薬学部の6年制はいつから?移行の経緯と移行で変わったこと・4年制との違い
薬学部の6年制は、2006年度(平成18年度)の入学者から始まりました。 「4年制を卒業した先輩はどうやって薬剤師になったの?」「6年制になって何が増えたの?」と、移行の前後で何が違うのか気になる人もいるはずです。
この記事では、薬学部が6年制になった時期と根拠の法改正、4年制卒業者に設けられた受験資格の経過措置、移行で変わった実習や試験、現在の4年制との違いを紹介します。
お申し込みを受け付けました
以下からひな形と見本をダウンロードできます。
薬学部が6年制になったのは2006年度から

薬剤師を養成する薬学部の修業年限が4年から6年に延びたのは、2006年4月以降に入学した学生からです。 「2006年から6年制」ではなく「2006年度の入学者から6年制」という区切りなので、2005年度以前に入学した学生は、2006年以降も4年制のまま卒業しています。
学校教育法の改正で薬剤師養成の課程が6年制になり、それに合わせた薬剤師法の改正で、国家試験を受けられるのは原則として6年制課程の卒業者になりました。 2006年度に入学した1期生が6年間の課程を終えて卒業したのは、2012年3月です。
- 2004年5月学校教育法の改正が公布。薬剤師養成の課程を6年に
- 2004年6月薬剤師法の改正が公布。受験資格を原則6年制卒業者に
- 2006年4月改正法が施行。6年制の1期生が入学
- 2012年3月6年制の1期生が卒業
- 2017年度4年制入学者の経過措置が適用される最後の入学年度
6年制への移行で、4年制課程を卒業しても原則として薬剤師国家試験は受けられなくなりました。 ただし、移行をまたいだ世代には経過措置があり、どの扱いになるかは「卒業した年」ではなく「入学した年度」で決まります。
2005年度以前に入学した人は、改正前の制度のまま、卒業すれば受験資格を得られます。 厚生労働省が公表している第112回薬剤師国家試験の受験案内にも、この区分が受験資格の一つとして載っています。
2006〜2017年度に4年制課程へ入学した人は、次の条件をすべて満たした場合に受験できます。
- 4年制課程を卒業する
- 大学院で薬学の修士課程または博士課程を修了する
- 6年制課程と比べて不足する医療薬学の科目や実務実習の単位を追加で修得する
- 厚生労働大臣から、6年制課程の卒業者と同等以上の学力・技能があると個別に認定を受ける
厚生労働大臣の認定は、国家試験の受験申請とあわせて申請することもできます。 一方、2018年度以降に4年制課程へ入学した人は、この経過措置の対象外です。 4年制を卒業して大学院を修了しても受験資格は得られないため、薬剤師を目指すなら6年制課程を卒業する必要があります。
同じ4年制でも、入学した年度で道が分かれるんだね!
6年制課程の卒業者として薬剤師になった人も、旧4年制から薬剤師になった人も、取得する薬剤師免許は同じです。
薬剤師の求人を探す6年制の卒業者が受ける国家試験の合格率や、数字の読み方は以下の記事で紹介しています。
参考:文部科学省「薬学教育制度の概要」 / 厚生労働省「薬剤師国家試験」
薬学部が6年制になった理由

6年制化の方向性を決めたのは、2004年2月に中央教育審議会がまとめた答申「薬学教育の改善・充実について」です。 答申では、社会の要請に応えられる薬剤師を育てるには、4年間の学部教育では足りないとされました。
近年の医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用や薬害の防止といった社会的要請に応えるため、(中略)さらに、諸外国における薬剤師の養成のための薬学教育の実施状況を見ると6年間の教育が行われている例が多い。以上を踏まえ、今後、薬剤師の養成を目的とする薬学教育については、学部段階の修業年限を4年から6年に延長することが適当である。
医薬分業の進展で調剤以外の役割が増えたため
医薬分業は、医師が処方箋を出し、薬局の薬剤師がそれをもとに調剤する役割分担です。 分業が進むにつれ、薬剤師は薬を正確にそろえるだけでなく、飲み合わせや重複のチェック、副作用の確認など、患者さんの薬物療法そのものに関わる場面が増えました。
答申は、医薬分業の進展に伴う医薬品の安全使用や薬害の防止を、6年制化が必要な理由の一つに挙げています。 薬の知識に加えて、患者さんと向き合う臨床の力を学部のうちに身につけることが求められるようになりました。
チーム医療への参画が求められるようになったため
答申のもとになった文部科学省の協力者会議の最終報告では、薬剤師を目指す学生に、医療人としての教養や高い倫理観、現場で通用する実践力が求められるとされました。 医師や看護師と同じ医療チームの一員として働くには、薬学の知識だけでなく、患者さんや他職種とやりとりする力も欠かせません。
6年制の教育内容はその後も見直されています。 2022年度に改訂された薬学教育モデル・コア・カリキュラムでは、医療機関でのチーム医療の進展などを踏まえ、「多職種連携能力」が薬剤師に求められる基本的な資質・能力の一つに位置づけられました。
今のあなたの状況は?
