訪問看護ステーションの管理者になるには?必要な資格やスキル、仕事内容まで徹底解説

「訪問看護ステーションの管理者はどのような仕事をするの?」
「訪問看護ステーションの管理者になれる条件は?」
訪問看護ステーションの管理者に興味があり、このような疑問をお持ちの方がいるのではないでしょうか?
訪問看護ステーションでは、保健師、助産師または看護師の資格があれば管理者になれます。
ただし、他のいくつかの条件も満たさなければなりません。さらに、チーム全体をまとめる重要な立場であり、高いレベルでのさまざまなスキルが求められます。
そこで本記事では以下について解説します。
- 訪問看護ステーションの管理者に必要な資格や条件
- 訪問看護ステーションの管理者に求められるスキル
- 管理者の業務内容
- やりがいや大変なこと
最後までお読みいただければ、訪問看護ステーションの管理者について理解できるでしょう。記事を参考にしていただき、管理者を目指してみてください!
訪問看護ステーションの管理者になるには

訪問看護ステーションの管理者になるには、特定の資格と条件を満たす必要があります。厚生労働省の「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」では、資格や条件が定められており、研修の受講も望ましいとしています。それぞれ見ていきましょう。
訪問看護ステーションの管理者に必要な資格と条件
厚生労働省の基準で定められる、管理者に必要な資格や条件は以下のとおりです。
保健師、助産師または看護師
訪問看護ステーションの管理者は、保健師、助産師または看護師資格が必要です。ただし、保健師、助産師や看護師であっても、以下に該当する場合は管理者になれません。
- 保健師、助産師または看護師の業務の停止を命ぜられ、業務停止の期間終了後5年を経過しない者
- 指定訪問看護ステーションの管理者としての変更の指導を受け、変更された後5年を経過しない者。または取消処分を受けた訪問看護ステーションの当該管理者(取消処分が当該管理者の責務に関わる場合)で、取り消し後5年を経過しない者
医師や准看護師、理学療法士の資格では管理者の要件を満たしません。ただし、一時的な措置として、他の職種でも可能な場合があります。管理者が病気で長期療養が必要なケースや出張でやむを得ない理由があり、管理者にふさわしいと認められる人が地方厚生局の承認を受けた場合です。
専従かつ常勤
訪問看護ステーションの管理者は、専従かつ常勤である必要があります。専従と常勤の違いは以下のとおりです。
専従 | 常勤 |
---|---|
訪問看護のサービス提供時間は、指定訪問看護以外の職務には従事しない | 指定訪問看護ステーションにおいて定められている常勤の従事者が、勤務すべき時間数に達している(例外もあり) |
ただし以下の場合で、管理上支障がない場合は、兼務が可能です。
- 勤務している訪問看護ステーションの看護職員として従事する場合
- 介護保険法により指定を受けている指定訪問看護ステーションの場合
- 同一敷地内または隣接する他の事業所・施設などでの勤務時間が限られている場合
適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技術を有する者
管理者になるには、看護師として一定の知識や技術が必要です。訪問看護は、地域包括ケアシステムにおいて中心的な役割が期待されており、利用者が住み慣れた地域で生活するための、質の高いケアが求められます。利用者が在宅で安心して暮らせるためにも重要です。
医療機関において看護、訪問看護または健康増進法による保健指導の業務に従事した経験のある者
訪問看護は、利用者が生活する場に基本一人で訪問します。病院のようにすぐ医師に相談できる環境ではないため、状況を自らアセスメントし、適切なケアを提供しなければなりません。
高度な判断力と豊富な看護経験が求められます。そのため一定の経験があると、看護の質を保てると考えられています。また、スタッフ教育や多職種との連携、リスク管理においてもリーダーとしての役割が期待されます。
訪問看護ステーションの管理者に必要な研修
訪問看護ステーションの管理者は、さまざまなスキルで高いレベルが求められます。
「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」では、「管理者としての資質を確保するために関連機関が提供する研修等を受講していることが望ましい」としています。
管理者を目指す場合は、下記のいずれかの研修を受けるのがおすすめです。
- 日本看護協会の研修
- 都道府県看護協会の研修
- 全国訪問看護事業協会の研修
募集期間や開催時期が決められているため、早めに情報を確認し、申し込みをしましょう。
参考:
訪問看護及び介護施設等の看護管理者研修プログラム(2019年3月)/日本看護協会
訪問看護ステーション等管理者・指導者育成事業/東京都福祉局
研修会/全国訪問看護事業協会
訪問看護ステーションの管理者に求められるスキル5選

