性のある表現に該当

療養費のしくみ

書類を記入するスーツ姿の男性の手元

柔道整復師の施術には健康保険が適用されるケースがありますが、その仕組みは通常の医療機関とは異なります。ここでは受領委任払いの制度と保険適用の範囲を解説します。

受領委任払いとは

柔道整復師の施術に対する療養費は、本来であれば患者さんが全額を立て替え払いしたうえで、後日保険者に請求して払い戻しを受ける「償還払い」が原則です。しかし、柔道整復師の施術については例外的に「受領委任払い」という制度が認められています。

受領委任払いとは、患者さんが窓口で一部負担金(1〜3割)のみを支払い、残りの費用を柔道整復師が患者さんに代わって保険者に請求する仕組みです。患者さんにとっては窓口での負担が少なく済むメリットがあります。

  1. 患者さんが施術所で施術を受ける
  2. 患者さんは窓口で一部負担金のみを支払う
  3. 柔道整復師が療養費支給申請書を作成
  4. 患者さんが申請書に署名(委任)
  5. 柔道整復師が保険者に残りの費用を請求
  6. 保険者から柔道整復師に療養費が支給される

この制度を利用するためには、施術管理者として地方厚生局に受領委任の届出を行う必要があります。

保険適用の対象は急性・亜急性の外傷のみ

柔道整復師の施術で健康保険が適用されるのは、急性または亜急性の外傷(骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷)に限られます。

  • 骨折・脱臼の施術(応急手当を除き医師の同意が必要)
  • 打撲・捻挫・挫傷の施術

一方、以下のケースは保険適用の対象外です。

  • 慢性的な肩こり・腰痛
  • 日常の疲労回復やリラクゼーション目的
  • 症状の改善がみられない長期にわたる施術
  • 仕事中や通勤途中のケガ(労災保険の対象)

保険適用の範囲を正しく理解し、適切に療養費の請求を行うことが柔道整復師としての信頼につながります。

療養費の不正請求問題と法改正の動き

スマートフォンでニュースを確認している手元

療養費の不正請求は柔道整復業界における深刻な課題です。ここでは問題の背景と、それに対する法改正・制度改正の動きを解説します。

不正請求が社会問題化した背景

柔道整復師の療養費をめぐっては、架空の施術や施術回数の水増し、慢性症状への保険適用など、不正・不当な請求が長年にわたり問題となってきました。会計検査院の報告でも不適切な療養費の支給が指摘されるなど、社会的な関心が高まりました。

不正請求の主な手口としては、以下のようなものが報告されています。

  • 実際には行っていない施術を請求する(架空請求)
  • 施術回数や部位数を実際より多く申告する(水増し請求)
  • 慢性的な肩こりや腰痛を急性の外傷として請求する
  • 同一の患者さんに対して長期間にわたり漫然と施術を継続する

このような不正請求は、健康保険財政を圧迫するだけでなく、柔道整復師全体の信頼を損なう深刻な問題です。

施術管理者要件の厳格化

不正請求問題を受けて、2018年4月から施術管理者の要件が厳格化されました。従来は柔道整復師の資格さえあれば施術管理者になれましたが、改正後は実務経験と研修の受講が必要となりました。

〜2018年3月
資格のみでOK
柔道整復師の資格のみで施術管理者になれた
2018年4月〜
実務経験1年以上+研修受講
施術管理者になるには実務経験と研修の受講が必要に
2022年4月〜
実務経験2年以上に引き上げ
開業までに必要な実務経験が2年に延長された
2024年4月〜
実務経験3年以上に引き上げ(現行)
原則として3年以上の実務経験が必要。段階的に要件が厳格化されている

さらに、社会保障審議会の柔道整復療養費検討専門委員会では、療養費の適正化に向けた議論が継続的に行われており、オンライン請求の導入や明細書の発行義務化など、透明性の向上に向けた取り組みが進んでいます。

参考:厚生労働省「社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)」

柔道整復師法に違反した場合の罰則

NGと書かれた文字と虫眼鏡

柔道整復師法には、法令違反に対する罰則規定が設けられています。違反の種類ごとに罰則の内容を確認しておきましょう。

無免許での施術(第25条)

第25条では、柔道整復師の免許を持たない者が業として柔道整復を行った場合、50万円以下の罰金に処されると規定されています。これは第15条の業務独占規定に違反した場合の罰則です。

柔道整復師の名称を詐称した場合も同様の罰則が適用されます。

届出義務違反(第27条)

第27条では、施術所の開設届出や変更届出を怠った場合、虚偽の届出をした場合に30万円以下の罰金が科されると規定されています。開設後10日以内という届出期限を過ぎてしまうと違反となるため、開業時には速やかな届出が必要です。

広告制限違反(第28条)

第28条では、第24条の広告制限に違反した場合に30万円以下の罰金が科されると規定されています。前述のとおり、法律で認められていない事項を広告した場合が該当します。