医療技術の高度化で必要な知識が広がったため
医療技術が高度になるほど、薬剤師が理解しておくべき薬や治療の範囲も広がります。 答申は、教養教育、医療薬学を中心とした専門教育、実務実習の3つを充実させ、組み合わせて学べる教育課程にする必要があるとしています。 基礎薬学を学ぶ4年間に、医療薬学と長期の実務実習を加えるには、修業年限そのものを延ばす必要があったということです。
諸外国の薬学教育の年限に合わせるため
答申は、諸外国の薬剤師養成では6年間の教育が行われている例が多いことも、延長の理由に挙げています。 4年間で薬剤師を養成していた日本の制度を、海外の薬剤師養成と同程度の教育期間にそろえる狙いもありました。
4年じゃ足りないくらい、学ぶことが増えたってことだね!
参考:文部科学省「薬学教育の改善・充実について(答申)」 / 文部科学省「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)について」
6年制への移行で変わったこと

修業年限が2年延びたことで、学ぶ内容だけでなく、実習・試験・受験資格の仕組みも大きく変わりました。
実務実習が22週に拡大
移行前の4年制では、病院や薬局での実務実習は2〜4週間程度でした。 6年制では病院11週・薬局11週の計22週が標準になり、実習の期間は5倍以上に延びています。
22週の長期実務実習は、6年制の1期生が5年次になった2010年度から始まりました。 指導薬剤師のもとで、学生が実際の業務に加わる参加型の実習です。
実習が半年近くあると、現場のイメージもかなりつかめそうだね。
薬学共用試験の導入
実務実習では、薬剤師の資格をもたない学生が実際の調剤に関わります。 そのため、実習に出る前に知識・技能・態度が一定の水準に達しているかを確かめる試験として、薬学共用試験が導入されました。 CBTとOSCEの両方に合格しないと、実務実習には進めません。
- 評価
- 主に知識
- 形式
- 画面に出る問題に解答する
- 評価
- 主に技能・態度
- 形式
- 課題に沿って実技を行う
共用試験の第1回は、2009年12月に実施されました。 6年制の1期生が4年次になった年度で、6年制のスタートと同時に始まったわけではありません。
薬剤師の求人を探す薬剤師国家試験の受験資格の変更
国家試験の受験資格は「4年制課程の卒業」から「6年制課程の卒業」に変わりました。 4年制課程の卒業者に対する経過措置は前述のとおりです。
試験の中身も、6年制の卒業者が初めて受験した2012年3月の試験から新しい出題形式になりました。
-
必須問題薬剤師として特に欠かせない基本的な資質を確認する問題
-
一般問題(薬学理論問題)薬学の理論にもとづいて、一般的な課題を解釈する力を確認する問題
-
一般問題(薬学実践問題)医療の現場で直面する課題を解決する基礎力・実践力・総合力を確認する問題
実務の知識を問う問題が、必須問題と薬学実践問題の両方に組み込まれたのが特徴です。 長期の実務実習で身につけた力を、国家試験でも確認する仕組みになっています。
- 受験資格は卒業年でなく入学年度で決まる
- 学び直しには研修や認定薬剤師制度も活用を
- 実習で得た経験の差は現場の研鑽で補える
参考:厚生労働省「4.薬学教育6年制」 / 薬学共用試験センター「沿革」
6年制と4年制の違い