訪問看護ステーションの管理者は、一般職員よりも幅広いスキルが求められます。チームマネジメントスキルやコミュニケーションスキルなどです。5つのスキルについて解説します。
1.チームマネジメントスキル
訪問看護ステーションの管理者は、スタッフをまとめ、チーム全体の力を引き出すスキルが不可欠です。
スタッフそれぞれが持つ強みやスキルを把握し、適切に役割分担することが求められます。
看護サービスの質を高め、スタッフが働きやすいと感じる環境にもつながります。
管理者は、スタッフそれぞれの状況を把握することが大切です。状況によっては、育児や介護といったプライベートな話題について相談に乗ることもあるでしょう。
定期的な面談を行い、スタッフの悩みや課題に耳を傾けることで、信頼関係ができ、離職率の低下にもつながります。
こうしたマネジメント力を高めるために、訪問看護管理者向けのマネジメント講座を活用するのも一つの手段です。
2.コミュニケーションスキル
訪問看護ステーションの管理者は、スタッフや利用者、利用者家族の他にもさまざまな人とコミュニケーションを取る機会があります。医師やケアマネジャー、施設職員、地域住民など多方面にわたります。
信頼関係を円滑に築ける、高いコミュニケーションスキルが必要です。意見や悩みを傾聴する姿勢や安心感を与える雰囲気、言葉遣いなどを心がけなければなりません。地域連携の視点でも大切です。
3.問題解決スキル
問題解決スキルも管理者には欠かせません。ステーションの運営や利用者のケアで生じる問題を的確に捉え、分析し、解決策を導き出すことが大切です。
訪問看護では、残業や休暇取得の問題、ターミナルケアにおける倫理的な課題や家族のサポート、稼働率の問題などが発生しやすいでしょう。問題に真摯に向き合うことが求められます。
4.質の高い看護スキル
管理者に求められるスキルは、訪問看護師としての一般的な知識・技術だけではありません。ステーション全体のケアの質を保ち、スタッフを教育できる高度な看護スキルが必要です。
利用者や家族を総合的にアセスメントする能力、人工呼吸器や在宅酸素療法、末期がんの疼痛コントロールなどの知識、倫理的な課題への対応など多岐にわたります。スタッフの見本となり、質の高いサービスをチームで提供するのが重要です。
5.経営管理スキル
訪問看護ステーションの管理者は、ステーションの経営状態を把握し、効率的に運営するスキルが求められます。経営的な視点が欠かせません。
例えば、訪問件数や業務分担、設備投資の費用などです。一般看護職員として病院で働いていた方は、経営に関わる業務をほぼ行っていないため、転職後に戸惑うこともあるかもしれません。
収益性や、事業を継続するための視点などビジネス的要素が必要であることを理解しておきましょう。
訪問看護ステーションの管理者の仕事内容