看板やチラシだけでなく、今後はウェブサイトやSNSも広告規制の対象となる可能性があるため、日常的な情報発信にも注意が必要です。

守秘義務違反(第29条)

第29条では、第17条の2に規定する守秘義務に違反した場合、50万円以下の罰金に処されると規定されています。守秘義務違反は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。しかし、信頼関係の毀損は取り返しがつかないため、情報管理には万全の対策が求められます。

行政処分(免許取消し・業務停止・戒告)

罰則とは別に、柔道整復師法に基づく行政処分も規定されています。厚生労働大臣は、柔道整復師が以下に該当する場合、免許の取消し、期間を定めた業務停止、または戒告の処分を行うことができます。

  • 欠格事由に該当するようになった場合
  • 柔道整復の業務に関し犯罪または不正の行為があった場合

行政処分は罰金刑とは別に科される可能性があり、免許取消しとなった場合は柔道整復師としての活動が一切できなくなります。

違反内容条文罰則
無免許での施術第25条(第15条違反)50万円以下の罰金
名称の詐称第25条50万円以下の罰金
届出義務違反第27条(第19条違反)30万円以下の罰金
虚偽の届出第27条30万円以下の罰金
広告制限違反第28条(第24条違反)30万円以下の罰金
守秘義務違反第29条(第17条の2違反)50万円以下の罰金(親告罪)
行政処分第8条免許取消し・業務停止・戒告

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柔道整復師法と他の関連法律の違い

開かれた本の上に電球マークとクエスチョンマークが描かれたイラスト

柔道整復師法は単独で完結するものではなく、他の医療関連法律と密接に関わっています。ここでは主要な関連法律との違いを整理します。

あはき法との違い

あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)は、もともと柔道整復師も含めて規定していた法律です。1970年に柔道整復師法が独立して以降、それぞれ別の法律として運用されています。

比較項目柔道整復師法あはき法
制定年1970年(昭和45年)1947年(昭和22年)
対象資格柔道整復師あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師
施術対象骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷肩こり・腰痛・神経痛などの慢性症状も含む
施術方法整復・固定・後療法あん摩・マッサージ・指圧・鍼・灸
医師の同意骨折・脱臼の継続施術に必要はり・きゅうの保険適用に必要
広告制限限定列挙方式(第24条)限定列挙方式(第7条)
業務独占あり(第15条)あり(第1条・第12条)

両法律に共通する点としては、業務独占制度、広告制限、施術所の開設届出義務などがあります。一方、施術対象や施術方法、医師の同意が必要な場面などに違いがあります。

医師法との関係

医師法は医師の業務独占と名称独占を定めた法律です。柔道整復師法は医師法の例外規定という位置づけにあり、柔道整復師は医師でなくても柔道整復の施術を行うことが認められています。

ただし、柔道整復師が行える施術はあくまで非観血的療法に限定されており、外科手術や投薬といった医師の業務を行うことはできません。また、診断や病名の確定も医師の業務であるため、柔道整復師が「診断」を行うことはできず、「判断」や「見立て」という表現が用いられます。

個人情報保護法との関係

柔道整復師法の守秘義務規定に加えて、個人情報保護法も施術所の業務に大きく関わります。施術所で取り扱う患者さんの氏名、住所、症状、保険情報などはすべて個人情報に該当し、適切な管理が求められます。

  • 患者さんの個人情報は利用目的を明示したうえで取得する
  • 施術録や療養費支給申請書などの書類は適切に保管・管理する
  • 第三者への提供は原則として本人の同意を得る
  • スタッフへの個人情報保護に関する教育を実施する

柔道整復師法上の守秘義務と個人情報保護法の規定は重複する部分も多いですが、個人情報保護法はより広範な情報管理の義務を課しているため、両方の法律に対応した体制づくりが必要です。

まとめ

柔道整復師法は、柔道整復師の資格・業務範囲・施術所運営・広告・罰則など、柔道整復師として活動するうえでのルール全般を定めた重要な法律です。

この記事のポイントを振り返りましょう。

  • 柔道整復師法は1970年にあはき法から独立して制定された法律
  • 施術対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の5つの外傷
  • 骨折・脱臼の継続施術には医師の同意が必要(応急手当は除く)
  • 外科手術・薬品投与・レントゲン撮影は行えない
  • 施術所の開設には届出と構造設備基準の充足が必要
  • 広告は法律で限定列挙された事項のみ可能
  • 施術管理者には実務経験3年以上+研修受講が必要(2024年度以降)
  • 違反には罰金や行政処分(免許取消し・業務停止)が科される

法律の内容を正しく理解し、適法な業務運営を行うことが、患者さんからの信頼獲得と長期的なキャリア形成の基盤となります。とくに開業を考えている方は、施術管理者の要件や広告制限など、実務に直結するルールをしっかり確認しておきましょう。

参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)」
参考:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師について」
参考:厚生労働省「社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)」
参考:地方厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」
参考:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」

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