現在の薬学部には、薬剤師を養成する6年制課程と、研究者などを養成する4年制課程が併存しています。 4年制は廃止されたわけではありません。2025年4月時点で、6年制の薬学部は78大学81学部、4年制の薬学部は27大学27学部にあります。
| 6年制 | 4年制 | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 薬剤師の養成 | 研究者など多様な人材の養成 |
| 学びの中心 | 基礎薬学+医療薬学と長期の実務実習 | 基礎薬学が中心 |
| 国家試験の受験資格 | 卒業で得られる | 得られない |
| 入学定員(2025年度) | 11,567人 | 1,331人 |
6年制は薬剤師の養成
6年制は、臨床に関わる実践的な能力を身につけることを主な目的とした課程です。 卒業すると薬剤師国家試験の受験資格が得られ、2025年度の入学定員では薬学部全体の約9割を6年制が占めています。
基礎薬学に加えて医療薬学を学び、半年近い長期実務実習で病院・薬局の現場を経験するのが大きな特徴です。 大学によっては、実務実習のあとに病院や薬局で追加の実習を行うところもあります。
4年制でも、薬学部を出れば薬剤師になれるのかな?
4年制は創薬研究者の養成
4年制は基礎薬学を中心に学び、大学院に進んで製薬企業や大学で研究・開発に携わる人材を育てる課程です。 4年制を卒業しても、薬剤師国家試験の受験資格は得られません。
国公立大学の4年制では、卒業生の大半が大学院へ進学しています。 私立大学では、学部卒業後に医薬品関連企業などへ就職する人も半数ほどいます。
4年制から大学院を経て研究職に進むルートや、薬剤師が研究職として働く方法は以下の記事で詳しく紹介しています。
取得できる学位
6年制の卒業者には「学士(薬学)」、4年制の卒業者にはこれと異なる名称の学位(「学士(薬科学)」など)が授与されます。 大学院の仕組みも、どちらの課程の上に置かれているかで異なります。
6年制の上に置かれる大学院は4年制の博士課程のみで、修士課程はありません。 4年制の上には、2年の修士課程と3年の博士課程が置かれ、研究者を目指す人は修士・博士と段階的に進みます。
転職活動するなら?
大学に入学してから博士の学位を得るまでの標準的な年数は、6年制ルートで10年、4年制ルートで9年です。 どちらに進むかは、薬剤師として臨床に関わりたいか、研究者として薬をつくる側に回りたいかで考えるのがおすすめです。
参考:文部科学省「薬学教育の改善・充実について(答申)-3.設置基準等について」 / 文部科学省「文部科学省説明資料(令和8年2月16日 新薬剤師養成問題懇談会 資料1)」
まとめ
薬学部の6年制は、2004年の学校教育法・薬剤師法の改正にもとづき、2006年度の入学者から始まりました。 移行をまたいだ世代は、入学年度によって国家試験の受験資格の扱いが変わります。
この記事のポイント
- 6年制は2006年度の入学者から。1期生の卒業は2012年3月
- 2006〜2017年度の4年制入学者は条件付きで受験できる
- 実務実習は2〜4週間程度から22週に拡大
- 薬学共用試験の第1回は2009年12月
- 4年制は廃止されず、研究者養成の課程として併存
これから薬学部を選ぶ人は、薬剤師を目指すのか、研究者を目指すのかで6年制・4年制を選び分けましょう。 薬剤師になるまでの道のりや学費、国家試験の難易度は、以下の記事にまとめています。