訪問看護ステーションの管理者の業務は、スタッフの採用や勤怠管理、ステーションの運営、訪問業務まで多岐にわたります。それぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう。
スタッフの採用・育成
看護師は全国的に不足しています。ステーションの理念や方針に共感し、質の高い看護を提供できる人材を確保することは、経営上重要な課題です。
管理者は求人活動や面接、選考に関わる機会が多いです。採用後は、それぞれの希望やスキルにあった配置や教育を行います。スタッフが安心して働ける環境を作り、定着に努める必要があるでしょう。
勤怠管理
スタッフの労働時間や休暇の取得、シフトを適切に管理し、労働基準法などの法令を守る必要があります。
出勤時間や退勤時間、欠席、残業時間などを確認し、問題があれば改善に努めなければなりません。
2019年4月から、年5日の年次有給休暇の取得も義務化されました。管理者はスタッフが確実に有給を取得できるように、勤務調整を行う必要があります。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
訪問スケジュールの管理
訪問スケジュールの管理は、利用者への適切なサービス提供や収益の維持・向上、スタッフの業務負担軽減のために重要です。
利用者の状態やケア内容、訪問する地域などを考慮し、効率的に訪問できるようスケジュールを立てます。
緊急訪問やスタッフの欠勤があった場合にも柔軟に対応し、サービスを担保しなければなりません。
ステーションの運営・経営
管理者は、診療報酬や介護保険制度の動向を常にキャッチアップし、安定した経営に努める必要があります。
訪問看護の仕事は将来性がある一方、人件費率が高く、事業の存続が困難になるケースも少なくありません。
令和5年度の介護事業経営実態調査の「1施設・事業所当たりの収支額、収支等の科目」では、以下のとおりでした。
1施設・事業所当たりの収入・支出(1か月当たり)
訪問看護 | 介護老人保健施設 | 介護医療院 | |
---|---|---|---|
収入 | 3,066千円 | 35,415千円 | 30,421千円 |
支出 | 2,886千円 | 35,797千円 | 30,303千円 |
給与費 | 2,287千円 | 22,728千円 | 18,876千円 |
収入に対する給与費の割合 | 74.6% | 64.2% | 62.1% |
訪問看護では1か月当たり収入3,066千円に対し、支出は2,886千円でした。給与費は2,287千円であり、収入に対する割合は74.6%を占めています。
他の介護事業の収入に対する給与費の割合は、介護老人保健施設は64.2%、介護医療院は62.1%であり、訪問看護の給与費が高いことがわかります。
また、訪問看護は利用者が入院したり亡くなったりするケースも多いです。安定した経営のためには、常に新規利用者の獲得を目指し、収益を確保する必要があるのです。
地域の関係機関や多職種との連携
訪問看護では、利用者を中心とした質の高いチームケアを行うために、主治医や医療機関の退院支援担当、ケアマネジャーなどとの連携が欠かせません。
訪問看護は地域包括ケアの中心的な存在です。退院時のカンファレンスやサービス担当会議で調整役となり、円滑にコミュニケーションが図れるようにするのも大事な役割です。
訪問看護ステーションの管理者のやりがいや大変なこと

訪問看護ステーションの管理者は、大きなやりがいを感じられる仕事です。一方で、責任の重さで大変だと感じることもあります。管理者を目指す場合は、双方を知ることが大切です。
管理者のやりがい
訪問看護ステーションの管理者のやりがいは、主に以下のとおりです。
- 利用者・家族との信頼関係を築ける
- チームの成長を見守ることができ、達成感がある
- 地域医療に貢献できる
- 管理職として自己成長を感じられる
訪問看護の利用者や家族と深く関わり、長期的な関係を築けます。直接的なケアだけでなく、ステーション全体で利用者のQOLの向上に貢献できるため、喜びを感じられるでしょう。
病院では治療が優先されますが、在宅では利用者に合わせた看護を提供できるため、やりがいにつながります。スタッフが成長し、チームで質の高いケアを提供できれば、達成感も得られるでしょう。
また、管理職は常に自己研鑽が求められます。新しい知識やスキルを身につけることで、自己成長を実感できるのもやりがいのひとつです。
管理者の大変なこと
訪問看護ステーションの管理者の大変なことは以下のとおりです。
- 業務範囲の広さと責任の重さでつらくなる
- スタッフ教育や人間関係に悩む
- 精神的負担と孤独感で、やめたいと感じるときがある
管理者の仕事は、通常の訪問業務に加え、スタッフの勤怠管理や教育、さらに経営面の業務などがあり幅広いです。管理者の責任が伴うため、つらくなるときがあります。
スタッフの採用や教育が予定通り進まなかったり、人間関係で悩んだりして苦労する場合があります。利用者や家族からのクレームやスタッフ間の問題で、精神的な負担が大きいと「やめたい」と感じることもあるかもしれません。
管理者はステーションに一人であるため、悩みを誰かに打ち明けられず、孤独感をおぼえる場面もあります。
業務は一人で抱え込まずスタッフの協力を得る、必要に応じてカウンセリングを受ける、趣味の活動でストレスを発散させる、といった対策をおすすめします。
訪問看護ステーションの管理者に関するよくある質問

訪問看護ステーションの管理者に関するよくある質問と回答をまとめました。
訪問看護ステーションの管理者の年収はどれくらい?
日本看護協会の調査によると、訪問看護ステーションに勤務する正規職員の看護師(非管理職)の平均賃金額は以下のとおりです。
訪問看護師(平均年齢44.0歳・平均通算経験年数7.3年) | ||
基本給与額 | 税込給与額 | |
---|---|---|
259,958円 | 335,144円 |